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レベルゼロの英雄と白の少女  作者: 狐狸八月
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05.白い少女は生きなさいと言った

戦闘の後、ほんのわずかだが気を失っていたようだ。

意識を飛ばしてばかりだ、と自分でも笑いが出る。


ともあれ、まずは生きていることに安堵した。

先程の衝撃は死んでいてもおかしくない威力であったし、

実際に、来ているチュニックや肩当てはボロボロになっている。

自分の身体を見てみれば、傷は間違いなくついていた。



「どうして生きてるんだろうな…」


「そりゃあ、今死んでもらったら困るからね」


「…誰だ」


驚きながらも、声のした方へ振り返る。

だが、後ろから声がしたと思ったが誰の姿も見えなかった。


「あぁ、多分君に私の姿は見えないよ」


「どういうことだ?」


「質問ばかりだね、仕方ないけど。

とりあえず、生還おめでとう。君が生きてて良かったよ」


「アレは、お前の差し金か?」


一瞬の間が空く。


「…とんでもない。むしろ私は助けてあげたほうさ。

オーガトロニクスなんて、多分君じゃなくても、

そこらの冒険者じゃ束になっても敵わないくらい狂暴なヤツだからね」


アーデは少し考え込む。


この話している相手を信じて良いものかどうか。

…そうではない。もはや、信じる以外の道がない。


「お前は私に何をしたんだ」


「力を与えただけだよ。英雄になるためには必要だろう?」


「…英雄?」


「…貴方の知識の中にいるでしょう?」


うっすらと浮かぶ程度、知らない誰かの記憶はある。

だが、それが何だというのだろうか。


「…う、嘘。いないの?」


先程までの尊大な態度はどこかへ消え、

急に狼狽えた声を出す少女。


色々な事が起きて混乱する頭を探る。

この少女は何を言っているんだろうかという気持ちと、

先程の恐竜を倒すことが出来た力を信じる気持ちが半々だ。


「…ね、ねぇ?大丈夫?」


心配そうにこちらの顔を覗き込んでくる気配がする。

むしろそれはこっちのセリフだ。


「正直言ってよく分かっていないんだが…。

ただ、何となく身体が動きを覚えているような感覚はある」


「…それだけ?」


相手の姿は相変わらず見えないが、不安の色が濃いことはわかる。

何故だかは分からないが、安心させてあげたいと思った。


「それでもさっきのアレは倒せたんだ。

貴方のお陰だろう。感謝する」


「……っ!

ふん、分かってるならいい、その力はお前のものだ。

ただ、使い方には気を付けるといい。

技術は身体に備わるもの。下手に使うとお前の身体は…」


彼女がそこまで言いかけたところで、バタバタと足音が聞こえる。


「あぁもう!もう来た!

いい?どうにかそこを出て、ベヘリットという都市に向かいなさい。

そこにいる神子を探すの。絶対に貴方のためにな…」


言い切る前に、少女の声は聞こえなくなった。


「…何だったんだ一体」


その答えは返ってくることはなかった。

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