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神の頬に触れるような気持ち  年代記第六章  作者: ヌメリウス ネギディウス


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六章 排泄するだけの猿じゃないといえるかい 31

 タパの手番である。一枚ドローし三度(みたび)引いたカードを出す。鼓笛隊だ。

「無効かな」

 ドゥラは答えた。鼓笛隊を捨て札にするとデバフがかかり、手札上限が一手番だけ使えなくなってしまう。ポーターで手札を増やしているが手札は三枚なので制限内だ。もし超えていたらレルムを使うかマルグリットを捨てるかしなければいけなかったが捨てなくて済んだので助かった。

 タパは手番を終える。

 ドゥラは鼓笛隊を取れるが、タパは拡張していないのでメリットはなさそうだ。バフをかけるカードもない。ブーストは最序盤なら一気にカードを充実させることができるので有効なのだがいいカードが来るとは限らないし、何より手札制限がいっぱいになるためにバーストの危険性と常に隣り合わせになるためリスキーすぎる。このゲームはいかに手札を圧迫させないようにするかだと思うのでなかなか使うのが難しいカードではある。最初のゆったりしたゲーム展開を加速させたいのだろうが、うまくいったためしはない。なので取らないでいいだろう。しかしこのカードを捨て場からあまり取った記憶はない。単体ではあまり役には立たないしいまいち使い方がわかっていないカードだ。

 ドゥラは普通に山札からドローする。なんとマルグリットだった。マルグリットがダブったので一枚捨てて手番を終える。

 タパの手番、一枚ドローする。

「さっきの捨てなきゃよかったな」

 小さい声で言った。このゲームをすると知らず独り言が漏れるのだ。

「円環があれば戻れるぞ」

 ドゥラは言った。

「あのカードはあまり好きじゃない」

「好き嫌いを言ってちゃ勝てないぜ」

 言いながら思考を巡らす。しかし捨てなければよかったと言う鼓笛隊を効果的に使う方法などあまり思いつかないのだけれど。こちらを惑わせるために言ったのだろうか? だがタパがそんなまどろっこしいことを言うだろうか? おそらくだがバフをかけたい一緒に出すカードを今引いたのだろう。

 タパはそのままそのカードを所持しプレイはしないようだ。スロットの入れ替えができるが手札制限解除を解くつもりはないのでポーターはスロットに入れたままにする。

 ドゥラはドロー、解体屋だ。スロットに入れられない。この場合ポーターと入れ替えて、呪いを処理できるので置いておくことも考えたがうまく入れ替えられない状況も考えられる。スロット解放まではまだかなりカードが残っている。呪いは一枚なので、処理する方法はいくらでもあるだろう。なので解体屋をそのまま捨て札にする。

 タパは一枚ドローしそのカードを出した。斥候だ。山札を見て入れ替えるか相手のカードを一枚見るか。タパは相手のカードを見るを選択する。

「左端の手札を見せてくれ」

 指定してきたカードを見せる。レルムを使うことも考えたが指定して来たカードがレルムなので防御すれば捨て札にしなければいけない。

「なるほどね」

 タパはそう言って手番を終えた。

 レルムを知られてしまったが逆にむやみに攻めてはこれないかもしれない。抑止力になることを期待する。

 ポーターを持っているのは知られてはいないのでここで先にドローしてしまうとバレてしまう。なので先にマルグリットを捨てる。二枚とも捨てたことでタパの顔色を伺ったがちらと見ただけで反応は薄い。

 続いて引いたカードは呪いだった。自分が山札に入れたものが自分に戻ってきたわけだ。

「くそっ」

 思わず悪態を吐く。

「日頃の行いが悪いからだよ」

 タパが嫌味を言った。

「俺ほど品行方正な男はいないさ」

 ドゥラは軽口を返した。そう言いながら今後の展開を考え続ける。手札のうち二枚の呪いが手札を圧迫している。ポーターはそのまま動かせないのでスロットは使えない状態だ。レルムは万が一直接攻撃を受けても一回は防ぐことができるので捨てたくはない。呪い二枚を速やかに処理したい。死神が出ればいいがそんな簡単にはいかないだろう。あと三十枚近くあるのでまだ先は長い。だがこのゲーム最後まで行くことは少なく大抵は途中で脱落するものだ。悠長に構えているわけにはいかない。次手番ではポーターを所持していることがバレるがそのままドローするしかないだろう。ドゥラは手番を終えた。

 タパの手番だ。先にプレイするようだ。ポーターを捨て札にした。効果はないカードだ。英雄のカードがスロットに入っているのでポーターは利用できなかったのだろう。しかも鼓笛隊を捨てなければよかったと言っていたがそのあと引いたのがポーターならそれもまたブラフだったということか。ポーターはバフをかける必要はないからだ。タパはカードをドローする。カードを見た瞬間えらいものを引いてしまったと犬のように鼻にしわを寄せ鼻を鳴らした。スロットのカードを手札に戻し手番を終えた。

 タパは王を引いたに違いない。恩赦でスロットのカードを手札に戻したからだ。スロットを空にしておかなければならないのは王だけだし、アオスなど他のスロットに入れられないカードならそのままになるはずだ。恩赦を行えるのは王だけだ。王なら無理やり場に出させて勝ちに持っていける。カードの場所も把握した。珍しく左側だ。

 レルムがあるので安心だが王は二回手番を連続でできるので危険なことには変わりはない。気になるのは手札に戻したカードだがマークならマルグリットがない限りは危険ではない。マルグリットは二枚とも捨て場にある。

「御愁傷様」

 こちらがそう言うとタパは顔を上げ、こちらを見た。

「こっちのことばかり考えていたら負けるぜ、おまえの悪い癖だ、自分の心配をしてろ」

 まだ余裕があるらしい。意外と冷静だ。

 ドゥラは一枚ドローする。兵だ。そのまま捨て場に捨てた。ターン終了。状況に変化はない。呪いのせいでまだこちらの分が悪いことは変わりはない。このままいいカードを引くまで待つというのはジリ貧だろう。良い方法はないだろうか。

 次の手番、タパは意外な手にでた。なんと王を捨てゲームから除外したのだ。しかもなんのためらいもなく。タパは捨てた王の代わりに一枚ドローしもう一枚通常のドローをして手番を終えた。

 しかしまさか王を捨てるとは。なかなか思い切ったことをする。

「建設王とはね。タパらしいな」

 ドゥラは言った。通常捨てることのできない王を捨てることができるのは建設王ぐらいだろう。他にも方法はあるが、そのあと山札から一枚取ったので建設王の効果でまちがいない。タパは答えないが当たりだろう。大事にしていたのはマークではなかったのだ。こちらはマーク・バインを手に入れてマルグリットを回収するか。タパもこちらの思惑などわかっているだろうから早急に建設王を捨ててくるはずだ。それに建設王の捨てることのできないカードを捨てるという効果は一度しか使えないので、他の手札とスロットの開放はずっと所持しておくリスクと比べると利益(ベネフィット)は薄い。

 ドゥラは次手番ドローする。解体屋だ。解体屋はスロットに入れなければいけないが呪いは処理できるので考えどころか。捨てることができるカードがないため解体屋を置いておくなら手札制限がいっぱいなので危険なのだが、この手番はドローだけで済ます。しかしそうなるとスロットのポーターを解体屋と入れ替える必要があるがそうすると手札開放がなくなるのでかなりうまくやらなければいけない。

「なんだか困っているみたいだな」

 タパが言った。

「まぁね、なんともならんね」

「それじゃ、そろそろ攻勢に出るとするよ」

 タパはそう言うとカードを一枚捨て札にした。アンナ・クルコフスカヤのカードだ。捨て札として使った時の効果は相手のカードを一枚強奪することができる。なんとも直接的で強引なカードだ。タパはこちらの呪いのカードを取ってくれることがあるはずもなく先ほど斥候でサーチしたレルムを取りに来た。

「レルムの効果を発動して捨て札にするよ。取られるよりマシだからね」

「オーケィ」

 アンナとレルムのカードが捨て札置き場に置かれた。タパは一枚カードを引いて手番を終える。

「あと二手番ぐらいで終わるよ」

 タパが言った。

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