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世が世ならあたしだって傾国のかぐや姫になれるんです  作者: 藍碧
第一章 かぐや姫降臨
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初めての夕食はご馳走だった(らしい)

夕餉(ゆうげ)をお持ち致しました」


あの後、侍女頭様ーー最初に西の館に案内してくれた侍女は侍女頭で、まだ三十三歳だそうだ。もっと年上に見えたのに、あたしのお母さんより若いのにびっくりだーーにだいぶ叱られたらしいすずちゃんは、しずしずとやって来て、小さな声でそっと食事を乗せたお盆を差し出した。


薄暗い中でどんな料理か分からないのに食べるのは躊躇(ためら)われたのだけど、お腹が空いていたので最初に木のお椀を手に取って、少し温かい汁を飲んでみた。


それはただの薄い塩味のスープで、雑草のような葉っぱと、細かく切った鳥肉のような肉がほんの少し入っている。


あたしも小さな声で「これは何が入っているの?」とすずちゃんに聞くと、


「山鳥の(あつもの)でございます。お身体が温まります」と誇らしげに言う所を見ると、どうやらご馳走になるらしい。


あとはやはり椀に山のように盛ったご飯らしき物。

冷えていて、何だか糠臭(ぬかくさ)いような、ボソボソのご飯だ。

それに、やけにしょっぱい古漬けのような物。


あぁあ、何でも良いからあたしがいつも普通に食べていた物が食べたい!

もはやインスタントラーメンがすごく豪華なご馳走に思える。


いくらお腹が空いていても、この味ではほとんど食べられない。

すずちゃんが側でじっと見つめているのに、自分だけが食べるのも落ち着かない。


「お口にあいませぬか?」と言われて「ごめんね、今はあまり食べたくない」と言って下げてもらった。


すずちゃんは九歳なのに本当に気がついてしっかりしているし、日焼けした健康そうな肌に目もぱっちりでとても可愛らしい。

あたしのことをうっとりとした目で見ているので、それだけでもきっと良い()に違いないと思える。


ただそれにしても、部屋は暗いし床は固いし、巫女姿の上に貸してもらった着物を羽織っているだけなので、時間が経って来るとどんどん居心地が悪くなって来る。


早く家に帰りたい、普通の夕食を食べて、温かいお風呂に入って、いつものベッドで眠りたい、それが当たり前だと思っていたけど、何て贅沢な生活をしていたんだろう......。


更に、あぁ、温水洗浄トイレは神だったと思い知る。

すずちゃんが持って来た蓋の付いた四角い箱が(おまる)で、部屋の隅ですずちゃんに着物を持ってもらいながらトイレをすると知って、恥ずかしさに死んじゃいそうだったけど『この時代はこれが普通!』って何回も自分に言い聞かせて何とか乗り切った。




ひどい味と思った夕食はご馳走だったようです。

しかも山盛りご飯も普通の人はなかなか食べられないご馳走でした。

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