ミイラ盗りが、 赤くなる。
部長がこの部室に来なくなってから、もう一週間が経つ。
「タケルの奴、ミイラ盗りがミイラになっちまったか。」
部員でホラー専のヤマトがぼやく。
僕たち文芸部は存亡の危機に瀕している。
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メンバー募集!
文学サークル 始めました。
読書好き、創作好きのあなた、
仲間に加わりませんか?
現在四名。
あと一人で学校の公式の
部活動として認定!
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掲示板に小さなポスターが貼られたのは二週間前。
僕たちはビビった。
この間、部員だったテルが、どうしても四股を踏みたいということで、相撲部に転籍してしまった。
我が文芸部は五人のメンバーで何とか学校の公式部活としてやってきた。
予算がつくので、好きな本が買えた。小部屋だが、部室もある。
「俺、敵情視察してくるわ。」
と言って、部長のタケルが部室を出ていった。
この部屋もいつ追い出されるかわからない。
因みにタケルはゲームバトル系で、対戦描写が熱い。
それっきり、タケルは部室に姿を見せなくなった。
「あーあ、これでサークルに格下げか。」
異能専のミツルが愚痴る。
「そんなら、俺たち一緒にやってても意味なくね? 解散っしょ、解散。」
ホラー専のヤマトは既に諦めモードだ。
「タケルには何か考えがあるんじゃない?もう少し待とうよ。」
僕はみんなの気持ちを押しとどめようとする。
「タケルの奴、LINEも見てねーぞ。」
ミツルがスマホを振る。
「まあ、今日のところは、解散だな。」
ヤマトが部室の本棚にラノベをしまい始めた時、
部室のドアがガラッと開いた。
「おう、みんな、暫く顔を出さなくて悪かったな。」
部長のタケルだ。
「おい、お前今まで何やってたんだよ。こんなヤバい状況なのに!」
「ワリイワリイ、ちょっと古本屋を手伝っててな。」
「古本屋って、ひょっとして高宮書店?」
そこなら、僕らはよく利用している。ラノベが充実していて、しかも安い。
「ああ、そこの店主のお爺さんが、ぎっくり腰で入院しちまってな。お孫さんに頼まれて店を手伝ってたんだ。」
「お孫さん?」
「ああ、紹介するよ。サナ、入っておいで。」
部室に入ってきたのは、うちの高校の制服を着た女の子だ。長い黒髪に、銀縁メガネかけている。
「紹介するよ、高宮佐奈です・・・お宅の部長さんをお借りしちゃってて、ごめんなさい。」
「彼女は、今度できた文学サークルのリーダーだ。」
「おい、タケル、今しれっと言ったが、そこは俺たちのライバルじゃねーか。」
「ああ、そうなんだけど。」
タケルは頭を掻く。
「こないだ、図書室で彼女らがミーティングしてるところを覗きに行ってな。小説の話を面白そうにしてるから、ついついそこに加わって一緒に話し込んじゃったんだ。」
「やっぱりコイツ、ミイラになっちまってたんだな!」
ヤマトが声を荒げる。
「まあ、そう言うなって。いい話があるんだ・・・おーい、みんなも入って来いよ。」
そう促されて、部室に三人の女子が入ってきた。
「紹介するよ、文学サークルの子たちだ。」
「タケル、どういうこと?」
ミツルが女子高生たちチラ見しながら尋ねる。
「僕たちの文芸部と合併しないかって持ちかけたんだ。」
「そんな、勝手に!」
僕は憤慨した。
「いやか?」
胸の前に手を組んで、可愛い四人の女子が不安そうな表情で僕らを見ている。
「い、いやじゃないけど・・・前もって相談してほしかった。」
と言ったものの、事前に相談されても結果は同じだったろう。
佐奈さんちの高宮書店からも古い本を譲ってくれるらしく、悪い話ではない。
こうして新・文芸部は九人の大所帯になった。
女子の加入で、部室は急に華やかになった。
ちょっと居づらそうにしながら、ヤマトがぼやく。
「ミツルの奴、染まっちまったな。」
ヤマトの視線を追って部屋の一角を見ると、ミツルは文学少女たちとラブコメ談義をしている。
『異能バトル一筋』と豪語していた男は、いったいどこに行ってしまったんだ。
女子たちは、ミツルの短編ラブコメの原稿を見て、褒めまくっている。
ミツルは頬を赤らめて、講評を嬉しそうに聞いている。
「『朱に交われば赤くなる』って、言いえて妙だな。」
と部長のタケルがニヤつくが・・・ファンタジーに宗旨替えしたお前だって同類じゃないか!
そして、相撲部に転籍したはずのテルが戻ってきて、部員は十人となった。




