御前会議
UNKNOWNのクランハウス 会議室
「全くさぁ……折角コストかかる緊急招集かけたのに集まったのがこれだけっておかしいでしょ。」
そう愚痴るクラウン、彼はたった今会議室に入ってきたところである、そこで目にしたあまりの集まりの悪さに愚痴を溢したのだ。
緊急招集とは、何かあった時に幹部を集めるための合図であり、より多くの幹部が集合して然るべきなのだが、集まっている幹部は実に少ない。
たった今入ってきたクラウンを含め3人だけ
サブリーダー兼参謀/クラウン/通称《狂人》
サブリーダー兼広報/シロちゃん
戦闘部隊隊長/ソードマスター/通称《斬鬼》
そうリーダーすら来ていないのである。
「クラウンの人望の無さが絶望的だから仕方ないんじゃないかな。」
とにこやかに毒を吐くのはシロちゃん。
白いくせ毛が特徴、メインウェポンはナイフ。
ソードマスターは無言のまま戦闘ログを眺めている。
金髪で低めのポニーテール、メインウェポンはロングソード。
ここでUNKNOWNというクランの構成員に関して説明しておく
幹部は10人
クランリーダー
サブリーダー兼参謀
サブリーダー兼広報
統括部隊隊長
攻撃部隊隊長
防衛部隊隊長
諜報部隊隊長
探索部隊隊長
開発部隊隊長
生産部隊隊長
基本的に統括部隊がその他部隊の上に立つ形になっているがあくまでまとめ役に任命されているだけで、例外はあるが統括部隊が上というわけではない、というか部隊長とか幹部とか言っているが名ばかりで、そもそもメンバーがこの十人しかいないのである。メンバーは少ないが協力者はかなりいる、と言うのもメンバーの内何人かは名の知れたプレイヤーなのだ、UNKNOWNのメンバーである事を知っている者は少ないが。
そして自分を除く九人の幹部でクラウンの招集に応じたのはたった二人、クラウンが嘆くのも無理は無いが、人望が無いというのは自業自得なので仕方がない。
そんなクラウンの人望の無さを示すかのように、シロちゃんの多機能デバイスに連絡が来た。
「リーダーはおやつ食べてるから先始めてて、だって。」
それを聞いたクラウンはさらに嘆く。
「何で招集した僕に連絡一つ寄越さないの?おかしくない?というかおやつ食べるってあの骸骨アバターでどうやって食うの?意味分かんない。」
と最終的には関係の無い事まで口走り始めた、いつもの口調も若干崩れ始めた。
そこにソードマスターが突っ込んだ。
「会議をするならさっさと始めろ、でなきゃ狩りの続きをするぞ俺は。」
「いや始めろって三人しかいないんだよ?どうしろって?」
「あ、ちょっと待ってはちみつからも連絡来たよ、チャットでなら参加出来るって。」
「だからなんで招集かけた僕に連絡寄越さないの?泣くよ?」
「常に胡散臭いお前が全面的に悪いだろ。ろくな事しないし、シロを見習えよ、今だって無条件で信頼出来る笑みを浮かべているぞ。」
「もう良いよ四人だけで始めよう。」
と諦め「折角面白い計画を持ってきたのに。」とぶつくさ言いながらモニターにマップを表示するクラウン。
それを見たシロちゃんは気付く。
「この形見覚えが………………もしかして黄金都市?」
「シロちゃん大正解、この前リーダーが黄金遺跡で大暴れしたわけだけど、それで黄金都市をちょっと調べてみて思い付いた計画なんだ。」
そういうとクラウンはモニターに別のマップを表示する。
「これは遺跡がまだ遺跡じゃなかった頃の予想図、中央の城から四方に延びる道があるわけだけど、それが遺跡の外側まで続いてるって事は遺跡も都市の一部だったと考えるのが自然だろう?」
「どっかの考察サイトで見たような話だな。」
「これ自体は前から予想されてた事だけど問題は防衛機能の方、街が廃墟になった今でも作動するって事は二つの可能性が考えられる。まず一つは遺跡のどこかに制御室のような物があって、それがまだ生きているという可能性。もう一つはまだ残っている都市にそういう施設がある可能性。」
ここまで話すとシロちゃんは何となく察し始めた。
「話が見えてきたね、都市に壁があってその外側にも街があったなら外側は防衛用の街だったのかもしれない、発掘されたアイテムを見てもその可能性は高いと思う。」
クラウンはニヤっと笑いながら話を繋げる。
「そう、そこなんだよ、この前領地を取ってから黄金都市を見て思ったんだよね、黄金都市の外側にある遺跡がもしも防衛用の街だったなら?まるで何者かに支配された領地のようだと思わないかい?」
「まさか黄金都市が領地だとでも言いたいのか?」
「そのまさかだよ、あり得ない話じゃない、なんてったってこれはCWOだ、何があったって不思議じゃないだろ?僕の計画ってのは黄金都市を取ってしまおう、ってそんな話さ。」
まだ支配済みの領地であるという確証は得られていないけどね、とクラウンは付け加える。
「なるほど、これは確かに面白そうだ。」
シロちゃんはワクワクしたような表情を浮かべている。
一方懐疑的な態度のソードマスター
「確証も無い計画を持ってくるとはどういう風の吹き回しだ?」
それに対しクラウンは珍しく真面目な態度で返事をする。
「いやねこの前リーダーが防衛機能と戦って分かったんだけど、黄金都市には恐ろしく高い戦力がある、だから可能な限りの戦力を集めて挑むべきだと判断しただけさ。」
そう遺跡にはUNKNOWNの魔法を耐えたドラゴンがいる、配備されているのがあれ一体とは考えづらいだろう。そしてゴーレム、あれはまともに戦っていないのでそもそも未知数なのだ、しかも材料の質と量次第ではとんでもない脅威になる可能性がある、故にクラウンは独断で事を進めず、珍しく慎重になっている
とそんな風に話ている内に会議室の扉が開き入ってきたのはクジョー。
統括部隊隊長通称《隻眼の阿修羅》
黒髪長髪、メインウェポンは日本刀、眼帯で右目を隠している
遅れてきたくせに
「おっ、間に合ったか、わりーな酒盛りの最中だったもんで。」
などと宣っている。
「こいつ…………殴りたい。」
とクラウンが拳を握り締めているのも仕方無い事かも知れないが、そもそも普段から適当な事ばかりしているクラウンに文句を言う資格は無いだろう。
それをスルーしクジョーは思った事を口にする。
「大体はシロからのメッセージで把握してるが聞きたい事がある、まず黄金都市を取ってどうするつもりだ?有用ではあるがリスクを犯してまで取りに行く程じゃないだろう、お前愉快犯気取ってるがいつも不利益になる事はしないだろ?」
「嫌だなぁ……統括様は全部お見通しってワケですか、まぁ実際相当美味しい話なのは間違いないけどね、まず黄金都市の壊しただけで話題になる異常な耐久値の黄金だけどあれは恐らく領地の特性だと思われる、常闇の領地は絶対に朝や昼にならないって特性があったよね、それと同じモノ、それが獲得出来るかもしれないという事、領地を取れば防衛機能は好きなように出来るはずだから探索し放題だし、防衛機能そのものを丸々僕らの物に出来る、と、こんなところかな。」
それを聞いて少し考えるクジョー。若干パワーバランスがおかしいような気もするが、メンバーのまとめ役を担当しているので、サブリーダーと同格に扱われる場合もある、何故かと言えばクラウンがあまりにも適当なため、本人とクジョーを除く幹部八人による全会一致で場合により統括がサブリーダーを代行出来るようになっているのだ、これが例外である。
1分程考え、クジョーは多機能デバイスのメッセージ機能で全てのメンバーに指令を出した。
『クラン全体でエリア攻略を行う、ターゲットは黄金都市』
と全てのメンバーにメッセージが送られた。
こうしてUNKNOWNは動き出した。
今更ながらキャラの情報をろくに書いていない事に気付いたのでちょっと入れてみた