追跡装置
不死鳥戦の翌日
特に目的もなくログインしたシロちゃん、目的を探しクランハウスの中をフラフラと歩き回っている内に中庭で作業中のJOKERを発見する。
JOKERはキーボードとモニターを傍らに置き、何かを組み立てている。
「何してんのJOKER?珍しいじゃんこんなとこで。」
「不死鳥追跡の目処が立った、これから実験を始めるところだ。」
シロちゃんはJOKERの言葉に耳を疑った、UNKNOWNたちが不死鳥と戦ったのは昨日のことである、追跡の目処が立つのが早すぎないか、と。
「いくらなんでも早すぎない?不死鳥と戦ったのって昨日だったよね?」
「ああ、善は急げと言うだろう?」
事も無げに言うJOKERは淡々と作業を進める、一方シロちゃんはJOKERだしそういうこともあるか、とすぐさま疑問を放棄する。
「う~ん……そういう問題なのかなぁ?まあ良っか、で?目処が立ったって具体的にどうすんのさ?」
「昨日不死鳥が飛び去ったあと、すぐに洞窟内を調査したろう?」
それは不死鳥が飛び去ったすぐあとのことである。
洞窟から脱出し不死鳥を追いかけようとするUNKNOWNを制止したJOKERは、崩落でめちゃめちゃになった洞窟の調査を行ったのだ。
「その結果がこれだ。」
JOKERは一度作業する手を止め、懐から一枚のクシャクシャな紙を取り出しシロちゃんの方へ放り投げた。
シロちゃんは紙を広げてみるも何がなんだかサッパリである。
「こんなん説明してくれないと分かんないよ。」
「まず一番大きなグラフを見ろ、左から二番目の数値が闘気だ。」
作業を再開しながらも、JOKERはシロちゃんにグラフの見方を教える。
「へぇ……魔物にも闘気ってあるんだね。」
「ああ、闘気を持つ魔物は結構いる、だがほとんどの魔物は使わない。しかしヤツは違う。」
「え?不死鳥って闘気使うの?」
シロちゃんは目を丸くして驚く、それもそのはずだ、魔物が闘気を使うなどという話は噂程度にも聞いたことがない。
「かなり分かりづらかったが使っていたようだ、その証拠に不死鳥の攻撃の一部がクジョーの闘気をすり抜けた、これは闘気を闘気で押さえた結果だ、恐らく間違いないだろう。」
「じゃあその闘気の痕跡を追いかけるってわけ?」
「正確には不死鳥の体内で混ざった闘気と魔力の痕跡を利用する。リーダーの証言が正しいなら不死鳥は闘気と魔力を体内で混ぜ合わせてそれを噴出させて飛行しているらしい。闘気も魔力も魔物によって微妙な違いがあるものだ、そしてその混合物質ともなれば他に二つとない手がかりとなるだろう…………よし、こんなものだろう、少し手伝ってくれ。」
頼まれたシロちゃんはJOKERの指示に従い、大きなアンテナを引っ張り起こし角度を調節していく。
「どう?こんな感じ?」
「うむ、まずは感度を試そう。」
JOKERがキーボードで何やら入力すると、アンテナに繋がれたモニターに地図が写し出される。
「ここにリーダーの魔力のサンプルがある、こいつは魔力も探知出来るから試してみるとしよう。」
「闘気じゃなくても使えるの?」
「ああ、精度は大分落ちるが探知出来るはずだ………………出たぞ。」
モニターに写る地図の一部が赤くなっている、それもいくつかの部分がかなり広範囲に。
「………失敗じゃない?」
シロちゃんはモニターを見て思わず呟く、複数の場所に反応があることから特定できていないのは一目瞭然である。
一方JOKERはシロちゃんに渡した物とは別の資料とモニターを交互に見比べ頷いている。
「いや………これは………なるほど………」
「ねぇ、一人で納得してないで教えてくんない?」
JOKERはシロちゃんに資料を押し付け、地図を拡大したり座標を変えたりしながらシロちゃんの疑問に答えた。
「見ろ、ここ最近リーダーが行った場所のリストだ、赤い反応の場所は大体合致している。」
「……つまりどういうこと?」
「ここに写し出されているのはリーダーが放った魔法の痕跡だ、リーダーの魔法はどれも強烈な魔法ばかりだからな、魔力の残滓が残りやすいんだろう。」
一度説明を止めたJOKERだったが、思い出すように話を続ける。
「ああ、それとリーダー本体の追跡ももちろん可能だ、何しろ二つの魔法を同時に使って飛行しているからな、そこら中に魔力をぶちまけながら飛んでいるわけだ、攻撃魔法と違ってそこまで残滓は残らんが、リアルタイムで観測するならむしろ好都合だ、ここを見ろ。」
JOKERが指差したのは灼熱の領地の周辺だった、そこには赤い一筋の線が写っている。
「リアルタイムで捕捉出来るとは……これはすごいね。」
「不死鳥ほどの大きさなら飛行に使う魔力や闘気の量も桁違いに多いはずだ。リーダーと同じように追跡できるはずだ、いやむしろ不死鳥の方が追跡しやすいかもしれん。が、ただし設置したセンサーの感知範囲しか追跡できない。今のところセンサーはリーダーが風魔法と重力魔法の合わせ技で強引にばら蒔いた物のみだからな、現状追跡は厳しいだろう。」
「なるほどね………」
詳しく説明を始めようとしたJOKERだったが、それは乱入者によって阻まれる。
「お前らちょっと会議室に来てくれ、何やら不味い事になってるらしい。」
乱入してきたのはクジョーだった。
クジョーは中庭の入り口付近で二人を急かすように手招きするとすぐにその場を後にした。
「ふむ……とりあえずここまでにしておこう。」
「一体なんなんだろうね?」
二人は中庭を片付け、揃って会議室に向かうと会議室には他のメンバーが全員揃っていた。
全員揃ったことを確認すると、クラウンが話し始めた。
「全員揃ったね?んじゃ皆の嫌いな前置きは無しで早速本題に入ろうか、引っ越ししない?」
「「「引っ越し?」」」




