なろう作家の強みとは
なろう作家の強みってやっぱり、読者さんとの距離が近いことだと思います。
4月発売の短編集が後書きや登場人物紹介、あらすじに著者メッセージまで諸々全部渡せたので、ようやくのんびりできている。
私は別に人気作家ではなく、続巻が出るだけの部数を売って、細々と次巻の準備をするだけの作家だ。
無事に完結できたら、それでいい。
それでもなろうでシリーズ累計180万字書いて本を七冊出し、そのたびに感想をもらって読者さんたちとやり取りしていると、お会いしたこともない読者さんの顔がハッキリ見えるようになってきた。
朝食の支度を終えたテーブルで、ゆっくり新聞の朝刊を読むみたいに、なろうの更新を楽しむ人。
キャラクターたちがお花見に出かけたら、自分もお花見に行っちゃった人。
不意の夜中の更新で飛び起きて、思わず絵を描いちゃった人。
昼休みに職場のみんなと、感想で盛りあがりながら読む人。
寝る前に布団の中で読むのを楽しみにしている人。
ひとりひとりの読者さんはまったく違っていて、好きなキャラクターもバラバラで。
でもみんな作品を楽しんでくれている。
それが分るようになって、書く姿勢も変わってきた。
顔の見えない万人に受けようとすると苦しくなる。
それだったら顔の見える誰かのために書こう。
目の前にいるたったひとりが、満足する話が書ければそれでいい。
短編集もファンレターへの返事のつもりで用意した。
「粉雪先生、ファンレターのお返事はいりません。返事を書くために時間を使うぐらいなら、読者というものは続きが、新しいお話が読みたいんです」
読者さんにそう言われたから。
編集者よりも出版社よりも読者の近くにいる、それがなろう作家の強み。
好きで読んでくれる読者さんの方が、作家よりも作品を冷静に見ていて、作品に詳しい。
いい所もダメな所も、ハッキリ教えてくれる。
キャラクターたちの魅力も、読者さんが自分の言葉で教えてくれたし、展開に迷っていると、思わぬところからヒントが貰えたりする。
本作りは結局、読者さんの「これが読みたかった」という想いを、形にしていく作業だ。
作家よりも読者さんの方が、作品を大切にしている。
だからそれに応えていく。
何度も迷い、手探りで試行錯誤して。
いろいろな場面を振り返ると、やっぱり読者さんが正しい。
つくづくそう思う。
読者さんの顔が見えた方が、文章も書きやすいんです。
デビュー前よりも本を出してからの方が、ハッキリ見えるようになりました。