第28回 人としての尊厳(後編)
働き方には様々な形があります。正社員、派遣社員、パート・アルバイトという形が一般的です。
正社員はその会社に雇われた人であり、派遣社員は派遣会社から相手会社へと派遣され、その能力で相手の会社へ貢献します。パート・アルバイトは本来の在り方として、社員に任せるまでもないけども、その仕事(作業)をしてもらう必要がある場合などに会社に雇われる形でしょう。ただしパートやアルバイトは社員などと異なり任意の時間を選ぶ場合も相応にあります。社員やケイシャクシャインはその代わりに就業時間が決まっている場合がほとんどのはずですし、さらに残業を求められる場合もあるはずです。その子養鶏帯の違いで、働き方を選ぶ場合も多いでしょう。
もちろんパートやアルバイトで働いている人も、様々な事情でその様な雇用形態を選んでいる可能性もあり、特に一般社員よりも時間を選びやすいことでパートなどで働いている場合もあるでしょうが、しかし同時に他に方法がなくパートやアルバイトといった形で働いている方もいるはずです。しかし雇っている側としては、それをどこまで配慮してくれるでしょうか?
就職氷河期以降、非正規雇用が増えたのは事実です。しかも非正規雇用の場合はあまりというか、ほとんど給与(時給)のアップは見込めない場合も多く、収入の幅が低い値で固定されてしまう傾向があると思います。
では非正規雇用で働いている人の能力が限られているかと問われれば、私なら真っ先に否定します。能力の問題は個人による所も多く、上の年齢で能力が低いのに正社員の場合もあれば、下の年齢で能力が高いのに非正規で働くという事も実際に目にしましたし、現実に非正規でも能力が高いはずなのに、正社員のような待遇を受ける事が出来ない事を私自身も体験しました。
私の場合ですが、非正規扱いなのに正社員への研修を担当したりですとか、本来知っていて当たり前の内容を知らないで業界に入ってきて、それを教えるといったことおあります。ですがこの時は非正規で私の給与は上がらず、正規ですがまだ仕事もまともに出来ない状態なのに、給与だけが数ヶ月で上がるケースすらありました。当然そうなればモチベーションは維持できません。しかし会社側はモチベーションを維持しろといいますし、さらにそこへ明らかに暇をしている正社員を差し置いて、仕事が割り振られることすらありました。
職種によっても色々と異なることはあると思いますが、このような事がまかり通っていてやる気を出せと言われても、それは人を馬鹿にした話です。生活に全く関係なく趣味で仕事をしており、収入など考慮しないという人ならそれで良いかもしれませんが、現実にはそんな人などいないと思います。
かといって待遇を改めるように会社にいえば『じゃあ辞めて良いよ』が私への答えでした。人を人として扱っていないからこそ、このようなことが平気でできるのだと思います。ちなみにさほど時間をおかなく辞めましたが。
正社員で最も長く働いていた会社では、結局過重労働により仕事が出来なくなりました。実質の労働時間が1日15時間を超えたり、しかもそれが1ヶ月続くなどすれば、当然体調のどこかがおかしくなって当たり前だと思います。現在では月の残業時間が80時間を超えた場合に過労死ラインとされていますが、当時はその様な話は全くありませんでした。その様な中で月の残業時間が200時間に迫ることがあったり、労働時間としては1日あたり12時間でも、休日が週単位で無いことが続いたりという状況が何度もあれば、むしろおかしくなって当然のはずです。最終的にはうつ病を患い、その責任を会社が認めることは一切無く、自主退職の扱いで辞めさせられる形となり、うつ病その物は現在も通院している状況です。はっきり言えば無理をしすぎたの一言なのでしょう。最も長い月の労働時間は480時間を超えたこともあり、通常1日8時間の週5日勤務であれば月の労働日数を仮に22日間として176時間なのですから、時間外労働が300時間を超えている計算になります。しかしこのような状況でも当時は労働基準監督署に相談しようとして、門前払いを受けたほどです。そのくらいに当時は労働基準監督署も仕事をしていなかったとしか思えません。
労働の適正を監督するための機関が機能しておらず、しかも会社側も異常な労働時間に対して適切な処置を取らなければ、そこで働く人間がダメになるのは当然のことのはずです。
もちろん会社や業種によって異なるとは思いますが、恐らく今現在も異常な労働時間や労働条件で働いている方は多いと考えます。それは月の時間外労働を80時間以下に抑えるよう国が言っているからであり、そもそも官僚と呼ばれる公務員がこれを達成できていない状況が合ったりすることも原因です。国が達成できていないのに、民間が簡単に従うでしょうか? しかも労働基準監督署が全ての会社などをリアルタイムで監督出来ている訳でもないのですから当然です。
そもそも月80時間の時間外労働だったとしても、仮に月22日の労働日数だとして、1日の通常勤務時間が8時間とすると時間外労働は3時間30分以上となる訳で、出社時間が午前9時だとすると本来の終業時間が午後6時になりますが、そこに3時間30分を加えれば午後9時30分なのですから、夜遅い帰りになるのは当然でしょう。1日8時間の付き22日間労働(1ヶ月を30日、週休2日制を想定)だとして1ヶ月の労働時間は176時間なのですから、その半分に近い時間外労働をすることになるはずです。合計の月労働時間は256時間であり、本来の労働時間が月176時間である事を想定すれば、単純に時間外労働として見るよりも、全体でどれだけ仕事に縛られてしまうか、1日11時間30分労働という表記とほぼ同じであり、異常なことが様々な面から分かるでしょう。
平均の睡眠時間は性別や年齢によって変化しますが、私は最低でも6時間は連続した睡眠時間が必要だと思います。ここに労働時間の11時間30分とその間にある1時間の休憩(昼食などの)時間を足せば18時間30分であり、残りの1日の時間は5時間30分になりますし、さらに通勤で片道1時間かかっていれば自由に使える時間は3時間30分。朝食や夕食、お風呂などの時間まで入れれば自由になる時間は労働する日はほとんど無いことが明白になります。1週間のうち2日は自由な時間があるのだから問題ないとすれば、これこそ暴言でしょう。実質的に労働している日はその人が自由に使える時間などほとんど無いと同義であり、これを異常と言わずして何を異常というのでしょうか?
このように時間を詳細に考えれば人としての尊厳を無視した労働をさせている会社が現実にある事は明白となり、これは私は憲法で保障された基本的人権の尊重が守られていないと考えます。
基本的人権の尊重を守らずして、経済規模だけ世界3位と言われても、これは問題を抱えた上での経済規模であり、無理に作られた経済規模ではないでしょうか。
単純に世界の中での経済規模を考えるより、1人1人の尊厳を守った適正な経済規模があるはずです。これが守られない今の現状は、現代の奴隷制度ではないかとすら思います。




