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神の頬に触れるような気持ち  年代記第六章  作者: ヌメリウス ネギディウス


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六章 排泄するだけの猿じゃないといえるかい 32

 今のタパの言葉が虚勢やハッタリ(ブラフ)だと断定することはできない。プレッシャーを与えてミスを誘発するためとは思えない。おそらく本当なのだろう。二手番以内になんとか対策を立てなければならない。頼みの綱のレルムを失ったのでもはや敗色の色は濃い。

 ドゥラの手札は呪い二枚と解体屋、スロットのポーターのみなのだからあまりいろいろと考えても仕方がないだろう。使えるものはない。解体屋をスロットに入れて呪いを処理しようかと考えていたが捨てるまでまだかなり手番がかかる。それまでに残り一枚の道化師を引かなければならない。

 とりあえずレルムを失って手札に一枚余裕ができたのでドローすることにする。ドローしたカードは兵。ついてない。舌打ちを漏らす。だが手札を満杯にしておくのは危険なので兵を捨てる。どうせ持っていても使い道はない。手番終了。

 タパの手番だ。タパはドローし、引いた兵と一緒にブローカーを捨てる。

「ブローカーの効果を使っておまえの捨て場からマルグリットをとるよ」

 いつの間にマークを引いていたのだろう。

「おいおいおいおい、次攻撃か」

 タパは答えず一枚ドローして手番を終える。ドローした後に少しだけ動きが止まった。自分のカードを見てではなく明らかに山札の方を見ていたように思う。

「ミスったな。まぁどのみちドローはしなくちゃいけないか。塩を送ることになるな」

 タパは小さい声でそう呟いた。

「タパ、心の声がだいぶ漏れてるぜ。それにおまえがカードを操作しているわけでもないだろ? それにおまえ王を捨てるのに建設王を使ったのにいつまで持っている気だ。持っていても仕方がないだろ、捨てないのか?」

 思わず言ってしまった。

「助言ありがとうよ、ドゥラ。でも俺は捨てる気は無いよ。持ったままで勝てると確信している。それが俺がこの勝負で譲れないところなんだ。ここをぐだぐだにしてしまったら勝負の流れを手放すことになると思っている。お前の好きな利益とは真逆になるけどな」

 タパは少し笑って言った。

「こだわってたら俺は逆に負けると思うけどな。時にはすっぱりと諦めて切り捨てることも必要だろ? 柔軟に対応しなきゃ」

「まぁそれも一理あるけどな。どちらが正しいってわけでもないしな。さぁ楽しいおしゃべりはこのぐらいにして、次の手番だぞ、ドゥラ。しゃべっている間に考えはまとまったかい?」

 ドゥラが話しながらも今後の展開を考えていたことが見透かされていたようだ。最後の一手番まで諦める気はなかった。たとえこの一戦は落としても次に繋がる伏線を打っておきたいところだ。

 ゲームは中盤に入っている。残ったカードを推測しよう。贋作師、斥候、古代の機械人形、拷問人、ゴーレム、鼓笛隊がそれぞれ二枚残っている。道化師と猿が一枚、あとはユニークの英雄カード、アオス、グリュックス、ヘルペチク、オデギズーワ、スワン・バナシア、死神、ヴァトレニ、レヴェル、カジモド、ウォルター・ミュラー、ヴァイサーウインド、ファタ・モルガナ、ヴァーウィック兄妹の二枚、計二十八枚。タパが持っているのはおそらく建設王、マーク、マルグリット、とあと一枚。どれでもいいので英雄が出ればだいぶ変わって来るだろう。

 とりあえずタパが送ってくれた塩とやらを確認しよう。山札の上のカードをとる。英雄グリュックスリッターだ。これはやっと使えるカードが来た。このカードを持っているとマークを使えないのは痛いところだが呪い二枚持っているのがかなり有効に働くだろう。①の効果である復活を使うことで呪いを処理できる。タパの攻撃をあえて受けることで戦況を五分に戻すことができる。だがそれを使わなくても自爆で丸ごと変えるという大技を使うのも良いだろう。こちらが優位に立つことができる。ここは勝負に出ることにする。

「自爆を使うよ。申し訳ないけど」

「別に謝る必要はないよ」

 グリュックスリッターを捨て札にして呪い二枚と解体屋、ポーターをタパに渡す。タパはグリュックスリッターがないので復活することはできない。かわりに来たのが鼓笛隊、建設王、マーク、マルグリットの四枚だった。これならタパのどのカードを攻撃しても勝てる。次の手番で終わりだ。とりあえずこの手番はドローして終えよう。ドローしたカードはよりによって猿だった。何食わぬ顔でスロットに入れて手番を終えた。

「これはまたひどいね。ゴミ屋敷だな」

 タパは言った。

「二手番で詰むんじゃなかったのか?」

「その予定だったんだけどな。まぁたまにはミスるさ。でもまだ終わったわけじゃない」

 タパはこちらのスロットを見てそう言った。おそらくこちらが猿を引いたことはわかっているだろう。先ほどこちらが次に引くカードがグリュックスリッターだと知っていたように思えてならなかった。だから山札を気にしていたのではないだろうか? なのでさらに猿を引いたこともわかっているのではないか。

「ともかくそちらの手番だ。次で終わるかもしれないぜ」

 一応ブラフをかましておく。

 タパは少し笑うとカードを一枚ドローする。カードを見ながら少しだけ考えそのカードを出す。道化師だ。

「①の効果を使うよ。スロットの入れ替えをする」

 タパはそう言うとポーターを手札に戻し解体屋のカードをスロットに入れた。

「手番はここまでだ」

 道化師を使ったのはベストな選択だろう。解体屋をスロットに入れるとポーターの効果が失われてしまうので手札制限の三枚が復活してしまう。だが次の手番で呪いを処理してしまえば一時的でもまた手札はない状態で始められる。一枚引いてその一枚に賭けるという戦いを続ける必要はなくなったわけだ。

 次手番、ドゥラは勝てる状況の中、猿を引いたために攻撃できない。攻撃してタパを脱落させてしまうとこちらが敗者となるためだ。しかもスロットが開放されるまでに処理しなければ猿が逃げ出し敗北する。

 いかにして猿を処理するか。一番よく使われるのはイーオンの浄化だろう。

 乞食をとるのはどうか? 猿を所持しつつ捨て場からカードを拾うことができる。猿は乞食がないとスロットの外へ出すことができない。スロットの中は開放するまで使うことができない。乞食はサプライにあるので入手は簡単だが、それだと猿に加えて乞食まで処理しなくてはならなくなる。手間が増えそうとう手番を要するだろう。とりあえずは乞食を取り猿をスロットからだして処理すべきか。他に方法はないだろうか。ここで建設王のカードが目に入る。

「建設王の①の効果は王を捨てて使用済みだよな」

「ああ、ルールではそうだな。もう使えないな」

「でも③のスロットの開放はいきているよな。スロットから出さなくても猿は処理できるよな?」

「このゲームのルールブックと言われているおまえが今更なに言ってるんだ? そんなの当たり前だろう? スロットから出すと負けるけどな」

 つまりスロットは常時開放されているが、スロットに入れておきさえすれば本当に開放される五枚前までは猿を持っていても敗北することなく、乞食を持っていなくても猿のカードに直接干渉することができるというわけだ。

「ルール間違いで敗北なんて目には会いたくないからな。確認したんだよ」

 百戦以上してきているがつねに違った展開を見せ同じ結末にならないのがこのゲームのすごいところだ。

 タパはこちらが猿を処理している間にマークで攻撃されても大丈夫なように対策を打ってくるに違いない。タパの戦略はわかっている。今回建設王が中心であるのは明白だ。どうすれば勝利できるかを逆算して戦略を立てているのだろう。どのカードも建設王を生かすために使われる。コンボもシナジーもすべてタパの中では決まっているのだろう。つまり今自分が持っている建設王を何が何でも取り戻そうとするのではないだろうか。タパはカードを強奪できるカードを手にいれてこちらの建設王を奪うつもりなのだろう。どうやって手に入れるつもりかはわからないがこの見立てはおそらく当たっていると思う。

「長考か?」

 タパが聞く。

「確実に勝てる方法を模索しているところだ」

 道化師が枯渇してしまったので残りは二十五枚。

 猿は最も弱いカードだ。だがこれをタパに押し付けるというのはどうだろう。封印できるカジモドを引けば素直に封印するが捨て場から乞食の効果でアンナやアーゲンを回収しても良い。猿さえ渡してしまえば乞食を持っていても負けることはない。そうなると問題となるのは手札制限である。スロットの猿はそのままで、マークとマルグリットの二枚は切り札だ。建設王もスロット解放と手札を増やしているので捨てるわけにはいかない。鼓笛隊はすぐ捨てるがまた一枚捨てて一枚引くというのは効率が悪いことは身にしみてわかっている。鼓笛隊で一手番だけ手札を無限にできるが、一手番でできることは限られるだろう。

 残りのどのカードが有用か考える。贋作師は二枚ともでていないので使えるカードだがコピーするためには兵のカードが必要となってくる。兵は全て出払っているのでゴーレムが必要となってくる。ゴーレムは拾えるが、これも手札制限の問題が発生するので、マークとマルグリットを捨てる必要性がでてくるだろう。斥候は山札を並べ換える効果を使うのが妥当だろう。必要なカードを選ぶことができる。これも二枚ある。古代の機械人形も③の効果を使い捨て場からカードを拾うことができる。これは乞食とほぼ同じ効果なので使えるだろう。拷問人はマークを使う際に確証を得ることができるので必要度は落ちるし、今はタパの手札は把握しているが、手札が一掃されれば必要となるだろう。あとはゴーレム。これは今は使い道はないのでできれば引きたくはないカードだ。英雄たちは最も引いてはいけないのがレヴェルだ。手札の合計が16を超えると即座に敗退する。王より危険なカードだ。引かないように祈るのみだ。引くことを恐れ高得点の使えるカードを捨てるのはあまり褒められた戦略ではないだろう。後手後手に回ると勝てるものも勝てなくなる。カジモドは今一番欲しいカードだ。猿を封印できる。ヴァトレニ、死神、オデギズーワ、ヘルペチク、ヴァイサーウインドはスロットに入れなければ使えないので今は必要ない。スワン・バナシアとアオスは捨て札にできなくなるので戦略自体の変更をせざるを得なくなるためできれば避けたいところだ。ファタ・モルガナも特殊なカードなのでこの場を打開できる感じはしない。ヴァーウィック兄妹はまだ一枚も出ていないし、一枚では役に立たない上に捨て札にすることができない。ウォルター・ミュラーは強力なカードだがコストが重すぎる。

 ドゥラは鼓笛隊を捨て一枚ドローする。そっとオモテを向けてみると残念ながらゴーレムだった。捨て札にすればサプライのカードを取れるが手札が多くてアップアップなのでその効果もなかなか使うことはない。

「手番終了だ。どうぞ」

 タパは持っていた手札全てを解体屋の下に入れた。これは解体屋をプレイしたとみなされる。続けて一枚ドローすると思われたが、

「サプライから乞食を取るよ」

 タパはそう言って乞食を手札に加えた。

「恐ろしいことをするね」

「ブローカーでもいいけどもう山にないしな、最短で行くならこれしかないからな」

 何らかの形で必要なカードは捨て札から回収するのだろうという読みは当たっていたがそのために乞食を取るとは。やはりタパのことを甘く見ていたのだろう。まだ猿を持っているというのに自分は慢心し勝った気でいたのだ。気を引き締めよう。

 サプライが枯れたので一枚補充する。オサ・オデギズーワのカードが出た。

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