帰還して
これまでに比べると短いです。
後半部分の話の内容を考えて、分割しました。
帰還後。
事前に被爆対策品を用意していたので、除染処置を受ける必要は無かった。グーフォの攻撃を受けたのに、魔法具は無事だった。あの大剣は、魔法を解除する対象が選べるのかな?
今になっては分からないけど、拾った幸運のお陰で、線量測定の拘束時間は短く済んだ。
持ったままだったヌルに関しては、『切り札の一つ』と言って誤魔化した。事前に色々と準備していたところを見られていたので、ヒース大佐を始めとした面々からヌルへの追及は無かった。
代わりに、ヌルを第一形体に戻して仕舞った瞬間、ヒース大佐から脳天に拳骨を貰った。ベーノ・アウ・マルベーノを仕舞った直後だった事もあり、油断していた。脳が疲労で動いていない。
拳骨のあと、ヒース大佐から血を吸ってた衣類についての言及が始まり、『報告の前に、精密検査を受けて来い』と、軍属の病院に送り出されて、一週間ほど検査入院をする事になった。
検査の合間の暇な時間に、フルード大尉が持って来てくれたノートパソコンを使い、戦闘に関する報告書を作った。
報告書を書いたとは言え、その内容は短い……それ以前に書ける事が少ない。
この大陸において、剣を用いた前時代的な戦闘を行った。魔法は殆ど使っていない。グーフォの大剣は魔法を分解する効果を保有していた事は書いたよ。それから、グーフォが目元を隠すのに使用していた布には、認識に干渉する何かしらの術が付与されている事も書いた。そうでなければ、戦闘開始直前になって、敵の観察はしない。
最終的に向こう側の都合で勝手に撤退した。これだけ書いておけば良いだろう。
突っ込みどころしかない報告書が出来上がったが、これを読んだヒース大佐は何も言わなかった。
「疑問点の解消が出来たからな。特に言う事は無い。それに、向こうが撤退したんだろう? 来ないのならばそれで良いさ」
退院後、『質問は無いのか?』と、報告書を読んだヒース大佐に問い掛けた時の回答はこれだった。
グーフォ達が撤退した事で、『日常が戻って来た』と言いたいが、あの戦闘中に解けた封印のお陰で自分の日常に異変が発生するようになった。
異変の内容を具体的に言うと、過去の事を『悪夢』と言う形で見るようになった。
忘れていたい、思い出したくない、辛く過酷だった過去。
これを繰り返し、夢と言う形で見るようになり、夜中に何度も飛び起きるようになってしまった。夢を見ないようにする為の魔法は使っているが、効果は無い。
悪夢の対策は、ベーノ・アウ・マルベーノをもう一度封印するしかない。
けれど、ベーノ・アウ・マルベーノの封印に、自分は一切関わっていない。手探りの状態で、ベーノ・アウ・マルベーノの封印の調査を行った。
個人的にベーノ・アウ・マルベーノは、不要な時には眠っていて欲しい。
ベーノ・アウ・マルベーノの聖剣状態で得る効果は強過ぎる。何かが起きてベーノ・アウ・マルベーノが魔剣化してしまった時の事を考えると、こいつが簡単に起きないようにする為の対策が必要となる。
今になって考えると、ベーノ・アウ・マルベーノが封印されていなかったら、もっと早くに存在が露呈していただろう。その時のベーノ・アウ・マルベーノの状態は間違いなく魔剣だ。こいつの存在を知らない皆と遭遇した時、自分はどうすれば良いのか――いや、その時の自分はどんな状態になっているのか、その方が重要だ。
我を忘れて、皆が誰か判らずに、攻撃してしまいそうだ。
そんな状況は防がなくてはならない。
必死に封印方法について考えていると、ベーノ・アウ・マルベーノ側から提案を受けた。本来なら、ヌルの状態でないと会話は不可能な筈なのに、どうなっているんだろう?
疑問を横に置き、ベーノ・アウ・マルベーノの提案内容は『自分が呼ばない限りは眠り続ける。代わりに封印は行わない』と言うものだった。
本当に守れるのか怪しい。けれど、そんな提案をして来る意味が分からない。
詳しく尋ねると、ベーノ・アウ・マルベーノに掛かっていた封印には修復機能があり、グーフォの攻撃で現在これが半分ほど壊れている。修復機能が半壊しているせいで、眠ろうと思えば、眠り続ける事が出来るらしい。
ベーノ・アウ・マルベーノが言うには、自分の魂に封印されていた時間が長すぎた事と、半分壊れた封印の二点が原因で、本来ならば不可能な事が可能となっている。
ヌルの状態でもないのに会話が可能となっているのも、これが原因らしい。
真偽は不明だが、一年間だけ様子を見る事にした。




