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神の頬に触れるような気持ち  年代記第六章  作者: ヌメリウス ネギディウス


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六章 排泄するだけの猿じゃないといえるかい 33

次で一戦目はラストになると思います。

 ドゥラは次の手番でゴーレムを捨て札にする。気合を入れてめくったカードはカジモドだった。これで猿の問題は解決する。ほっとしたが表情には出さない。すぐにでも使いたいところだがゴーレムをプレイしてしまったので次の手番まではやる気持ちを抑える。これ以上できることはないので手番を終える。

 タパは次手番乞食をプレイし捨て場からカードを取った。この効果はドローしたのと同じ扱いとなるので新たに引く必要はない。捨て札を置く捨て場は本来各個人で捨てていくが、二人は共通の捨て場に捨てるというルールでやっている。いわばハウスルールだが、特に自分の捨て場でのみ効果を発するカードはないので支障はない。捨て場の捨て札は表向きだが、改めて見ることはできないので何を取ったかはわからないが、予想はできる。十中八九こちらのカードを取ることができる道化師だろう。別にルール上は何を取っているか見ても構わないのだけれど、マナーとしてお互い見ないようにしている。けれど、だいたい何を取ったかはわかるので見る必要がないといった方が正解かもしれない。

「さぁどうぞ」

 ドゥラの手番だ。なんとか間に合った。もしそのままだったら道化師を使って建設王を取られていたことだろう。猿を処理した後に建設王をスロットに入れてしまえば建設王を守ることができる。スロットは堅牢な檻なのでそう簡単には手を出すことはできないのだ。当然カジモドの③の効果を使いカジモドを犠牲(サクリファイス)にして猿を封印しようとした。そう口に出そうになったが、ある妙案を思いつきそちらにシフトすることにした。それは大きな賭けであり、完全なる悪手だろうし利益はないだろう。敗着となったならこの手が原因なのは間違いない。タパだけに通じるタパの狙いを逆手に取った方法だ。

 妙案とはカジモドを捨てスロットの猿ではなく手札の建設王を封印する。タパはグリュックスや猿など明らかにわかっていたところをみるとおそらく何枚かのカードは裏側でもわかるのだろう。まだ出ていないカードも多いのでカウンティングではなさそうだ。けれど全てのカードを覚えることは不可能だと思う。あまりにも数が多すぎるからだ。それは時々斥候でこちらのカードを調べていたし、最序盤に乞食のカードも見抜けていなかったことからもわかる。それすら演技である可能性も捨てられないが疑いだすとキリがないだろう。建設王は当然裏でもわかっているだろうが、別に構いやしない。封印してしまったらどうしようもないだろう。またどうやって猿を処理するかを考えなくてはならないがそれは追々考えることにしよう。まだ迷いがないと言えば嘘になる。悪手が劇的な一打(チャンクプレイ)になることはないと思う。ふと本で読んだ格言が頭をよぎる。人間は考えているように見えてそれは迷っているだけ、だそうだ。その通りだなと思う。

 ドゥラは決断し、カジモドを捨て建設王を封印した。ドローしたカードは斥候だ。封印したカードを取り戻す効果を持つカードは五枚ある。あえて封印したカードを復活させる意味がないので滅多にその効果は使われることはない。封印するということはかなり厄介で使えないカードなので、猿などを復活させて相手に押し付けるなど嫌がらせの側面が強いのもその要因だ。役に立つカジモドなどのカードは大抵一度しか効果は使えないので復活させても無意味なことが多い。タパが建設王を諦めたならそれはそれでいい。猿を残した不利益も許容できる。タパが何か言ってくるかと思ったが何も言ってこないのが少し後ろめたい。嫌味の一つでも言ってくれればいいのだけれど。

 自分は意地が悪いのだろうか? 急に罪悪感に襲われる。明らかに勝負と関係のない手だとは思う。ここで建設王を封印する意味はない。嫌がらせと取られても仕方がないだろう。ここでタパがカードを自分に投げつけてきて怒ってもこちらは何も言えない。ひどく自分が嫌な人間に思えてくる。

「別に気にしなくていいんじゃないか? 反則ってわけじゃないし、俺が逆の立場なら同じようにしたさ。モメンタムは大事だろ。勝つために手段を選ばないってのはいうのは簡単だが実際は難しいからな」

 こちらの心の内を見透かしたようにタパは言った。けれどその言葉に救われたのも事実だ。

「遠慮はなしだ。全力をつくすよ」

「そうこなくっちゃ」

 ドゥラの言葉にタパはそう答えた。


 タパは次手番、再び捨て場から一枚回収した。少し考えている。

「人間は考えてるように見えているだけでその実悩んでいるだけだってさ」

 ドゥラは先ほど思い出した格言で横槍を入れた。タパは普段ほとんど長考しない。ほぼノータイムでプレイしてくる。こちらの手番の間に考えているのだろうが、ここで考えるということは戦略を変えたことを意味する。こちらの意図を推し量っているのだろう。直前でプレイを変えることはオーディブルというのだがタパがオーディブルを過去にした記憶はなかった。

「なかなか興味深い話だけれど、邪魔しても無駄だぜ」

 タパは鼻で笑った。

「道化師を使って解体屋を捨てる。それでスロットにカードを入れる。手番終了だ」

 タパの手札は新たに回収した一枚とスロットに一枚(乞食だろう)で手番を終えた。

 ドゥラの手番だ。タパは道化師を使ってこちらの建設王を取るつもりだったが、自分が封印してしまったので珍しく逡巡したのだろう。道化師を他のことに使ったのでこちらが建設王を持っていないことはわかっているというわけだ。こちらが乞食を必要とすることは察してスロットに入れてきたのか。まぁ先ほどの会話でこちらがやったことは見透かしていたようだけれど。今の手番で乞食をスロットに隠し、そして一枚残した。おそらくこちらのマークによる攻撃に備えての行動だ。

 封印したカードを復活させる方法にもうシフトしてタパは今頭を巡らせていることだろう。

 現在、ドゥラの手札は満杯の状態だ。手札を減らしたいと思う。猿を持っているので直接攻撃でタパを敗退させてはいけない。マークのカードは攻撃を失敗しても敗退することはない。勝たないように攻撃するわけだ。それにはどのカードを攻撃するかだ。乞食を攻撃するのが一番妥当なのだが、スロットに入れられているので攻撃できない。問題はスロットに入れたのが乞食ではなく捨て場から拾ったカードである場合だ。乞食を入れたとは思うのだが確信は持てない。もし乞食を攻撃してしまうとこちらが勝ってしまうので猿を持っているために敗退が決まる。タパならそこまで考えているはずだ。だがこちらが安易に攻撃せずにマークを温存すると読んでいるかもしれない。

 こちらが猿を処理した後に建設王を取られないように守るためスロットに入れることを見越して道化師を二枚とらずにアーゲントゥアをとったというのはどうだろう。現にそのつもりでいたわけだし。こちらが攻撃してタパが負けないカードで、捨て場にあるカードといえばアーゲントゥアの10、グリュックスの9、レルムの8の三枚だ。さらに直接狙ったカードを奪取できるカードはこのゲームの中で意外にも少なく、三種類五枚しか存在しない。他の手札交換はアンナのように一度だけしか使えなかったり、ランダムだったりするのでここでは最適解ではない。あくまでタパはこちらが攻撃して勝ちにくることを防御する目的プラスカードを奪取できる、その両方ともを満たすアーゲンだと思われる。

 乞食を攻撃されないようにスロットの中に隠し、アーゲントゥアの②の効果を使いスロット内の乞食と建設王を交換するつもりだったのではないだろうか。先の先を読んだいい戦略だ。こちらが攻撃しても強さが10なのでアーゲントゥアなら負けることはない。

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