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青春映像オムニバス あなたも、青乃春(あおの はる)。  作者: 舟津湊


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恋愛観測衛星の誤差

『恋予報 的中率90% あなたの運命の出会いを科学的に占う。」


二年C組のクラスの入口に、人工衛星のイラストとともに、このように描かれた立て看板が飾ってあった。文脈からすると、この衛星は気象衛星か。


「いらっしゃいませ、どうぞ中へお入りください。」

僕が興味をもって中を覗いていると、看板の前に置かれた机・テーブル席に座っている女子生徒から声がかかった。


「あのー、これ、恋予報って描いてありますけど、結局は恋占いですよね。」

「えーっと、占いとはちょっと違うんです。」

でも、文尾には『占います』って描いてあるんだが。


「うちのクラスの恋予報は、高度な観測技術に基づき、あなたの出会いを予測します。」

なんか、つめの甘さ感は拭えないが、まあ学園祭の出し物としては面白そうなので入ってみることにした。予報料に300円払った。

中は、クロスを吊って四つのコーナーに仕切られている。その一つに案内される。

小さなステージ(多分教壇)の上に、白ブラウスにグレーのスカートを身につけた女子生徒が立っていた。手しているのは指し棒。大きな液晶モニタを背にしている。モニタには『恋予報』というタイトルと何やらロゴマークらしきものが映し出されている。

察するに、テレビ番組のお天気コーナーのセットなのだろう。ちょっと違うのは、モニタ脇のノートパソコンが置かれた席に男子生徒が座っていることだ。ヘッドセットを着けている。


「いらっしゃいませ、恋予報の世界にようこそ。」

『世界』とか言っちゃうところからして占いっぽくないか。


「最初にお伺いします。まずは学年を教えてください。」

「一年A組の小林です。」

「あ、名前は個人情報なのでいいです。好きな異性のタイプをお伺いします。好きな髪型は?」

僕は恥ずかしさをこらえて答える。

「・・・長めで少し栗色。」

「顔つきは、子供っぽいのと大人っぽいのとどっちがいいですか?」

「・・・子供っぽい方。」

「メガネはかけてる?」

「メガネはなし。」

「背丈は?」

「少しちっちゃい方がいいかな。」

「・・・質問は以上です。」

「あれ、性格とか内面的なことは聞かないの?」

「聞いてもわからないからいいです。」

・・・まあ、300円ならこんなもんか。


男子生徒が、ヘッドセットで何やら会話し、返事が返ってくるのを待っている。

20秒ほどして、「お、天啓が降りてきた!」と言ってパチパチをキーボードを叩いている。


女性予報士に尋ねる。

「今、彼、『天啓』とかいいましたけど、やっぱこれ、占いじゃない?」

「違うんです。私たちは、自前の地球観測衛星のことを『天啓』と呼んでいます。」

自前で衛星を持っているのか。すごいクラスだ。


その時、タイトル画面が切り替わった。


”あなたの運命の人 学食で、天丼定食”


なんのこっちゃ!?


「これが今日のあなたの恋予報です。」

女性予報士が、指し棒で画面をピタピタはたく。

「あなたは今すぐ学食に行って、天丼定食食べている人の中で最初に目に留まった子に話しかけてください。そこから恋が始まります。」

「ほ、ほんとうですか?」

「当たるも八卦、当たらぬも八卦。」

あれ、看板には的中率90%って描いてあったじゃないか?


「恋予報は以上です、では、グッドラック!」

予報士に、にこやかに送り出された。というより追い出された。


仕方がないから、学食に行ってみることにした。まあ、少し興味はある。


その時、隣の恋予報コーナーから女子生徒が出てきた。彼女も学食方向に歩き始めた。


「あの、君も学食に行くの?」

「そうなんです。」

「僕は『天丼定食』らしいけど、君は?」

「私は『かき揚げそばといなりセット』・・・いったいなんなんでしょうね・・・」


学食に着くと、僕らは券売機の前を素通りして、テーブル先の前まで進む。お昼時ということで、混雑している。

その中で、『天丼定食』を食べている子を探す。


いた。


しかし、なんか違う。髪はショートだし、顔は子供っぽくないし、メガネかけてるし、背は大きめだし。

何より決定的に違うのは、その生徒は男だ、ということ。


まわりを見回したが、他に天丼定食を食べている生徒は見当たらない。


さっき一緒に学食に来た子が呆然と立ち尽くしている姿が視界に入った。

彼女の視線の先を追っていくと。

『かき揚げそばといなりセット』を食べている生徒がいた。長い栗色の髪をヘアクリップでまとめて、おそばをすすっている。女子生徒だ。


これらのことから『夢予報』のからくりと、この事態の原因を推測すると。

要は、学食に来ていた『観測衛星』君が、僕のいたコーナーと隣の予報コーナーのスタッフにあべこべに伝えてしまったのだ。


呆然と立ちすくんでいた彼女も、それに気づいたようだ。

僕の方に歩いてくる。


「あの、何が起きているかおわかりだと思いますけど。」

「うん。」

「ひとつ提案があるのですが。」

「提案?」

「はい・・・次のどれがいいですか?

 ①予報士の指示通り、(同性に)声をかける

 ②予報士の指示とは逆に(異性に)声をかける

 そして③・・・」


「③?」

「は、はい・・・③何かのご縁なので、私たちがおつきあいする。」


うちの高校は、健全な異性交遊は認められている。同性交遊はどうなんだろう?

①も、それはそれで捨てがたい・・・

②は、順当だが、今となっては何か物足りない。


今まで気にしていなかったが、提案してくれた彼女は、髪は栗色で長く、あどけなさも残っており、背も小さめだ。


「じゃあ、③で。」

彼女は顔を赤らめる。

「はい。」


恋予報は、霹靂のち晴天というところか。

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