王太子は悪役令嬢を幸せにしたい
今回で王太子目線も終わり‼︎
楽しんで頂けたかは分かりませんが……ご都合主義の優しい世界、書きたいものは書けたので、満足してます(笑)
ヒロイン目線はほんの少し時間を置きます(あ、飽きちゃったとかじゃないよ?真面目に毎日更新したから、疲れちゃっただけだよ?)。
まぁ、暫くお待ちくださいませ‼︎
ではでは、今後もよろしくねっ☆
なんだかんだとアルティナとの関係が丸く(?)収まり……それからというもの、今だにわたしと侍女は戦っている。
主にアルティナのことで。
「はぁんっ‼︎ そんなことも分からないんですか⁉︎ アルティナ様に合うアクセサリーはシンプルイズベスト‼︎ 敢えてシンプルにしてアルティナ様本来の美しさを見せつけるんですぅ〜‼︎」
「そんなことをしたらアルティナの美しさが皆に知られてしまうだろうっ⁉︎ 色目を使う輩が出てきたらどうする‼︎」
「んなの蹴散らしなさい‼︎」
「…………二人とも、落ち着いてくださいな」
王城の応接室の一室。
隣に座ったアルティナは、若干呆れた目で向かいのソファに座った侍女と睨み合うわたしを見ていた。
…………そんな目で見つめられても、君に贈る装飾品で妥協はできないんだ。
悔しいことに、侍女はアルティナに似合う装飾品のチョイスが良いから……負けたくない。
「ただでさえここ最近のアルティナはわたしに愛されてる実感があるからか可愛くてっ‼︎ 邪魔な虫を排除するのに忙しいんだ‼︎ 本当は閉じ込めておきたいぐらいなんだぞっ⁉︎ これ以上、可愛くしてどうする‼︎」
「閉じ込めようとしたら、私が王子様の如く颯爽と攫って逃げるわっ‼︎ ふはははははははっ‼︎」
わたし達の会話にアルティナは恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にしてわたしの身体をバシバシと叩き、魔王ムーブな高笑いをする侍女を睨む。
……怒ってても可愛いな……?
「というか、殿下は性格がだいぶ変わってませんこと⁉︎ 大丈夫ですのっ⁉︎」
アルティナは恥ずかしさが我慢できなくなったのか、無理やり話を変えるようにそう叫ぶ。
性格が変わっているって……それはそうだろう。
ずっと、勘違いして……君の本音を聞くのが怖くて。
アルティナに本音を伝えられなかったんだから。
「もう気持ちを押し込める必要がないからな。これでも君に合わせてセーブしているんだぞ? まぁ……結婚したら、それも外すから覚悟しろよ?」
両想いだというのが嬉しくて、笑みが止まらない。
あぁ……顔を真っ赤にするアルティナは本当に可愛いな。
でも、彼女を愛でる前に邪魔者を排除しないと。
わたしは廊下に向かって声をかけた。
「旦那、お前の妻を回収していけ‼︎」
「へいへい……」
ガチャリ……と扉を開けて現れたのは、騎士服姿のシュン。
どこか疲れた様子の彼は、侍女に視線を向けると呆れたように溜息を零した。
「ほら、出てくぞ。殿下達がイチャつけないだろ」
「いぃぃぃやぁぁぁぁ‼︎ アルティナ様とは私がイチャつくのぉぉぉぉぉぉ‼︎」
「黙らっしゃーい」
「ふごっ⁉︎」
シュンはバチーンッ‼︎ どっかから取り出したハリセンというモノ(前世の由来らしい)で侍女の頭を叩き、首根っこ掴んで連行して行こうとする。
その瞬間、ハッとしてアルティナは、慌てて侍女に声をかけた。
「ステラ‼︎」
「はいっ、アルティナ様‼︎」
最推しに声をかけられたのが嬉しいのか、侍女は一瞬で満面の笑顔になる。
反してわたしは嫌な気分になるのだが……。
わたしの気持ちに気づかないアルティナは少し照れたように、侍女に告げた。
「そのっ……伝えるのが遅れてしまったけれど……ありがとう‼︎」
…………まぁ、確かに。
侍女のおかげで、アルティナとの仲が正されたのは間違いではない。
だけど、わたしは侍女に素直に感謝なんて伝えられない。
わたしと侍女は、互いに近親嫌悪をしているから。
侍女がアルティナを好きでいる限り、わたしと侍女は犬猿の仲になる。
まぁ、それでも。
アルティナのために協力することぐらいは、できるかな。
(…………感謝はできないけど。お前もシュンと幸せになればいい)
侍女はアルティナの言葉だけでなく……わたしの口パクが伝わったのか、目を見開く。
そして……ほんの一瞬だけわたしに悔しそうな顔をしてから……アルティナに向けて、嬉しそうな笑顔を向けた。
「いいえっ‼︎ 幸せになってくださいっ、アルティナ様‼︎」
「貴女も幸せになってね」
「大丈夫です‼︎ シュンに幸せにしてもらいますから‼︎」
多分、その答えはわたしにも向けているんだろうな。
侍女の首根っこを掴んでいたシュンは、軽く頭を下げて、侍女と共に楽しげな様子でこの場を去っていく。
アルティナはシュンについて聞きたいのか、視線を向けてくる。
わたしは少し苦笑しながら、答えた。
「先ほどの騎士は、ステラ嬢の恋人であるシュンという。実質、夫婦とも言えるな。元々、あの存在感の薄さを利用して諜報員をしていたみたいなんだが……ステラ嬢がアルティナの侍女を続ける以上、制御できる奴も必要だと思って、騎士に取り立てた」
「えっ⁉︎」
わたしと侍女は相性が最悪だからな。
今後も侍女がアルティナの側にいるなら、緩衝材がいないとどうしようもならないと思い、騎士として雇用することにした。
騎士ならば、未来の王太子妃の護衛にしても問題ないからな。
「城下町にアルティナへ送る指輪を買いに行った時、ステラ嬢だけじゃなくてシュンも一緒だったんだがな……存在感が薄すぎて、俺とステラ嬢二人っきりみたいに勘違いされたんだ。だから、あんな噂が流れたんだろうな」
まぁ、存在感が薄いのが難点だが。
でも、存在感が薄ければそれだけ護衛対象への負担も少なくなるから……良いかな。
「ということで、俺とステラ嬢が良い仲になることはない。俺が愛してるのはアルティナだけだ。信じてくれよ?」
「うっ……はい……」
やっと想いを伝えられたから、あの日から沢山愛の言葉を彼女に伝えた。
その度にアルティナは可愛い反応を見せてくれて……あぁ、もっと早く想いを伝えておけばよかったと、いつもそう考えずにいられない。
アルティナは顔が熱くなったのか、両手で頬を覆う。
あまりにも可愛い反応にわたしは目を見開くと……思わず目元を片手で覆って、天を仰いだ。
「はぁ……あんまり可愛い顔するなよ。婚姻前に襲ってしまいそうだから」
アルティナが卒業するまで後、一年我慢するなんて……残酷すぎる。
でも、彼女を困らせるのは本意ではないから。
「だ、駄目ですわよっ⁉︎」
「分かってる。でも、我慢する代わりにキスぐらいは許してくれよ?」
「んぅっ‼︎」
アルティナの返事を聞く前に奪うようなキスをする。
…………結婚するまでは襲わないのだから、これぐらいは許して欲しい。
わたしは、彼女への愛を溢れさせながら……。
こんな風にわたし達の仲を結び直してくれた〝悪役令嬢のおかしな侍女〟に、ほんの少しだけ、心の中で感謝した。




