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牛の首  作者: 赤良狐 詠
6/13

 冷蔵庫のあるもので二人作ったのはオムライスだった。少し手間をかけた料理にした方が料理の勉強として暦の為に良いと思ったのと、オムライスは暦にとって姉が作る一番好きな食べ物だからだ。


 食べ物でご機嫌を取る邪推な考えは微塵もなかった。冷蔵庫で十分に作れるだけの材料はオムライスだったからだ。きっと、母が今日のために用意してくれたものだろう、云ってくれれば良かったのに。


 暦はオムライスにがっついて、リスみたいに頬を膨らませてもスプーンが止まる気配はなかった。美味しく食べてくれる妹の姿を見るのが、いつもいつも幸せな気持ちにさせてくれる。


 食事中にスマホがテーブルの上で振動した。両親のどちらかだろうか、そう思って手に取って通知を見ると『あっちゃん メッセージ』と表示されていた。


『オカルト同好会で話し合った結論を語りたいので至急連絡求む!』


 夕食を終えて食器を二人で洗って、暦を先にお風呂に入らせた。敦美を待たせるのも悪いし、まぁ一応、幽霊とかを信じてはいないが、友人の付き合いの一環として時間をあげようと思ったのだ。


『お待たせ(汗) 夕飯食べてた 何か解ったの?』


 返信はすぐ既読になって秒速で返信が来た。


『通話おk?』


『おk (*^^)v』


 既読が付いたと同時に通話も秒速だった。


「もしもし? みっちゃん? こんばんはぁ」


「あっちゃん、こんばんは、ごめんねぇ遅くなって」


「ううん、全然大丈夫、それよりまず、話長くなるけど時間大丈夫?」


「大丈夫だよ、うちの両親今日帰り遅いし、あとは妹が上がったら、あたしもお風呂入るだけ」


「妹さんは今お風呂なんだね、まぁ、聞かない方が良いかもしれないね」


「何っどうしたの? いきなりのシリアス?」


「いや、ちょっとね、


 あくまでも素人知識な高校生の私達、オカルト同好会の出した結論というか推論なの、


 それは解って欲しいの、


 恐がらせる為に云うわけじゃないってこと、


 最初に云っておくね」


「いや、もう、この時点で嫌な予感しかしないんだけど……」


「推論は二つ出たの、


 じゃあ、まずは妹さんの寝言について、


 その第一の推論、


 もしかして、だからね?


 あくまでも、推論、


 あのね、妹さんは受信したのかもしれない」


 いきなり突拍子もないことを云い出した。初めてからそのつもりで聞こうとは思っていたが、それにしても斜め上の想像を行くものだと感心してしまった。まあ乗り掛かった舟だ、最後まで話を聞こう。


「受信? ん? ごめん、受信って何? どういうこと?」


「あのね、予知夢とかそういった類のものを、


 ラジオみたいに受信したんだと思うの、


 これから起きることを妹さんは見たのかもしれないってこと、


 それはみっちゃんの身に起こることだと思うの」


「あたしの身に、これから起こること?」


「そう、色々と議論を重ねたんだけどね、


 夢の中で悪さする妖怪とかの線もあると思ったんだけど


 妹さんはみっちゃんの名前を云っていたし、


 行くよとか来いよとか、


 あと取るとかの言葉の後には、否定の言葉を云ってたんだよね?


 取っちゃダメとか、


 行くなよとか


 出さないよとか」


「確か、そうだと思ったけど、あんまりちゃんと覚えてないよ」


「まぁ、そうだよね、


 きっと妹ちゃんはね、これから起こることを見たんだと思うの、


 何かが乗り移ったのか、


 ラジオみたいに未来からのメッセージを受信したのか、


 そのどちらかで結論を出すとしたら、


 未来からのメッセージをラジオみたいに受信した、


 (くだん)っていう妖怪みたいに」


 呆気に取られてしまう結論で恐れ入る。


「う……うん、それで? 何があたしの身に起こるの? く、件……って何?」


「まぁ件は置いといて、みっちゃんに起こることは全然解んない、


 もっとちゃんと妹ちゃんの寝言を聞ければ良いんだけど、


 でもね、最初に云ったでしょ?


 結論というか、推論だって


 そして、これは第一の推論、


 あともう一つあるの、


 ちょっと……


 こっちはあまり云いたくないんだけど……」


「もうっあっちゃんったらっ、勿体ぶらずに早く云ってよ」


 スマホの向こうで敦美が深呼吸したのが聞こえた。何を緊張しているのだろうか。


「落ち着いて聞いてね」


「いやいや、落ち着いてないのはあっちゃんでしょ? もうっはは――」


 その言葉に傷ついたのか、敦美が深い溜息を漏らして、

 暫しの沈黙、呼吸音しか聞こえてこない、厭な雰囲気だった。


「えっとね、


 ラジオみたいに受信したって第一の推論から


 私達はさらに発展させた第二の結論を出したの、


 まずはみっちゃんの苗字、


 上河辺に注目したの、


 上河辺ってひらがなで書くと


 かみこうべ


 かみと


 こうべ


 そして文字の中に隠れてるのが、


 みこって言葉、


 それで昔はみっちゃんのお家って


 神様に奉仕する巫女さんとかやってて(こうべ)を垂れていたから、


 かみこうべなのかなって思ってさ、


 あと妹ちゃんの寝言で


 ぎゅうしって云ってたんでしょ?


 それって、


 牛首(ぎゅうしゅ)


 つまり、牛の首って云ってたんじゃないかってオカ同の友達が思ったのね、


 だから


 これはね……もしかして……


 牛の首じゃないかって……推論が出たの……」

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[一言] いよいよ核心に(゜Д゜;)
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