表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の頬に触れるような気持ち  年代記第六章  作者: ヌメリウス ネギディウス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/81

三章 消えゆく生命の灯火 6 the dying of the light

 到着した晩に豪華な晩餐会が救済院で行われることとなった。あちこちで篝火が焚かれ、屋外で肉が焼かれ食欲をそそる匂いが漂っている。残っていた少数の村人とオースティン卿の住む塔の使用人達、そして王都から一緒にきたシェフや給仕などが担当した。この地方は良いブドウが取れるのでライフェン産のワインは格別だとみんなは言っている。

 酒を飲まないビジャンにとって宴会は退屈でしかなかった。いつ帰っていいのかわからない。いなければいけないのかどうかもわからない。いちばんの主賓である建設王は姿さえ見せていない。ビジャンはすぐに満腹になりそして手持ち無沙汰になる。

 中央のテーブルでは四人が酒を飲んで騒いでいる。

「誰が今回のリーダーをするのかラストマンスタンドで決めようぜ」

 オドゥンゼが言う。

「その手には乗るか、お前が酒に強いのはみんな知っている」

 バンダーが返した。

「俺はなんでもいいぜ。でもサマーワインなんて洒落たものを飲んでるお(バンダー)には負ける気がしないがな」

 DKが言った。「きついのを持ってきてくれ」バンダーは給仕に言った、もってきたグラスからこぼれた酒がジュッと煙を上げた。

「突っ伏して起きないお前(DK)をいつも介抱しているのは俺だぞ、今日は勘弁してくれよ」

 バンダーは言った。

「じゃああれで決めるか」

 ダルイソはそういうとカードを取り出した。

 カードといったが、丸いコースター状のタイルカードである。

「熊チームはオドゥンゼだったな」

 四枚配られたタイルの表面はチームの絵が描かれ、裏には薔薇が描かれている。一枚だけ薔薇ではなく髑髏の絵が描かれている。

「髑髏と薔薇か。俺の得意ゲームだ」

 オドゥンゼは言った。

「得意と強いは比例しないようだがな」

 ダルイソが言った。オドゥンゼが舌打ちで返す。ベアーズがオドゥンゼ、カウボーイがバンダー、ハヤブサがダルイソ、ミサゴ(シーホーク)がDKになった。ルールを知らないDKのためにダルイソがインストをする。

「ルールはこうだ。各自四枚のカードを持ち、内訳は三枚が薔薇、一枚が髑髏となっている。各自一枚を選び裏向きに自分の前に置く。さらにもう一枚上乗せ(レイズ)するか選び、全員がカードを置いた後、場に並んだカードのうち何枚めくることができるか宣言(チャレンジ)することができる。競り形式でより多くの枚数を表にできると賭け(ベット)た者が権利を落札する。落札者は宣言した枚数分を表にし、髑髏が出れば負け、全てが薔薇だった場合勝利となる。ただしまず目の前の自分のカードから表にしなくてはならず、髑髏を仕込んでいれば負けることはないが、勝ちにいくなら自分の場に髑髏を仕込むことはできない。それを承知で髑髏を仕掛けるのもありだがな。ハッタリとブラフのゲームだ。二勝すれば勝利となり、負けるとランダムにカードを一枚失う。わかったか?」

「先生! ハッタリとブラフは一緒じゃないんですか?」

「ご指摘ありがとう、オドゥンゼくん。さっさと始めるぞ」

 一戦目は様子見だろう。バンダーはそう思ったが、あえて薔薇を仕込んだ。皆一枚ずつ場に出した。バンダーは皆の顔色を伺うが全員ポーカーフェイスだ。「誰もレイズしないのか?」ダルイソがそう言い自らもう一枚場に出し、

「チャレンジ二枚」

と言った。「三枚」バンダーが吊り上げる。三枚ならおそらく安全だ。ダルイソと自分のカードはすべて薔薇だろう。このまま競り勝てば勝利だ。だが「四枚」とさらにダルイソは言った。他の二人は賭けには参加しないようだ。と、言うことは他の二人は髑髏を出しているのだろうとバンダーは予想した。競り落としたダルイソは自分の二枚とバンダーの一枚が薔薇であることを確認するとオドゥンゼの一枚をめくる。案の定髑髏だったためダルイソは負け一枚カードを失った。

「言い出した奴が一番弱いというやつだな」

 オドゥンゼが言った。うるせえ、とダルイソはいい酒をあおった。

 負けてカードを一枚失ったダルイソの表情が一瞬引きつったのをバンダーは見逃さなかった。二戦目はバンダーは髑髏を仕込んだ。自ら髑髏を仕込んだオドゥンゼが宣言し吊り上げるために枚数を増やす宣言をしたが他の誰もそのハッタリに乗らず自ら競り落としてしまい、自爆するという結果だった。三戦目は一戦目と同じくダルイソ二枚、バンダー二枚、他二人が一枚づつという布陣で四枚で宣言したバンダーが落札しダルイソのカードを表にして勝利した。そこでバンダーは自分がこのゲーム勝利するだろうと確信した。

 四戦目、バンダーは二枚、薔薇を仕込む。ダルイソも二枚、オドゥンゼとDKは一枚。またも同じだ。しかしオドゥンゼとDKも二枚、三枚と競りに乗ってきている。バンダーは勝負はここだと感じていた。

「ダルイソ、おまえはもう死に体だろ?」

 ダルイソの顔が曇る。ダルイソの手元にはもう髑髏はないとバンダーは予想していた。

「無駄口を叩くな、賭けるのか? バンダー」

「ああ、六枚だ」

 バーンアウト、全てのカードを開けるときはこう呼ばれる。競り落としたバンダーがテーブルの上のカードを表にしていく。

 バンダーの二枚、ダルイソの二枚は予想通り薔薇、オドゥンゼとDKも薔薇だった。バンダーの勝利となりリーダーはバンダーに決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ