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わたしのお姫様にプロポーズを


誤字報告ありがとうございます‼︎

明日の話で王太子目線はラスト‼︎


よろしくお願いします‼︎


 








 侍女曰く、わたし達が通う学園の卒業パーティーが悪役令嬢アルティナの断罪シーンらしい。



 その話もアルティナにしてしまったため……彼女は自分が断罪されるかもしれないと思っている可能性がある。

 ゆえに、敢えてそのシーンでプロポーズをすることで……アルティナの不安を吹き飛ばすのだと侍女が決定した。

 …………いや……アルティナを不安にさせたのは侍女な気がするんだが……。





 まぁ、とにかく。

 それからわたし達の忙しい日々が始まった。




 王侯貴族は基本的に、商人が品を持ってくる。

 しかし、値段よりも自らの足で探し、相手を想うことが大事だと言われ……アルティナへの贈り物を探す日々が始まった。

 侍女はさり気なくシュンにも贈り物を買うように強請っていた。



 定期的なお茶会では……アルティナと話すだけで緊張してしまい、侍女にフォローさせようと同じ席に座らせたが……。

 後々、侍女とシュンに「バカじゃないの⁉︎」とか「余計に勘違いされる行動してどうするんですかっ‼︎」と凄まじく怒られた。

 再度、自分が愚かだと反省した。




 後、侍女にカフェで土下座しながら「アルティナが参加するダンスパーティーに参加したい」と懇願され、嫌々それを了承した。

 ……人目がつく場所で土下座なんて、断れないじゃないか。

 それも、侍女の目的がアルティナのドレス姿が見たいからって……。



 ダンスパーティー当日。

 侍女はアルティナのドレス姿を見て、キャーキャー騒いだ。

 …………いや……別に他にもアルティナに見惚れている奴もいるが……侍女がアルティナを見るのは、アルティナが減る気がしたので、嫌がらせを兼ねて、一回だけ侍女と踊ってやった。

 ダンスは体力を使うからな。

 普段、慣れてない侍女はそれだけで撃沈し……大人しくなった。


 だが……その間にアルティナはホールからいなくなっていて。

 …………他の令嬢の相手(侍女と踊った弊害)や、挨拶回りなどで彼女を探すことができなかった。




 侍女とお忍びデートをしていると噂が流れた時には、シュンもいてどうしてだっっっ⁉︎ となったが……彼の存在感薄すぎるからだと分かった時には、三人で頭を抱えたのは……いい思い出(?)だろう(……遠い目)。







 …………公務やら贈り物探しやら、何やらで追われる日々。

 そうして、あっという間に卒業パーティーの日になってしまった。



 緊張ゆえに落ち着かず、わたしは控え室でウロウロする。

 …………外交でよその国の偉い方達と会うより緊張しているな。

 特例で、今日だけは側に控えさせたシュンは落ち着かないわたしを見て「落ち着いてください」と苦笑する。


「そんな落ち着かなくて、プロポーズなんて大丈夫なんですか?」

「そこは……気合いでなんとかする」

「……こういうところを見ると、殿下も人間なんだなぁと思いますね」


 ……どこからどう見ても、わたしは人間だが?

 何をもってそう思った?


「……ははっ、お気になさらずに。では、お時間ですよ。俺とステラも会場で見守っていますから……行ってらっしゃい」


 シュンに促されて、卒業パーティーの会場である学園の大広間へ向かう。

 友人達や同じ生徒会のメンバーと他愛ない話をして少し経った頃。

 わたしは意を決して、大広間の中央に立つ。

 そして、彼女の名前を呼んだ。



「アルティナ・フレスト公爵令嬢」



 声が震えていたかもしれない。

 周りの生徒達の視線すら、気にしていられない。

 生徒達の中から、静かな声で「はい」と返事をしながら、前に出てくるアルティナの姿。


 …………あぁ……今日も君は綺麗だ。


 夜空色のドレスも、君の凛とした姿も。

 全部、全部……わたしの心を揺れ動かす。


「…………君に、伝えたいことがある」

「…………はい」


 アルティナは少しだけ悲しげな笑みを浮かべるが……わたしはそんな彼女にはっきりと伝えた。




「その……君を幸せにするから、結婚してくれ」





「謹んでお受け致しまーーーーん?」


 アルティナは了承しかけてピシッと固まるが、そこまで言ったら言質は取ったも同然だよな?

 わたしは胸を撫で下ろしながら、笑顔を浮かべた。


「あぁ、良かった‼︎ 柄にもなく緊張したぞ‼︎」


 本当に緊張した‼︎

 断られたらどうしようとか……いや、侍女からアルティナがわたしを好きだと聞いていたが。

 それでも緊張するのものは緊張するんだ。

 わたしはにっこりと笑いながら、瞬きを繰り返すアルティナを見つめる。

 しかし……そんな彼女はポツリと質問した。



「…………あの、婚約を解消または破棄するとかではなく?」




「……………………は?」




 ビクリッ‼︎ ザザッ‼︎


 アルティナはギョッとした顔をしながら、身震いをしながら後退りする。

 あぁ……いけない。怖がらせたか?

 でも……なんでそんなことを言うんだ?

 わたしはゆっくりと彼女の側に歩み寄った。


「どういうことだ? なんでわたしが婚約を解消しなくてはいけない?」


 わたしの質問にアルティナは頬を引き攣らせながら……答える。


「いや、だって……ステラと良い仲だと聞きましたので…………」


 スッ……。

 思わず氷点下まで心が冷えそうになる。

 だが、シュン達の言う通りに……アルティナは勘違いしてたんだな。

 わたしは彼女を頬を両手で掴み、至近距離で微笑みながら……その勘違いを否定した。


「言っておくが、あんなアルティナ信者と良い仲になる訳ないだろう?」

「…………は?」

「それどころか、わたしが君を幸せにできないならアルティナを拉致して自分が幸せにしますと喧嘩売ってくるような奴だぞ?」

「…………はぁっ⁉︎」


 アルティナは驚いたように目を見開く。

 …………アルティナも勘違いしてたようだから、わたしも勘違いしてたことを伝えてしまおうか。


「最初……わたしは、君がソリー侯爵子息と仲睦まじいと思っていたんだ」

「……………()()()()とですか?」

「あぁ。よくソリー侯爵子息と会っていると聞いていたから」


 意味が分からないのか首を傾げるアルティナ。

 わたしは苦笑しながら、話を続けた。


「だから、まさか君が会っていると思っていた人が()()()()だとは思ってなかったんだ」



「あちゃぁぁぁぁっ、そういうことかぁぁぁぁ‼︎」


 周りにいた生徒達の中から、後悔するような声が響き、スタスタとわたし達の方に歩いて来る。

 そこにいたのは……()()()をした赤毛の男女。

 ソリー侯爵家の双子だった。

 セイラ嬢は真剣な顔でわたし達を見る。

 そして、若干青白い顔で叫んだ。


「まさかっ、わたしが男装してたから、アルティナに会っているのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()んですかっっ⁉︎」

「情けないことにな」


 苦笑しながら頷くとセイラ嬢は「うわぁぁぁぁ、やらかしたぁぁぁぁ‼︎」と頭を抱える。

 セイルに至っては、ゲラゲラ笑って妹をバカにしていた。


「うわぁ……セイラが殿下とアルティナ様の仲を拗らせてるじゃん‼︎」

「煩い、兄様‼︎ 凄く反省してるよ‼︎ 暫く男装止めるぅ‼︎」


 ……アルティナはわたしの勘違いをやっと理解したのか、驚いた顔でわたしを見つめる。

 ……こんなに至近距離で顔を見合わせたのは、初めてかもしれないな。


「と、まぁ……そんな感じで。君に本当の気持ちを伝えて断られたら立ち直れないからな。ずっと距離を置いた関係を続けてきたんだ」

「…………本当の、気持ち……?」

「あぁ。だけど、ステラ嬢が君の気持ちを代弁して教えてくれたからな。こうして君に伝えることにした」


 わたしは彼女の前で跪いて、懐から小さなケースを取り出す。

 ベルベットの、臙脂色のそれは……。


「王家が用意する指輪もあるが、これは()()()()選んだんだ。まぁ、そういうのを知ってるのと、君の好みを知ってるのが恋敵(?)とも言えるステラ嬢だったから……彼女に色々と聞く羽目になり、何度も一緒に出かけなくてはいけなくなったんだが…………」


 そう言いながら蓋を開けると……そこにあるのはシンプルなプラチナリングの土台に青い宝石が花のように装飾された可愛らしい指輪。

 わたしはアルティナの指に指輪を嵌めると……彼女の指先にチュッとキスを落とした。




「アルティナ、愛している。だから、結婚してくれ」




 どうか頷いて。

 わたしは君を、手放したくないんだ。



「…………っっっ‼︎ はいっ‼︎ わたくしも貴方を愛していますっ……‼︎ 殿下の、お嫁さんにしてくださいっ……‼︎」



 返事と共に強く抱き締めて、奪うようなキスをする。

 彼女の熱い体温に、甘い匂いに、理性が蕩けそうだ。



「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎ 私のアルティナ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎ 私が幸せにしたかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」





 ……………だが……侍女の声がなければ……もっと最高だったと思う。










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