支配領域の調査
常闇の領地 常闇の城 制御室
常闇の領地の中心部には城がある、記録媒体が隠されていた城だ。
常闇の領地にあるから常闇の城、となんとも安直な理由で名付けられた城である。その一画に制御室が作られていた、なんのための制御室かと言えば記録媒体や支配領域の法を定めるためのもの、そこにUNKNOWNとクラウンはいた。
「ぶっちゃけ利益とかどうでも良いけど盗ったからには活用しないとね。」
等と奪い合っていたクランの者が聞けばぶちギレそうな発言をしているのはクラウン、一方支配者となったUNKNOWNは制御室を物色中、クラウンの話はスルーしている。
UNKNOWNから一部権限を借りたクラウンが制御盤に触れると、支配領域内に置ける法律やフィールドのマップ等、様々な項目が表示される。クラウンは高速でスクロールし何かを探し諦めた。
「うーん常に夜ってのは変えられないのか……不便だね。」
CWOでは時間の経過によって明け方、早朝、朝、昼、夕方、夜、真夜中、夜明け、と環境が変化する。
しかし二人が奪った常闇の領地ではそうはいかない、その名の通り常に闇の中にあり、夜、真夜中、夜明け、とこの3つが繰り返される。
クラウンは制御盤を触りながら
「メリットとデメリットを整理しておくか。」
と呟きメモを取り始めた。
メリット
鉱石や石関係の資源が豊富
モンスターの素材と経験値が美味しい
ここにしかいないモンスター存在する
複数の都市との距離が良い感じで往来がしやすい
強いモンスターがゴロゴロいるが、支配者となってしまえばそれが領地を守る防壁となる
未解放領地の密林の領地が領地の隣にある
デメリット
常に夜という環境で街頭なんてあるわけないので移動が大変
素材や経験値美味しいけど強力なモンスターが多数存在する
「こんなところか、デメリットに対してメリットがデカイのは良いね、何より僕たちのレベルならデメリットも大したデメリットにはならない………ところでフィールドの調査とかどうするの?」
訪ねられたUNKNOWNはボソッと
「はちみつにやらせる………………」
とだけ言い残して制御室を出て飛び去った。
残されたクラウンはUNKNOWNにスルーされなかったの何ヶ月ぶりだろうかと地味に感動していた。このクラウンという男は愉快犯で自由だが、UNKNOWNもまた自由、どちらも好き放題やるからお互い遠慮しないで済む関係が出来ているため、二人は好き放題やるためのクランを作ったのだ。
そんなクランなのでクラン内で抗争(という名の喧嘩)が起きる事も結構ある、参加していないメンバーやする気の無いメンバーの間で賭けが行われる程度にはよくある事である。
UNKNOWNがはちみつを連れてくるまでの間にフィールドのマップをアイテムにしてしまおうとクラウンは作業を開始した。
はちみつというのはUNKNOWNのメンバーで探索が得意なプレイヤー、正式なユーザーネームは[はちみつ食べたい]彼女を知るプレイヤーはこれを略してはちみつと呼ぶ。
UNKNOWNというクランの中で上位三名を除くメンバーと同程度に戦える凄いプレイヤーである、同程度の何が凄いのか、はちみつは戦闘職ではないのだ、にも関わらず戦闘職の多いUNKNOWNで他のプレイヤーと張り合える辺り実力の高さが窺える。
因みに一般的には《探索屋》として知られており報酬を貰い未踏破領域等の調査を請け負っている、彼女がUNKNOWNの仲間である事は知られていない。
そしてマップを作る事1時間、クラウンは既に感付いていた。
(リーダーどっかでサボってんな。)
ログインしてる事を確認出来ているはちみつを連れて戻ってくるのに1時間もかかるワケが無いので寄り道して遊んでいるのか、はたまたそのまま忘れ去られているのかは分からないがこれではフィールド調査が始まらない。
しかしクラウンは慌てるワケでもなくコーヒーを淹れ、そればかりかおやつまで用意し始めた、クラウンにとってUNKNOWNの突拍子も無い行動はいつもの事なのでのんびり待つのが一番だと分かっているので呑気にお茶を始めた。
20分後
クラウンがおやつを片手に覗いたCWO関連のニュースサイトでUNKNOWNの所在を確認する事になった、記事の見出しはこうだった。
【UNKNOWN再び現る、あの破壊王を以てして破壊できなかった特殊オブジェクトを破壊】
「やっぱりサボってた、調査はまた今度かな。」
クラウンはスマホのような形の多機能デバイスを取り出すとUNKNOWNに一度クランハウスに戻るとメッセージを送る。
おやつセットを片付けて制御盤を操作する、クランのメンバー以外は立ち入れないよう設定して彼は城を後にした。