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ソレはそこにいた

作者: 葉月 涼

本当に実話です。

 ガチャ


 キィー・・・バタン・・・・・ガチャ


「ただいま」


 ピーポー、ピーポー、ピーポー・・・・・


 自宅に帰って直ぐに救急車のサイレンが聞こえると思いだす。




 七年前のあの夜の出来事を―――









 これは私が実際に体験した、心霊現象とも取れる不可思議な出来事だ。


 私は通勤で何時も同じ道を通っている。駅周辺の繁華街や住宅地と住宅地の間にある畑と雑木林に挟まれた坂道での出来事だ。


 時刻は21:30位だったと記憶している。そこから自宅までに掛かる時間から逆算しての凡その時間だが。


 その道は緩い下りと登りの組み合わさった道で、私が下りきった時にふと頭を上げ、登り切った先に有る住宅地に設置された街灯に目をやった時だった。


 突然視界が揺れ、眩暈かと目頭を押さえて立ち止まり、軽く頭を振って歩き始めた時・・・ソレはそこに居た。


 街灯に照らされたその姿は、身長170cmの私よりも頭一つ分も高く、上下真っ黒な服装に靴も黒。袖から延びる手も、頭に被ったフードの中の顔さえも真っ黒で、闇を切り取って張り付けたような不自然な黒さだった。


 私がソレの姿を見た瞬間、全身の毛穴が開き汗が吹き出して・・・全ての音が世界から消えた―――


 自身の足音も、衣擦れの音も、何も聞こえなくなりパニックに陥りながらも私は足を止める事が出来なかった。




 止まるな、目を合わせるな―――




 音の無い世界で本能がそう訴えかけていたからだ。


 私はやや俯きながら坂を上り、ソレの横を通り過ぎ・・・振り返る事なく自宅へと向かった。


 自宅との中間辺りの角を曲がった時。周囲に音が戻って来た。自分の足音や衣擦れだけでなく、車の走る音や近隣の住宅からTVや会話の声が聞こえてきた。


 ホッと安堵の息を付いたが、決して振り返る事なく自宅に入り携帯で時刻を確認した。21:35だった。


 ピーポー、ピーポー、ピーポー・・・・・


 そして救急車のサイレンが、あの坂道の方角から聞こえてきて背筋が凍った。


 最初に街灯に目をやった時には確かに誰も居なかった。


 目を押さえていた時間など僅か一、二秒だ。


 アレが何なのかは解らない・・・だが、今でも思い出す度にこう思う。


 あの時足を止めていたら、目を合わせていたら、もし振り返っていたら―――


 私がこうしてここに居る事は無かったのかもしれない、と・・・・・

アレって本当に何だったんでしょうね?

今でも同じ道を使っていますが、あの日以来一度も会っていません。


もし、また会った時・・・私は同じ行動を取れるのでしょうか・・・・・


あの日感じた恐怖は今でも忘れていませんが。

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