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第7回 私が受けた『いじめ』 小学校時代(1)

 いじめには定義があるようで、世界保健機関や国際労働機関、国際公務員労組連盟などによると『自尊心を損なわせ弱体化させることを目的とした、執念深い、冷酷な、あるいは悪意のある企てによる、長期に亘って繰り返される不快な行為』なのだそうです。※ウィキペディア参照


 しかし私はこれにあえて異を唱えます。


 特に指摘したいのが『長期間』や『繰り返される』という部分です。


 そもそも1回のいじめであっても、それが『生命の危機』に直結するような事態や長期的に『後遺症』を身体や精神などに残す可能性がある行為であれば、私はその時点でいじめであり、期間などは結果論だと考えるからです。


 もちろん私の考えるいじめの行為が、結果的に『長期間』や『繰り返される』といった形になったとしても、それは結果論であると考えます。何より最初のいじめで『生命の危機』や『後遺症』が残る事態であれば、場合によってはそのいじめを行った側を、いじめられた側が対応すべき機関(学校、教育委員会、警察、市区町村、厚生労働省など)に訴えることすら出来なくなるからです。


 なぜ私がそう考えるかといえば、それは私が最初に受けたいじめがまさに『生命の危機』に直結しかねないものであり、はっきりと長期間ではないと言えるからです。


 私が最初に受けた暴力は、小学校1年の4月末頃でした。正直今でも信じられないことなので、最終的に行われた行為ははっきりと覚えています。また、その直後に教員が言った言葉もはっきりと覚えています。きっかけについては覚えていませんが、覚えていないほど些細なことだったのだと思います。少なくともそこから行われた結果が、原因など忘れてしまうほどの行為だったことも大きかったのだと思います。


 恐らく最初はちょっとした口げんかのような物だったと思います。それ自体は誰でも経験することでしょうし、特段珍しい行為だとは思いません。むしろ社会に出てからもちょっとした口げんかなど、それを行うかどうかは別として見かけること自体は珍しくも無いと思います。


 問題なのはその後でした。何を考えたのか、突然暴力を振るってきました。もちろん小学校1年生の暴力ですから、それ自体で大きな怪我をする事はまず無いと思います。しかし私もただ暴力を振るわれるのは嫌ですし、かといって無闇に反撃するのは当時から私は嫌だったので、すぐに逃げ出しました。


 反撃するか逃げるか、この行動をどう考えるかは人によると思います。しかし私は早生まれでしたし、それほど力がないという事は自分でも分かっていたので、当時の私の行動が間違っていたとは今も思っていません。ただ、当然のように相手は私を追いかけてきました。小学生同士のケンカであれば、この程度のことは普通に行われることだと思います。


 当然というべきか、私が逃げたので相手が追いかけてきて、学校の廊下の端に近づきます。そこにあるのは上下階へと続く階段です。そこで私が当時取った行動は、下の階に行く事でした。何故下の階に行こうとしたかは覚えていません。そもそも小学校1年でしかも入学間もない当時のことを、詳細に覚えていることの方が少ないでしょう。


 階段を上るにしても下るにしても、小学校1年生ですから、階段を飛ばして上り下りなど出来るはずがありません。また、その時どちらに逃げるかで一瞬の迷いがあったのだと思いますが、そこへ追いかけてきた人物が追い着きました。そして問題の行為が発生します。


 階段を降りようとしている私を、その人物は後ろから押しました。相手がどの様に考えていたのかは分かりませんが、私からすれば突き落とされたと同じ事です。当然階段を降りようとしている時に後ろから押されれば、バランスを崩してしまうのは珍しいことでは無いと思います。結果として私はコの字になっている階段の中央部分まで、文字通り転がり落ちました。


 幸いにもその時に目立った外傷はありませんでしたが、それでも全身が痛んだのは今でも覚えていることです。そんな状況で突き落とした者は階段の上からただ見ているだけで、少しして誰かが教師を呼んだのでしょう。担任が慌てたように出てきました。


 痛みを我慢しつつ、教師が来たので元の階に戻り、一応怪我等がないか確認しましたが、普通はその後教師が取る行動として、事情を聞いた後に突き落とした側をきちんと糾弾すべきだと私は考えますが、その教師は事情を聞いた後に私にこう聞きました。


 『なんで「やめて」と言わなかったの?』


 私はその時、一体何を言っているのだろうと放心状態になったのを覚えています。それだけ私にとっては信じられない言葉だったからです。


 まずは突き落とす事に対して、それを行った者に相応の対応をすべきはずですが、その前に私に対してこう言われては『何を言っているの?』と思わずにいられませんでした。


 人にもよると思いますが、追いかけられてどこまでその間に「やめて」と言えるでしょうか?しかも当時の私は小学校1年であり、4月なので入学したばかりの時期です。それ以前は幼稚園に行っていましたが、まだまだ小学校1年ともなれば、情緒が育っていく段階のはずだと思います。はっきり言って教師の言ったことは、入学して間もない子供に言うべき事ではないと私は今でも思います。それ以前に、先に突き落とした側をきちんと糾弾すべきはずなのに、何故かそれより先に私が注意されました。いえ、私からすればそれは注意と言うよりも、私が悪いとされたと感じてしまいました。


 上手く答えられずに(そもそも小学校1年生の、しかも入学間もない時期にどこまでこういった事が発生した状態で答えられるのでしょう?)その時は逃げるのに必死だったようなことを言った記憶がありますが、それに対して教師は『やめてとちゃんと言わなきゃダメじゃない』と言う始末。それから突き落とした側に対して注意をするという、私からすると順序が逆の行為としか思えないことをされた訳です。


 それ以来私の中では、教師を『先生』と本来の意味では言えなくなりました。はっきり言えば信用できなくなったのです。


 しかも突き落とした側は簡単に『階段で突き落としたらダメだよ』と言われただけで、これではどちらが悪いのか分からなくなってしまいます。


 そもそも小学校1年の体格であれば、下手に階段を転がり落ちれば生命の危機に直結する場合すらあったはずです。いくら階段がコの字型になっているとはいえ、階段に身を打ち付けながら転がり落ちれば、小学校低学年であれば骨折などをしてもおかしくないと私は思います。


 なのに何故かその時は私の方が長く注意され、突き落とした側が一言で終わってしまうという信じられない事を行われれば、教師を信頼など出来なくなって当然だと思います。


 そもそも階段から落ちたのであれば、表面上怪我がなかったとしても保健室に連れていくなりして、場合によっては病院で検査を受けさせるべきのはずです。当然その時必要があれば、救急車を呼ぶべきでしょう。


 しかしその後は、授業が近づいていた時間という事もあり、そのまま教室に戻されました。私の方はまだ身体の痛みが引いていない状況です。


 ここまで書いて、これを嘘だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。それは仕方がないと思います。何より今でも私にすれば信じられない事です。それを被害者側である私の証言だけで信頼しろというのは、正直無理もあるでしょう。


 しかしここで書いた事は、全て事実です。多少言葉に違いがあったとしても、大きな流れが変わるような事はありません。


 この事があって以来、私はいじめられる対象に固定される事になります。相手やそれを見ていた、または聞いた者からすれば、私は格好の獲物と感じられたのでしょう。


 いじめのきっかけなど、人それぞれだと思います。しかしそのきっかけが、このような事であれば、一度初期に決めつけられたいじめの対象者から逃げられる事は難しいと思います。


 そして何より、たった1度であっても生命の危機またはそれに類ずる事をされたのであれば、それはその当人にとってはいじめ以外の何物でもないと私は考えます。


 私のいじめのきっかけはここから始まったと考えていますが、今でも学校からいじめがなくなる気配はまるで無いどころか、自殺される方も多いのが現実だと思います。


 私の例はある意味特別だとは思いますが、それでも学校で起きるいじめとされる暴力行為は、昔から基本的にいじめられる側が不利になるとしか思えません。

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