表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

襲撃と発覚した真実

 単独行動禁止を言い渡されてから、半月後。

 ヒース大佐が言うには、上層部は蜂の巣を突いたような状態にまで発展したらしいが、五日も過ぎれば落ち着きを取り戻すも、以前よりも慌ただしく動いているそうだ。

 落ち着きを取り戻したのに、慌ただしいってどんな状況なんだろうね?

 自分がお偉いさんと接触する機会は無いが、半月前からヒース大佐経由で色々と質問を受ける。

 この日も、ヒース大佐経由で手元に来た質問状と格闘していた。流石に、実験をしないと判らないものに関しては、ヒース大佐に確認を取り『これに関しては実験しないと判らない』と書いた。

 不可解な事に、配属されてから一年以上も時間が経過しているのに、この手の質問状は一度も来なかった。

 ヒース大佐も同じ疑問を抱いて問い合わせをしたが、『入庁早々に質問攻めにして仕事が回らなくなっては困るだろう』と、何とも腑に落ちない回答が返って来た。

 この回答では、在学中に質問状が来なかった理由を尋ねたら『学業に集中させる為』とか言いそうだな。

 質問状の内容の殆どが、実験を行わないと判らないようなものばかりだった事もあり、質問状はヒース大佐が制限するようになった。

 そのお陰で一時は大量に来た質問状は、僅か半月で完全に来なくなった。

 質問状が来なくても、仕事は溜まっている。

 溜まった仕事を処理する為に、部屋から出ない日々が続いていた。

 単独行動するなと言われてもね。

 自分は車も免許も持っていないので、出勤する時はフルード大尉か、ヒース大佐が運転する乗用車に同乗させて貰っている。スウィフト大尉は運転免許を持っているが、二人の内のどちらかと一緒に出勤している。

 買い物をしたい時は、庁舎内に存在するコンビニのようなお店に行けば、大抵のものはここで購入出来る。店内に無い場合は、レジ横のカタログから選んで発注すれば、店頭支払い・店頭受け取りで購入可能だ。

 ありがたい事に、このお店は二十四時間営業なので、深夜の時間帯でも利用出来た。何時かのニキビ用に医薬化粧品もこのお店で購入した。

 深夜に利用したくても、今は単独行動禁止を言い渡されているので、誰かと一緒でなければ利用出来ない。

 単独行動可能な範囲は同じ階層のトイレぐらいだ。

 こんな状況だけど、身の安全を考えると諦めるしかない。



 単独行動禁止を言い渡されてから、更に一ヶ月が経過したある日。

 ヒース大佐が『気分転換を兼ねて、夕食を外で食べよう』と提案した。

 断る理由は無いので自分は受けたが、スウィフト大尉は早く寝たいからと断り、一人で寮に帰った。

 残り三人はヒース大佐の運転で移動し、デパートのような複合大型店の一画に存在するお店で夕食を取った。スウィフト大尉には、そのお店のお弁当をお土産として購入した。

 地下駐車場にエレベーターで下りた時、突然大きな縦揺れが発生した。

「地震か?」

「それにしては、揺れ方がおかしいですよ」

 真っ先に『地震発生』を疑ったヒース大佐だったが、揺れは一度だけ発生した。地震だったら、もう少し揺れると思うので、自分はフルード大尉の言葉に同意した。

 外の様子を見れば何か判るかもしれないと、ヒース大佐の乗用車に乗せて貰い地下駐車場の外に出た。



 乗用車で地上に出たが、地上は一言で表すと、夜でも一目で分かる惨状が広がっていた。

 建物は縦真っ二つに割れており、建物の割れ目が崩れた際に発生した衝撃やガラスの飛散が原因と思われる負傷者が大量に出ていた。自分達は地下にいたんだが、よく地下にまで貫通しなかったな。

 車を建物から離れた場所に止めて、ヒース大佐はどこかに連絡を入れる。

 自分とフルード大尉は、言い方が悪いが指示待ちだ。自分に出ている『単独行動禁止令』が無ければ動いたんだが、今は上の判断を待とう。



 自分達三人には、庁舎に戻れと指示が出た。

 まさかの指示に驚きの余り、思わず『ええっ!?』と声が出てしまった。

「救助の手伝いは……」

「もうすぐ救助隊が来る。どこの組織の仕業か分からん上に、リアは狙われている可能性が高い。救助隊の邪魔になる前に移動するぞ」

 自分が狙われている可能性が高いのは事実だ。自分が魔法を使えば負傷者の治療はすぐに終わるが、こんなところで大っぴらに使う訳にはいかない。

 移動するぞと促され、建物を一瞬だけ見てから一歩踏み出した時、頭上から舌打ちが聞こえた。

 同時に、周辺の音が消え去った。

 顔を上げると、そこには一人の少年が空中にいた。大剣を肩に担いだ、灰銀の長髪を揺らす少年の目元には布が目隠しのように存在した。

「くそっ、外していたか」

 悪態が聞こえた。そんな事はどうでも良い。

 犯罪組織よりも、更に悪質な存在が目の前にいる。

「何で、ここにっ」

「何もどうも、情報の流出を防ぐ為だ。それに、言った筈だ。『貴様も排除対象だ』とな」

 空中にたたずむ少年は自分に、大剣の切っ先を向けた。

 自分は咄嗟に周辺を見た。

 ヒース大佐とフルード大尉が傍にいて、空中の少年を呆然とした顔で見上げている。

 だが、どんな原理が働いているのか。二人以外の物体の動きは停止していた。

 消音と指定対象物以外の時間停止。

 この二つが同時に起きたと言う事は、結界か何かが展開された可能性が高い。

 大剣の切っ先に光が集まり始めた。

 ……不味い。

 直感に従い、一息で少年との距離を詰めた。少年の肩を掴み、空間転移魔法で可能な限りの上空へ連れて行った。直後、視界が真白で埋まった。

 咄嗟の判断で障壁を展開したが、爆発の威力から身を守るには至らなかった。

 障壁は砕け散り、爆風に吹き飛ばされて、空中を錐揉み状態で飛ぶ。

 重力魔法による疑似飛翔で体勢を立て直し、空間遮断型の障壁を球体状に展開した。障壁の展開が終わると同時に大剣が振り下ろされた。大剣が障壁に沈んだ。空間遮断型の障壁に亀裂が入る。

 凄まじい切れ味を誇る大剣が、障壁を切り裂いて眼前に迫った。

 身を捻って迫る大剣を紙一重で回避するが、問答無用の攻撃が続いた。 

 盾を宝物庫から取り出したいが、視界を狭めたらそれだけで不利になる。

 何より、大剣を振り回しているとは思えない程に攻撃が速い。一瞬でも、視界から大剣を外したら、次の瞬間には首が飛んでいる可能性が高い。それに武器を取り出す余裕は無い。

 更に厄介なのが、この大剣は魔法を切り裂くのだ。目潰しとして魔法を何度か放ったが全て大剣に切り捨てられた。

 魔法を切り裂く原理は、自分が保有する魔食いの大鎌リッデルと同じ見える。異なる点は、魔力を吸収しない事か。どんな違いがあるにせよ、現状を変える情報ではない。

 息を吐く間もない連続攻撃が襲って来る。絶え間なく続く攻撃を全て回避し続け、状況の打開策を考える。

 何か策は無いかと、必死に思考を回していると、一瞬だけ、視界を別の映像が遮った。

「――っ!?」

 視界が遮られたのは一瞬だった。だが、この一瞬が致命的だった。


 こんな時に見えた映像は、霊視が知らせる『危険予知』だ。内容は『数秒後にやって来る死の危機』を映像で知らせるものだ。

 こんな時に見えなくてもと思ってしまうが、映像の内容に目の前の敵は関わっていない事に困惑する。

 

 大剣の切っ先が鼻先にまで迫っていた。

 このあとにやって来る危機を考えると、一か八かで利用するしかない。

 頭を振って大剣を回避するも、大剣は右の首筋を撫でるように通り過ぎた。

 完全回避とはならず、皮膚を裂かれた感触が伝わって来た。一瞬遅れて、熱を持った何かが皮膚を伝う感覚が伝わって来た。

 大剣が通った位置を考えると、骨に当たった感触が無いから、首の頸動脈を切り裂かれたか。

 だが、この程度で怯んではいけない。

 一歩踏み出し、大剣が引き寄せられる前に伸び切った少年の腕を掴んだ。

 少年が驚きで息を呑んだ音を聞いた。少年の腕を引き寄せ、胸倉を掴んだ。そして、回転するように立ち位置を入れ替えて背後からやって来る危機に対しての、盾にする。

「っ!? 何だ!?」

 小さな炸裂音と少年の反応を見て、間一髪間に合ったと確信した。

 けれど、少年には痛痒にも感じていないのか、掴んでいた自分の手をあっさりと払われてしまった。

 自分は少年から距離を取り、右の首筋に手を当てて治癒魔法による治療を行った。

 一方、治療を行っている自分を無視して少年は、背後の遥か遠くを見ていた。

「ちっ、邪魔か……。いや、同じ顔が――六人もいるのか」

 同じ顔が六人。少年は確かにそう言った。同じ顔が六人と言う事は、自分のクローン人間が、最低でも六人いる事になる。

 思わぬ情報を得た。

 自分も今更だが、千里眼を使って少年が見ている方向を見た。確かに自分と同じ顔をした六人の女がいた。

 何やら考え込んだ少年は大剣を背中の鞘に仕舞った。自分も千里眼を停止させる。

「貴様の始末はあとだ。先に同じ顔をしたアレを処分する」

 非常に身勝手な物言いだが、退いてくれるのならありがたい。けれど、少年の言葉には続きがあった。

「だが、あの秘術は一人の魔力にしか反応しない」

「え?」

 こいつは、今、何て言った?


 ――あの秘術は一人の魔力にしか反応しない。


「その筈なのに、何故、貴様と同じ顔をした奴が複数人もいる?」

 少年は視線を遠くから自分に戻して、問うて来た。言わねば殺すと言わんばかりの殺気が含まれている。少年が放つ殺気は浴び慣れているから委縮はしなかったが、頭は混乱している。

「……それは、魔力の残滓が残っていても、反応するのか?」 

 沈黙を挟み、一瞬頭に浮かんだ仮説の真偽を確かめる為に、慎重に言葉を選んで回答した。

「あ゛?」

 外見から想像も出来無い程に低い声が少年の口から漏れた。

 少年の反応は、目元の布が無ければ、威嚇しつつも首を傾げるヤンキーのようなものだった。目元の布越しに、胡乱気な視線を感じる。

 少年のその反応を見て、仮説が正しい事を知った。改めて、少年が求める回答を混ぜて口にする。

「この世界の技術で複製された、人間でも同じ事が言えるのか?」

「……成程、あの六人はこの世界の技術で複製されたか。魔力は魂と直結している。残滓であれど秘術は反応する。あの顔は直接出向いて調べれば判る事だな。ちっ、優先順位を変えるか」

 納得したのか、少年は徐に大剣を虚空に仕舞い、自分に向き直った。 

「我が名はグーフォ。緑のヴェーダ内で禁忌に手を出したものを処刑するエクゼクティスト」

 少年は自分に向かって『グーフォ』と名乗り、目元の布を僅かにずらした。グーフォの瞳を見て自分は息を呑む。僅かに見えたグーフォの瞳は金色の光を帯びていた。

 金の光を帯びた瞳を保有していると言う事は、自分と同じく霊力を保持している可能性が高い。

「貴様があの阿保の被害者であろうとも、秘術の情報流出を防ぐ為に必ず殺す」

 そう言い残して、グーフォの姿が虚空に消えた。



 戦闘が終わった事を理解し、これまで感じていなかった疲労を感じ、失血による眩暈で視界が歪んだ。

「はぁ、戻らなきゃ」

 疲労で指一本動かすのも億劫に感じる。だが、先程の狙撃を考えると、早々にこの場から移動した方が良い。

 高度を下げて、放置していた二人の許へ向かった。



 縦に崩壊した建物の近くに行けば合流出来るかもと思い、少年と遭遇した場所に向かった。別行動を取ってから長時間は経過していない筈だ。

 運の良い事に、二人はまだいた。地面に降りてから一声掛けて二人に近づいたけど、驚かせてしまった。

 改めて、自分の姿を見下ろした。

 衣服はズタズタに裂けており、右の首筋を中心に大量の血が付着している。

 ……どこをどう見ても、建物の崩壊に巻き込まれた被害者だよね。

 遠くに見える建物を中心に、今も大声と怒声が飛び交い、救急車のサイレンがけたたましく鳴り響いている。

 血相を変えた二人に手当は済ませた事を伝えて、アレからどうなったのかを教えて欲しいとお願いした。

 だが、自分の姿を知らない人には見せられない。フルード大尉が運転する車で庁舎に向かい、その移動途中にヒース大佐から教えて貰った。


 今の時間は大体二十一時前と非常に暗い。

 だが、建物の崩壊の仕方が綺麗だったお陰で、瓦礫に埋まった人々の救助自体は早々に終わった。けれど、負傷者の数が多く、病院へ移送する救急車が足りない状況だ。現在、首都各地から救急車を呼び集めている。

 未だに鳴り響いているサイレンは、呼び集められたか、病院から戻って来たかのどちらかと言う事になる。

 飛び交っている声は、負傷者の重症度具合で、救急車に乗せる順番を決めていると説明を負傷者の身内に行っている。負傷者の身内は説明を聞いても『早く病院へ移送しろ!』と救急隊に怒鳴り散らしていた。

 重症者から順番に病院に移送する事が決まっていても、身内が負傷したら一刻も早くに病院へ連れて行って欲しいと思ってしまう。それが、家族の情なんだろう。


 ……自分はその情を向けられた事が無い。

 ヒース大佐からの説明を聞き最初に思ったのは、過去の人生の血縁者だった人達の事だった。

「現場の混乱はそろそろ終息する。リア、貴様の方はどんな状況だったんだ? 戻って来たからには、終わらせて来たんだろう?」

 ヒース大佐から逆に説明を求められた。どこまで話すべきか悩んだが、この二人は自分が転生者である事を知っている数少ない人達だ。

 関係無いところを省いて、正直に話した。


 空中で戦闘になった事。

 途中、狙撃による横やりが入り仕切り直しになった事。

 発覚した自分のクローン人間の人数。

 優先順位を変更した相手が去った事。

 

 要点を纏めると、この四つになる。

 この四点を二人に報告している内に、庁舎へ到着した。

 ヒース大佐の上着を頭に被せられて移動したが、移動先は数年前に利用した隔離病室だった。

「リア、今夜はここに泊まれ。俺とウィリアムは上への報告と、仕事部屋で幾つかの調査を行う」

「ヒース大佐。負傷は癒えていますよ」

 数年振りにこの部屋にやって来たが、負傷自体は癒えている。失血も魔法を使えば元に戻せる。

「服に付いた血を見ろ。大量の血を流したんだろ? 貧血を起こす可能性が有る。遅い時間になるが、必ず医者を呼ぶ。その時に負傷が完全に癒えているかどうか見て貰え。ついでに貧血の検査も受けろ」

「確かに頸動脈をやられましたが……」

 大剣で切り裂かれた部位を口にすれば、フルード大尉の表情が硬くなった。

「だったら、尚更だな。先ずはシャワーを浴びて血を落とせ。確か病人服がこの辺にあった筈……あ、あった。こいつに着替えろ。替えの服は明日ペイジに準備して貰い、俺が持って来る。それまで、この部屋にいろ」

「……分かりました」 

 魔法でどうにかなると主張すべきか悩んだが、一人になる時間を求める本音が強くなり、ヒース大佐の言葉を受け入れた。

 白い病人服を受け取り、退室する二人を見送った自分は、言われた通りにシャワーを浴びて髪と肌に付いた血を落とした。

 その際に来ていた服を改めて見た。確かに貧血を疑われても仕方が無い。そう判断してしまう程に、衣服の広範囲に血が付いていた。

 着ていたブラウスの色は白だ。返り血で済ませない程にブラウスは真っ赤に染まっていた。お湯で血を落としても、血の色が残った。それ以前に、スカートとカーディガン同様にボロボロなので捨てるしかない。ストッキングもあちこちが破れている。履いていたパンプスと下着も無事とは言いがたい状態だ。

 下着を含めて全て処分するしかない。

 次の休日に、手持ちの衣服の残り残数を確認しなくてはならないな。

 備え付けのタオルで体を拭き、髪は魔法で乾かした。

 病人服を着てベッドに腰掛けてぼんやりと、視線を虚空に彷徨わせる。

 思い出すのは、金の光を帯びた瞳を持った、グーフォと名乗った少年との戦闘だ。

 

 ――あの秘術は一人の魔力にしか反応しない。


 ――残滓であれど秘術は反応する。


 ――我が名はグーフォ。緑のヴェーダ内で禁忌に手を出したものを処刑するエクゼクティスト。


 ――貴様があの阿保の被害者であろうとも、秘術の情報流出を防ぐ為に必ず殺す。


 耳に残っているグーフォの言葉は重く、多くの事が発覚した。

 その中でも重いのは『あの秘術は一人の魔力にしか反応しない』と『残滓であれど秘術は反応する』だ。

 

 自分と同じく転生の旅を続けている九人は、自分が作った武具と道具を身に付けている。

 それは、転生の旅が始まる前からだ。

 グーフォの言葉を聞いて、自分は一つの仮説を立てた。 

 それは、『秘術の対象が菊理だけだった』だ。

 一人の魔力にしか反応せず、残滓としか言えない量の魔力にも反応する。

 転生の旅が始まる前、自分は皆の武具の修理も請け負っていた。武具も状況に合わせて、新しいものを作って皆に渡していた。

 つまり、自分の魔力を帯びたものを常に身に付けていた事になる。

 

 ――たった独りの旅にならなくて良かった。

 

 遠い昔。そんな事を一度だけ思った事がある。

 でも、その思いの答えは『巻き込んだ』だった。

 同時に、自分だけが霊力を得てしまった理由が判明する。

 要するに、秘術が反応した魔力の量の違いだ。バケツの水と水滴レベルの違いと言えば良いのか。

 皆が――あの九人が、霊力を得なかったのは、あの時に、自分の魔力を強く帯びていたものを所持していなかったからだった。

 どうして自分だけが霊力を得たのか? それは、秘術の対象が自分だけだったからだ。

 ……知りたくなかった、最悪な現実だ。

 何故このタイミングで知ってしまったのか。

 よりにもよって、あの男を殺し損ねて、解呪方法は無いと判明したあとなのに!

 タイミングと状況の悪さを嘆いても、何も変わらない。


 ベッドの上で横になった。天井を見つめた。

 そのまま、医者が来るまでぼんやりとしていた。



 全ては振出しに戻った。

 旅の目的を無くして、旅の意味を無くして、これから、どうすれば良いのか?

 その答えは、どこにも無い。 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ