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一夜明けて

 ノイズが走った映像()を見る。


 ――誰かが何かを叫んでいる。

 上手く聞き取れなかったが、口の動きを視て『落ち着け』と叫んでいる事だけは判った。


 ――誰かがケタケタと嗤っている。

 馬乗りになって哄笑を上げながら自分を滅多刺しにする、妹だと思っていた異父妹を見上げた。

 母の不貞の証を隠す為に、自分の人生は踏み躙られた。

 本来ならば止めるべき人間は、衰退しつつあった一族を再興させる為に、自分の全てを理不尽に奪った。


 ――聞こえたぞ。我が神子よ。世界の滅びが、お前の願いか。

『菊理になる前の私の願い』を聞き入れた、誰かの声が聞こえた。


 ――助けて欲しいなら、助けてと言え。どうして言わないんだ?

 神界を統べる王の息子がそう言って、手を差し伸べて来たが、自分はその手を振り払った。

「何を言っているの? そんな嘘は信じられない。誰も彼も『何か遭ったら助けます。困った時には声を掛けて下さい』って言って、いざ助けを求めたら、『それは出来ない』って拒んだのよ! 家族や大事な人が人質に取られたからって、逆に私に楽しそうに暴力を振るって、あの女にお金を要求するような奴ばっかりだったのに、そんな嘘吐きしかいなかったのに、一体誰に助けてって言えばいいのよ!」

 

 ――お前が受けた仕打ちを考えると、自暴自棄になって当然だ。気持ちは解る。

 魔界を統べる王の息子が『済まない』と自分に頭を下げた。

 でも自分は、『黒く染まった八つの枝刃が生えた剣』を抱えて、髪を振り乱して叫んだ。

「理由が無いと助けてくれないくせに、価値が無いと切り捨てるくせに、取り返しのつかない状況になるまで動かない奴が、何を言っているの? 必要な犠牲だったと、美化して切り捨ててすぐに忘れる立場の奴が、一体何を理解したって言うのよ!?」


 ――少年は言った。騎士に成りたいから、許して欲しい。やり直しの機会が欲しいと。

 自分の口から出るのは拒絶の言葉だけだ。

「泣いて言う人間の言う事しか信じないくせに何を言っているのよ!? 立場が逆だったら私を切り捨てる男に、何でやり直しの機会を与えなくてはいけないのよ! 私が泣いたら骨が折れるまで殴られていたのに。泣いて嘘を吐いて被害者面をする女を選んだ男は要らない!」

 

 ――考えは変わらぬか。滅びの大聖女よ。

 崩れた神殿の最奥で、金の錫杖を持った教皇と対峙した。

「見た目で人を選んだ連中の代表格が、何を言っているの? 見た目で散々迫害して来たくせに。私と同じ目に遭った皆は、世界の滅びを願って死んだ」

「『愛だの、慈しみだのを言い、強要するのならば、予言の子を排除せずに正しき道へ導け。それこそが真の聖職者だ。何も教えず、導きもせず、ただ迫害して怒りと恨みを買うのが、教会が掲げる聖職者の在り方とでも言うのか』だったな。正しく、あの皇帝の言う通りになったか」

 自分は黒い剣を大上段に構えてから、真っ直ぐに振り下ろした。

 視界が真白に染まり、全てが消滅した。


 ――そうだ。お前の嘆きは正しい。お前の怒りは正しい。お前が抱いた負の感情は、全てが正当だ。押し付けられた理不尽には、理不尽な滅びで返すが正しい!

 誰かが、声高らかに言っている。

 


 ……何だ、これは?

 覚えていないけど、忘れてしまった遠い過去の記憶の可能性が高い。だが、ここまでノイズが走っているのは珍しい。意識も霧が掛かっているようにぼんやりとする。

 黒い剣が気になるのに、剣に意識を集中させると意識が遠のく。

 夢そのものに意識を集中させようとしたところで、突然、場面が切り替わった。

「――解ったかい? ラクス」

 一瞬だけ呆然としたが、懐かしい声で名を呼ばれて我に返り、顔を上げた。

 未だに残るノイズの影響で顔を正しく視認する事は出来なかったが、それでも、血のように赤いが、温かみの有る瞳と目が合った。赤い瞳に映る自分の顔は幼かった。

 夢の中の自分は片膝を突いて自分と視線を合わせる、赤い瞳を持った男性に問い掛ける。出て来た声は舌足らずで少しつっかえていた。

「どぅ、して、で、すか?」

「ラクスの魂と一体化しているこの(つるぎ)は、正直に言うと強過ぎる。保有者のラクスが少しでも望めば、この(つるぎ)は世界を滅ぼす魔剣になる。ラクスを取り巻く状況が劣悪で、自己防衛目的でこの(つるぎ)を取ったとしても、容易く世界を消滅させる剣である事には変わりない。ラクスも自覚無く、幾つもの世界を滅ぼした覚えはあるだろう?」

 自覚無く、幾つもの世界を滅ぼした?

 夢を見ている自分は、その言葉通りの事をやったか、思い出せなかった。

 だが、夢の中の自分は覚えているのか、上手く喋れない代わりに頷いていた。

「己の意思と関係無く、世界を滅ぼさない為にも――この(つるぎ)に関わる事を忘れなさい」

「わしゅ、れる?」

「そうだ。(つるぎ)はここで封印するが、使えなくなる(つるぎ)の事を何時までも覚えているのは嫌だろう? 今から忘却の術を掛ける。この(つるぎ)が必要な状況になり、この(つるぎ)を必要とする相手が来る時が来なければ良いがな」

 そう言ってから、男性は自分の頭を撫でた。

 心地良いと感じる撫で方に、暫しの間、身を任せる。

「まったく、悪辣、奸悪、極悪、暴悪、陋劣(ろうれつ)……。これらの単語でしか、評価不可能で無能な馬鹿しかいなかった事が悔やまれる。有能で真っ当なものから死ぬのは、どの世界でも共通なのか」

 自分の頭を撫でる男性は小声で嘆いていた。

 ここまでの時間が経過して、目の前の男性の顔がハッキリと見えた。同時に意識がハッキリとして来る。

 赤い瞳の男性。自分の名前は葡萄(ラクス)

「今は忘れるんだ。必要になったら、(つるぎ)が勝手に封印を解くか、封印が解ける状況になるだろう」

 赤い瞳が弧を描いた瞬間、糸が切れるように、自分の意識は途切れた。



「――あ」

 我に返るように、不意に目が覚めた。そして、夢を見ていたのに、その内容が思い出せない。

 視界に入った天井は見慣れた寮部屋のものでは無かったが、記憶にあるものと一致している。

 数年前まで、学校に通うまでの間に使用していた部屋の天井だ。混乱は起きない。

 視線を左右に動かせば、点滴懸架台と、そこに吊るされた点滴袋が視界に入る。



 眠る前の事を思い出す。

 部屋にやって来た医者の問診と触診を受けて、貧血の検査を行った。

 失血量はそれほどでは無かったが、念の為に鉄分を補う点滴を受ける事になった。鉄分の点滴は十分程度で終わった。だが、過労の気が有りと判断されて、そのあとに疲労回復効果が見込める点滴を受ける事になった。

 

 

 どうやら、その途中で眠ってしまったらしい。

 だが、起き上がると激しい頭痛に襲われた。この頭痛、まるで長時間眠ったあとに起きるようなものだ。

 サイドチェストの引き出しから、ある筈のテレビのリモコンを探した。見つけたリモコンを操作して、テレビを付ける。空中ディスプレイに映った国営放送の天気予報を見て、自分が眠っていた時間を知った。

 この部屋に来た時刻から現在の時刻を計算すると、半日も眠っていた事になる。

 ……そりゃあ、頭痛が起きて当然だな。

 再びベッドの上で横になった。

 半日以上も眠るような戦闘を行った覚えは無いが、昨晩の戦闘は想像以上に心身を疲弊させた可能性が高い。

 突発的な命懸けの戦闘には慣れていた筈なのに、どうしてしまったのか。

「違う」

 どうしてしまったのか、ではない。

 昨晩知った真実が想像以上に重かった。

「あたしが、皆を巻き込んだ……」

 魔力の残滓で術が反応する。術が反応したのは一人だけ。

 飛躍しているような憶測だが、全員分の武具や道具を作って渡していたのは自分だ。他のメンバーは全員戦闘系だったので、武器の貸し借りはしても、自身で道具を作る事はしなかった。

 グーフォの言い分から考えるしかないが、複数人が特定の一人の魔力の残滓が残った物品を持っていなければ、複数人で術の反応は出ない。

 すなわち、自分が立てた仮説が正しい事になる。

 深呼吸をして、思考を落ち着かせる。

 仮説の真偽よりも、現在取れない選択について考える。

「……ロンは、どうしようか」

 未だに、記憶が戻った兆候が見られないロンの扱いについて考える。

 記憶が戻っているかの判断は簡単だ。自分達は互いを探し出す為の魔法具を一人一個持っている。ロンに限らず、自分を含むパーティメンバーは記憶が戻ったら、他のパーティメンバーを探す癖が付いている。

 未だに会いに来ないと言う事は、記憶は戻っていないと見て良いだろう。

 記憶が戻っていないのならば、助けを求める訳にはいかない。

 仮に記憶が戻っていたとしても、ロンに助けを求める気にはなれない。心の中でロンに謝った。

 ……ごめんね、ロン。

 頼られるような男になる為に頑張っているのを知っていて、頼らない決断を下すのだ。

 今、誰かに会って情報交換をする気にはなれないし、こんな事実は明かせない。

「どうしよう」

 呟きが宙に消える。

 どうしようどうしようと考えて、グーフォの言葉を思い出す。グーフォは優先順位を変えると言っていた。

 向こうが――自分のクローン人間がいる場所の破壊が終わったら、ここに来る可能性が高い。

 とは言え、クローン人間が何人いるか判明していない状況なので、何時来るかも分からない。

 グーフォ対策として先に別の世界に移動するのが良いかもしれないが、どう行動するにしてもヒース大佐と相談してからだ。

 点滴が終わる頃に誰か来る筈だ。

 それまで、テレビを見て時間を潰そう。

 国営放送の内容は天気予報から、昨晩発生した複合大型店の建物崩壊に関するニュース番組に変わっている。

 自分が眠っている間の情報を集める為に、ニュース番組に意識を向けた。



 ニュース番組を見ていて、グーフォの言葉をふと思い出し、ロンの事がバレていないか考える。

 グーフォが気にしていたのは自分のクローンだ。

 ロンが記憶を取り戻さない限り、バレる確率は低いだろう。それでも気休め程度だ。

 ニュース番組は、『北州と西州に存在する複数の研究所が一夜にして倒壊した』内容に変わった。

 建物が倒壊した現地時間に、建物崩壊を招くような地震は発生していない。また、倒壊した研究所は、全て犯罪組織が保有していたものだった事から、犯罪組織同士が争った結果と思われると、ニュースキャスターが情報を読み上げて行き、映像が現場のものに切り替わった。

 木端微塵とまでは行かないが、徹底的な破壊活動を行ったのか、原形を留めている建物は無い。

 ……仕事が速いな。

 それしか、感想が思い付かない。

 この仕事の速さを考えると、クローン人間絡みの研究所を全て潰すのに、時間は余り掛からないと見て良い。

 それは、自分の許に来るまでに残された時間が少ない事を意味する。

 ま、残り時間が少なかろうが、今は点滴が終わるのを待つしかない。そして、ヒース大佐と相談しないと、色々と駄目だろう。可能な限り仕事を終わらせないと、主にスウィフト大尉が泣く。

 動けないこの状況で出来る事は、グーフォへの対策を考える。それしかない。

 対策と言っても、思い付くものは無い。強いて言うのなら盾の代わりが欲しい。かと言って、安易に鎧を着ては体が重くなる。でも、他に盾の代わりになりそうなものは無い。

 テレビを消し、横になる。頭痛は未だに治まらないが、横になっていた方が幾分マシだ。

 天井を見上げて、グーフォ対策を考える。


 これはいよいよ、漫画やゲームでよく見る『あの鎧の研究』を進めるしかないか。


 一度は、『携帯性に優れて、着脱に時間を必要としないから便利そう』だと思い、あの人の手を借りて既存の鎧を基にして形にはした。

 だけど、その後に発生した神との戦闘で壊された。鎧は修復したけど、使いどころが無くお蔵入りになった。

 あの鎧はあの人がたまたま入手したもので、鍛冶の神が戦神用に作った逸品だ。この鎧を基礎にしていなければ、曲がりなりにも主神だった奴の攻撃に耐える事は不可能だし、修復も不可能だ。

 いや、鎧よりも武器が良いかな?

 リハビリ期間中に、新規装備の設計図を描いた覚えが有る。その中から有効そうなものを作るか。材料が残っていれば良いんだけど。

 ちらりと、点滴袋を見た。今回使用されている袋は透明なので、点滴の残量が一目見て判った。点滴の残量が三分の一以下にまで減っている。もう少し時間が経過すれば、医者か誰かがやって来る。

 頭痛はまだ治まっていないのだ。誰かが来るまでもう少し休んでいよう。

 


 少しして、医者と共にやって来た看護師の手で点滴は外された。医者の問診には、頭痛以外に症状が無い事を告げる。頭痛の原因は、自分の予想と同じく『寝過ぎ』と医者に言われた。頭痛薬が貰えたからいっか。

 医者の触診を受けている途中で、大きなボストンバッグを持ったヒース大佐がやって来た。

 失血量を考えた医者は『本当に完治したのか知りたい』から精密検査を行いたいと言い出した。

 完治しているのは間違いないが、精密検査は時間の無駄としか言いようが無い。

 地球で言うところのMRIに相当する精密検査機は確か存在する。でも、撮影に時間が掛かる。判断に困り、ヒース大佐を見た。

 自分と視線が合ったヒース大佐は、この建物に該当する精密検査機が存在しない事を理由に、医者に向かって精密検査は不要と言った。

 医者もこの建物内で精密検査が行えない事を理解しているんだろうけど、渋々と引き下がった。そんなに検査がしたかったのか。

 ヒース大佐が医者を退室させて、ドアに鍵を掛けた。ニュース番組で得た情報以外の、昨晩からの状況をヒース大佐から改めて教えて貰う。

 近くの犯罪組織の拠点らしい場所が、一夜の内に潰された。その数は十を超す。

「クローン人間の生産工場が潰されたのは良いが、実行した奴の正体も動機も判らねぇで、上層部も突然の事態に混乱している」

「……そうでしょうね」

 ヒース大佐は喜べば良いのか、嘆けば良いのか、分からないと言わんばかりの反応だ。自分も何と言えば良いのか分からない。

「上はバタバタしているが、リアは暫くの間、ここで休んでいろ。着替えはこの中だ」

 ヒース大佐は持って来たボストンバッグを自分に押し付けると、早々に退室した。施錠の音が無情に響いた。

 ……休む場所は寮でも良いと思うんだけど、何でここなんだろう? ほぼ謹慎じゃん。

 押し付けられたボストンバッグを抱き締めて、自分は天井に向かって大きく息を吐いた。

 やりたい事があるから良いんだけどね。

 そのやりたい事をやる為に、自分はボストンバッグの中身のチェックを始めた。


  

 グーフォと二度目の遭遇を果たし、一夜明けたこの日以降。奇妙な事が起きるようになった。

 人によっては奇妙とは言わないだろうが、十日も同じ内容の夢を見るのだ。

 けれども、朝になり目を覚ますと、夢の内容を何も覚えていないのに、夢を見たと言う感覚だけが残る。流石に奇妙以外の感想が抱けなかった。

 普通なら、夢の内容が思い出せなくてモヤモヤするところだけど、自分に奇妙以上の感想を抱く余裕は無い。

 潜入調査員の派遣先の犯罪組織の拠点が、正体不明の存在に破壊されたのだ。ヒース大佐を含む上層部は、潜入調査員の安否確認や、調査の進捗具合の把握などに追われている。

 見舞いに来てくれたフルード大尉が言うには、てんてこ舞いと言うに相応しい状況らしい。

 そんな状況なので、自分が呼ばれた事は無い。

 なお、スウィフト大尉は一年振りの修羅場に泣きながら仕事をこなしているそうだ。自分の見舞いに行こうとしたヒース大佐とフルード大尉を引き留める程に仕事に追われている。

 そんな状態のスウィフト大尉には申し訳ないが、自分には一切の仕事が割り振られていない。

 グーフォ対策を考える時間が欲しかったから、ありがたいんだけどね。とは言え、グーフォ対策として有効そうなものは少ない。数年前に書いた設計図と睨めっこしながら、頭を悩ませる、

 凄まじい切れ味を誇る、あの大剣の斬撃に耐えうる防護系の装備を考えなくてはならない。そうしないと、次こそ首がスパッと切り落とされそうだ。

 次にグーフォが現れる時が何時か分からない以上、考えても答えが得られない夢よりも、対策について意識を割くのは当然だった。

 


 また夢を見る。夢を見ている間は『またこの夢か』と認識出来るのに、目が覚めると忘れてしまう。

 ――封印を解け。

 誰?  

 ――緑の猟犬の相手をするには、我が力が必要だ。

 緑の猟犬? 力? 一体、誰なの?

 ――我は、『青の中の青』が鍛えた神剣だ。

 青の中の青? その前に、神剣って、何よ?

 ――我を手に取れ。お前が得るのは、恩恵か呪いか判らんがな。

 効果に偏りがあったら、紛う事無き呪いの剣じゃない。

 ……いや、待て。何でそんな剣が自分に語り掛けて来るんだ?

 ――遠き過去。始まりから五番目より、我らは一つだ。忌々しい魔王の封印で、お前は忘れたがな。

 魔王の封印? 一体、何の事?

 

 問い掛けても答えは無い。目が覚めて自分は夢の内容を忘れた。



 グーフォと遭遇してから、二週間近い時間が経過した。

 自分を殺すと言ったグーフォは、未だに来ない。何が起きているのか分からない。

 判明している事は、『大陸中』の犯罪組織の研究所と思しき建物が、次々と破壊されている事だけだ。

 この全てが、グーフォの仕業だと思われている。

 狙いが自分なのに、何故そんな余分な事をするのか。

 最初こそは、意味が無いと思った。

 でも、破壊された研究所に『クローン人間の研究を行っていた』と言う共通点が発覚し、グーフォの行動の意味に気づいた。

 ここで大切な情報は、クローン人間絡みの刻印機の設計図に使われていた文字が『この大陸のものでは無かった』と言う点だ。事前に知らなければ気づけなかっただろう。

 大陸に存在しない文字と、グーフォの破壊活動。

 この二つから導き出される、グーフォの行動理由は、クローン人間に関する技術や情報の処分だ。

 要するに、大陸に存在するクローン人間絡みの技術と情報が『流失してはいけないものだった』って事だ。

 それは、グーフォが優先順位を変えなくてはならない程の情報と言う事でもある。

 命懸けで入手してくれた人物には悪いが、廃棄しないと危険な状況を齎すものを残して置く訳にはいかない。情報提供でやって来たヒース大佐に進言して、刻印機の設計図は廃棄して貰った。

 それと、ヒース大佐にロンに関する相談をした。記憶が戻っていなくても、狙われる可能性は十分に高い。緊急時の事を考えて、ヒース大佐に無理を言って監視を付けて貰った。

 


 グーフォの破壊活動の終わりが、時間切れを意味する。

 それまでに、有効な手段を作れるかがカギになる。


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