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レベルゼロの英雄と白の少女  作者: 狐狸八月
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02.黒い少年はかく思いて

ドクン、ドクンと心臓の脈動を感じる。

そして、それに合わせて痛みを感じた。



痛みに意識が引き戻される。

幸い我慢できない痛みではない。


顔をしかめながら、身体を起こした。



「ここは…」



どこだろうか、という言葉まで発せられなかった。


冷たい石畳に、金属製の檻。

埃っぽい空気と、あまり衛生的ではない臭い。


「牢屋……?」


痛む頭を押さえながら立ち上がる。

まだ頭の中は混乱しているし、状況は何もわかっていない。


辺りを見まわし、状況把握に努める。


どういう原理かはわからないものの、光源は確保されている。

その光に照らされ、鈍く光る剣が目に入った。


「何でこんなところに剣が…?」


西洋風の両刃の片手剣だ。目立った装飾はないが、

持ち手の下の方に白く輝く宝石が埋まっている。


持ってみると、重みは感じるが持てないほどではない。

丸腰よりマシだ。抜き身のまま、持っていくことにする。


その後、色々と周りを調べてみたが、

調べれば調べるほど、頭の中には疑問符しか浮かばない。


仕方ないのでまずは落ち着いて、わかるところから考える。



この場所について。


薄暗い洞窟のような場所だ。

鉄格子の奥には、木で出来た扉が見える。

机などは何も置かれておらず、ただ牢屋がある空間らしい。



自分の名前。


アルシュ…アルシュ・ナーデという単語が思い浮かぶ。

ただ、それが自分の名前という実感がまるでない。


後は…何だ?ナナミ。コクトー・ナナミという単語もある。

恐らく、どちらかが自分の名前なのかもしれない。


自分の服装。


麻のようなチュニックに、簡易的な皮鎧。

後は金属製の肩当てがついている。少しボロボロだが。


ぱっと見れば冒険者のようないで立ちにも見える。


唯一、首から下がっているネックレスが手掛かりだ。

不思議な光をほのかに放っている。

モチーフは何だろうか、羽根…?天使だろうか。


結局、考えたところで何も進まない。

それだけがわかった。


立ち上がって、鉄格子を揺らしてみる。

耳障りな音を立てるだけでやはり開かないようだ。


もしかしたら、と黒い剣で鉄格子を切ってみるが、

カン!と高い音を立てるだけで、傷が少しついただけだった。


その後も、体当たりをしてみたり色々試してみるも、

無駄に体力を使うだけと認識した頃には、気力も体力も使い果たしていた。


心が折れ、床に転がる。


「どうすればいいんだ、こんな状況で…」


そう呟いて、鉄格子に目を向けた瞬間。

牢屋の入り口が、轟音と共に吹き飛んだ。

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