第38回 それは誰のための仕事?
障害者雇用にもいくつか種類があります。代表的な一般に良く知られているものはハローワークの障害者向けの雇用と、民間の障害者向けの雇用だと思います。しかし実際には民間の障害者雇用の中にも大きく四つの種類があります。
一般によく知られている民間の障害者雇用はいわゆる”障害者雇用枠”での雇用です。しかしそれ以外に就労移行支援と就労継続支援という物があり、就労継続支援はさらにA型とB型に分かれています。
一般の障害者雇用ではその障害の内容を考慮し、相手の企業との就労条件などを定めるなど、基本的には障害者に対しての配慮という点はあるものの、一般の方と似た形になりますが、就労継続支援というものはこれとは異なるものと考えて良いでしょう。
厚生労働省によると令和2年3月の段階で、就労移行支援は約3.4万人、就労継続支援A型が約7.2万人、就労継続支援B型が約26.9万人となっています。
就労移行支援、就労継続支援共に、一般企業への就労を支援するための仕組みですが、現実問題として必ずしも一般企業への就労が進んでいるとは言えません。
これらの中には重度障害の方なども含まれ、特に知的障害や重度の精神障害、重度の身体障害のために行動が困難な方も含まれるため、一概にこのシステムを批判すべきでは無いと思います。ですが適切な理解があれば一般の企業へも就労できる方がこの中に埋もれている現状があり、私個人としてもそのような中で一般企業への就労が出来ずに苦しんでいる方を知っています。厚生労働省では平成15年から令和元年にかけて一般企業への就労が17倍になったとしていますが、そもそも平成15年が1,288人であったのに対して、令和元年が21,919人であり、障害者全体が約964万人、その中で18歳から65歳までの方が377万人としており、特にその中でも精神障害が217,2万人と突出していて、これは近年増えているうつ病などの影響が大きいと考えられます。ちなみに身体障害が101.3万人、知的障害が58万人とされています。
これらの中で企業に雇用されている方は令和2年6月1日の段階で従業員数45.5人以上の障害者雇用が義務付けられている企業に約57.8万人であり、ハローワークからの就職は103,163件(令和元年度)ですが、このハローワークの中に就労移行支援、就労継続支援が含まれており、例えばA型が19,388件とされています。
事業所(企業)によってA型とB型を定め、民間就労への支援という形を取っていますが、その中で作業をするため収入が発生します。この中で私が知る中では就労継続支援B型が一般の企業への就職を後押しする形になるはずですが、令和元年度のそれぞれの賃金を見て見るとA型が月額16,369円、B型で78,975円が全国の平均値です。
それぞれA型とB型とでは違いがありますし、一概に一般の民間での作業とは比較して良いものではありません。しかしながら私が知る限りB型とされる事業所で、普通のアルバイトで時給1,000円程度の内容で募集している仕事と同じ内容を行い、就労継続支援B型では賃金ではなく”工賃”という名目で対価を支払いますが、名目上は”自分の能力に合わせて”や”自分のペースに合わせて”といった形で、軽作業を行うとされているにもかかわらず、一部にノルマを事実上定めている場所も散見されるようです。これは障害者総合支援法の考えとは異なる物のはずであり、しかも名目上を理由に適切な”工賃”が支払われない状況が発生していると考えざるを得ない状況があります。
就労継続支援B型の作業内容にもよりますが、私が知っている人では1日6時間の作業で週3日または4日の出勤の方がいます。1日6時間を3日、1ヶ月4週として72時間の”工賃”が支払われている形ですが、その方は月に支払われる額が約6万円だそうです。この場合の平均工賃額は833円ほどとなります。実際には14日間の作業を行っての”工賃”だそうで、この場合約714円となります。そしてその方は特に途中で休むこともなく、以前障害者となる前まで働いていたときと同じように、内容は異なってもきちんと作業をしたそうです。そういった方が時間あたり700円と少しで働き、残りは厚生障害年金三級で生活しているそうですが、当然ギリギリの生活になってしまうそうです。これは令和2年の中頃に聞いた話で、厚生障害年金三級とは月額5万円にとどかない額であり、そこに約6万円の計11万円で生活を何とかしているそうですが、住んでいる地域の最低時給よりも安い工賃である事もそうですが、生活保護の受給額よりも少ない額となります。必ずしも厚生労働省の発表している情報が実情を伴っていないと言えるのではないかと考えます。
それでもその方は、他の仕事が見つからないためにそこで働いているそうですが、障害というハンデを負って、さらに生活も厳しいというのは色々と納得が出来ないことが多いと口にします。最後にその方は、関東圏に在住の方です。
一体厚生労働省の情報は、何を元にした情報なのでしょうか? こういった話を聞くと、ただでさえ厳しい雇用環境に私など心が折れてしまいます。賃金と工賃という違いはあったとしても、普通の人が募集できるアルバイトと同じような仕事を行っているのに、障害者という事で最低賃金に相当する額ですらまともに受け取れないというのは、きちんと作業を行えている人に対して失礼ではないでしょうか?
もちろん障害を持った方が全て健常者と同じように働けるわけではありません。しかし同等の仕事が出来るのであれば、同等の賃金であるべきと考えます。
こういった形で闇に埋もれた現代の搾取は行われているのではないでしょうか?




