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妖おとも 私達はできます  作者: 鈴瀬 りな
1/1

1 目が合う

―目が合う― 


心がずっともやもやする。


「明日しーちゃんのお家で遊ぶからねっっ。」

 いちご飴を噛んでしまった。

「う〜〜。かんじゃった…。ゴリゴリ。」

 柔らかい笑みで私を見ながら

「しーちゃん好きね〜。いちご飴は1日1つよ。そうそう。行く時スーパー寄るからその時にお菓子買おうね。」

 妹がママにぎゅっとしがみついている。

「私も行く〜。ついてくぅっ。」

 ママが閃いたように

「じゃあパパも誘ってみんなでお買い物しようか。」

「うんっっ。いちご飴買ってね。えへへへへ。」


 だけど私がまた皆とこんな風に会話することは出来なくなった。



 私が小学3年の時、お母さんお父さん妹は交通事故にあい亡くなった。私がしーちゃんの家で遊んでた時だ。1人になった私を皆は次々に"可哀想"だと言う。私にとってその言葉がすごくすごく嫌だった。

 だって私を見ながらこそこそ陰で


「なんで笑わないのかな」

「気持ち悪い」


「だってしょうがないよ。家族がいないんだも〜ん」


 って好き勝手に言うからね。笑わえなくなったのはあんたのせいよ。心を傷つけたあんた達のせいよ。


 誰とも仲良くする。

 友達と遊ぶ。

 こんな事はもう出来ないらしい。


 私以外が亡くなってからいい事はひとつも無い。でも私はこの家族がすきだった。だから涙を一生分ながした。


 今後涙がでるだろうか。


 寂しい。悲しい。

 私の心はいつもそう嘆いている。


 親戚の人から笑わない無表情の子なんていらない。そう言われて心がさらに痛くなる。だから高校生になった頃に、親戚がお金を出して私は一人暮らしすることにした。いい案でしょ。えへへへ。気が少し楽になったよ。


 大事な物をまとめていたら、ママがいつもしてたネックレスが出てきた。急にママの優しさに触れたような気がした。四葉のクローバーの形で真ん中はピンク色だ。ママらしい色だ。懐かしく悲しい。これからは私がこのネックレスをすることにしよう。

 でもなんでネックレスに今まで気づかなかったのだろう。私なら絶対見落とさないのに。不思議だ。


 ちょいボロのアパートだけどなんかしっくりくる雰囲気で好きだからここにした。玄関はちょうどいい大きさ。家族写真といちご飴を一緒に置いた。片付けが終わって部屋を見わたした瞬間、私は呼吸が止まった。


 窓から入ってくる暖かい風に黄色の艶がある髪がゆらされながら、私を待っていたかのようにこちらを見てる。


 そしてニヤリと。


「そなた気に入った。」

 えっ。なっに…が…

 強い風が吹いて目を開けると、目の前にまん丸い目を輝かせて

「あんた、私が見えてるね。」

 …はい。見えてます。見えてますとも。てかその耳って…狸の耳よね…。

「私はあんたの願いに引き付けられてきたのよ。」

 えっ私の願い…?何か願った?何が起きてるのっっ。


「あの、はいっ。願いとは…。それにあなただれですか。なんか狸の耳はえてますけど。」

「…………」

「…………」

 えっ何この無言。

「ぷっっ。あひゃあひゃひゃぁあはっ、ひゃひゃひゃ。」

 ひえっっっ。めっちゃ笑ってる…。えっ笑ってる…よね…?

「ひいっっ、ふぅ。あひゃひゃ手ぇ挙げるとははぁっひゃひゃひゃひゃ。」

 手、挙げてたみたい…。えっなんか恥ずかしいんだけど。スっ。

「下ろしても見てしまったからね。はぁ。あぁおかしい。ぷぷっ。」


「ふぅまぁ、自己紹介しよう。私は雪笑と言う。そして願いに引き付けられる性質を持っている。さぁ、そなたも語れ。」

 胸元まである髪をゆらしながら嬉嬉としてる。


 私…か。


「私は月瀬 鈴です。今15歳の高校1年生です。お菓子が好きです。性質とはなんですか。」

「ほぉ。お菓子か。ここのチーズケーキは美味しくて好きだな。」

 !!分かってくれる人がいるとはっ。


「ですよねっ。濃厚なのにさっぱりしてて飽きないんですよ。」

「また食べたい。買ってこい。」

 えっ。なんで。…でも食べたくなってきた。まぁ近くにあったよな。


「じゃあここで待っててください。」

「おっ!!じゃあ私はレアチーズケーキで。よろしく!」

 私の机ばしばし叩かないでぇ。うぅぅ。


「じゃあ行ってきます。部屋の物いじらないでくださいね。」

「おけおけ。早く行ってこい。」


 今日は暖かいな。風が心地よい。あっ桜だ。うふふ。


「やぁーー。来ないでぇ。きゃははは。」

 …鬼ごっこだ。いいなぁ楽しそう。

 よく公園で、妹と友達?とやったな。いや。友達と呼ぶべきじゃないね。

 あれ。あの男の人浴衣だ。狸の人と似てるけど、あの人、なんてゆーか目力強っ。それに狸の人は浴衣とフリルで独特だったけど、わっ。目合っちゃた。会釈しとこう。失礼だったかな。


「ありがとうございました。」

 ふぅ。やっと買えた。人結構いたな。

 あっそうだ。あの人。あの人なんなの。狸だよね。重要なところ聞き忘れてた。はぁ。それに性質?の事も答えてもらってないな。

 チーズケーキで頭いっぱいになっちゃったじゃん。チーズケーキ強いわね。でもいちご飴が1番っ。

 また男の人いる。こっち見てて怖いんですけどっ。えぇぇぇ。

 コロコロ、コロコロ。

 あら。モテそうなお顔だこと。

『バチッ』


「ごめん」

 えっ。まって。目が開かない。力が抜けていく。

 意識が遠くなっ…て…。後ろへ倒れていくのだけは分かった。




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