第22回 中途採用や能力以前に、それは許される行為?
こんな事を書くと、それこそ『能力がない(不足している)事の言い訳だ』と言う人も、それなりに多いと思いますが、あえて書きます。
現状コマーシャルなどを含めて『中途採用で即戦力』な人材が、本当に必要なのでしょうか?
一部の業種に限れば、中途採用などでも即戦力として考えられる人がいるでしょう。例えとすれば医師や弁護士など、国家資格を持ちつつ、相応の事をしてきた方々です。もちろん他にもこれに該当する職種はあると思いますが、どちらにしても言えるのは、根本的にこれらは『専門職』と言えるような物ばかりであり、なおかつ普通に言う専門職の中でも、確実に国家資格などの確実な資格などがある人々であって、専門職と言っても視覚がはっきりしなかったり、曖昧だったりする場合は含まれないと思います。
それらを踏まえた上で、専門職の人というのは日本人全体にどの程度いるのでしょうか?
日本医師会のホームページによると、登録している医師は開業医と勤務医で平成27年12月において約16万7千人である事が分かります。
似たような職場として看護師が上げられますが、こちらも国家資格ですのでついでに掲載すると、日本看護協会のホームページより平成28年で約166万人とのデータがありました。
弁護士については弁護士ドットコムというサイトで、平成27年度末の段階において31,414人と記載があり、日本弁護士連合会のホームページでは弁護士白書2018年版で裁判官の数を2018年で2,782人としています(簡易裁判所を除く)。
この他にも極めて専門性が高く、国家資格などがなければ仕事が出来ない物はあるでしょうが、ちょっと誰でも思いつくような資格の必要な職業を合計で4つほど提示しました。
これらの合計でおおよそこの4つの専門職の人々は約186万人を超える方々であると分かりますが、どんなにあら探しをしたところで、これらの資格を持って働いているような本当の『専門職』と言える有資格者の方は、全てを足しても1,000万人にはいかないと想像します。
総務省の統計によると、労働力人口(15歳以上人口のうち,就業者と完全失業者を合わせた人口)は2018年で平均6,830万人だそうです。
私自身無理があるとは思っていますが、仮に国家資格などを有した専門性の極めて高い専門職の方が1,000万人いるとして、残りはおおよそ5,800万人前後となり、早い話が7人に1人は国家資格などを持った極めて専門性の高い仕事をする人で、それ以外はそこまでの専門的な資格を有しない人となります。
もちろん実際には民間の資格などを重視する会社などがあったり(海外との取引が頻繁なら、外国語能力は必須でしょう)と、一概に言えたことではありませんが、普通に考えれば大半の人は『専門性の高い国家資格』など持たない人であり、多少の知識や経験などは考慮するとしても、コマーシャルであるような『即戦力』と呼べる人は、資格というはっきりした指標が無い以上、企業側の完全なる都合であり、応募してきた人が本当に即戦力となるかなど、それこそ本来は未知数のはずです。多少は応募段階である程度知識などの調査を行ったとしても、会社ごとにその企業方針なども異なるのですから、そんな簡単に都合の良い即戦力となる人材がいるとは思えません。
しかしながら現実問題としては、コマーシャルで普段から目にすることも多いように、『即戦力』という言葉を表に出して、すぐに会社に貢献できるような人を求めていると、あのようなコマーシャルを見れば一般の人はその様に考えるのではないでしょうか?
ですが現実問題として特に中途採用ともなれば、新卒で入社しても何らかの都合で1ヶ月もせずに会社を辞めた人と、40年会社で働いてきて一定の分野には知識などが豊富な人も全て『中途採用』の基準になります。
もちろん何の我慢もせずに最初からすぐに会社を辞めるような人に将来性があるかと問われると、私は無いと言うでしょう。ある程度個人の考えに合わなかったとしても、多少は融通を利かせなければならない場所は必ずあり、それは社会人として生きていく上では絶対に必要なスキル以前の、持っていなくてはならない物だと思います。
そういった例外はとりあえず考えないとしても、普通に考えて就職氷河期頃から表に出始めた企業の『採用したら即戦力扱い』のような風潮が現在も続いていると思えて仕方ありません。
何よりも『人を育てる』という事を会社がしなくなれば、学校教育止まりの学生は相応の資格などがなければ、就職するだけでも乗り越えなければならない壁にぶち当たりやすいのではないでしょうか? もしくは有名大学などを卒業できた人などは、まだ就職に関しては有利だと思えます。
ですが現実に考えてみると、一般に有名な大学よりも、無名や2流扱いされているような大学が多く、たとえそこで優秀な成績を収めており、実際は下手な有名大学卒業生よりも能力が有ったとしても、大学の名前の差だけで就職が不利になってしまうことも多いのではないかと思えます。
何が言いたいかと言えば、結局は憲法にある『職業選択の自由』など、最初から存在などしていないという事です。
親が裕福であればそれだけで優秀な進学塾や家庭教師などを用いて有名大学を卒業できることも出来るかもしれません。しかし大半の方はそれに当てはまらないでしょう。塾に通っていたとしても、それが本当に役になっていたかなど、結果でしか分からないことです。
私個人としては『完全な職業選択の自由』を求めるつもりはありません。むしろそれはおかしな事につながると思います。優秀な人であればそれを生かして優秀なことをして頂くことが一番だと思います。
ですがそういった事が必ずしも求められていないような仕事であっても、最初からまるで優秀な人材でなければならないといった風潮が就職氷河期以降からずっと続いているのは、喧嘩を売っているのを承知で、『今の日本企業は無能の集まりなのか』と考えざるを得ません。
もちろんそんな企業ばかりではないでしょう。しかし端的に『無能な企業』が増えているのではと、私は考えています。
現在であれば外国人に開放している仕事も、本来支払うべき報酬をきちんと支払うだけで、一定数の日本人が応募するのではないでしょうか? それが行えないのは、単に人件費を削りたいからとしか思えないのですが、私の考えが間違っているとは今のところ思えません。
今までいくつかのホームページなどを見てきた経験ですが、社員などの労働者に対して『やってはいけないこと』などと表現されるケースがいくつかありました。
その中で私が同意できるいくつかを提示すると
・従業員のやる気を下げることをしない
・なんとなくで本当に必要、不必要かどうかの判断もせずに従業員を解雇する
・法律などを守らせないことを従業員にさせる
が、私の記憶にもはっきりと印象深く残っている事です。
そもそも2番目に提示した『なんとなくで解雇する』など、私から言わせれば従業員のことなど考えていない典型だと思います。
そして最初の『やる気』ですが、モチベーションと言うと分かりやすい人もいるかとは思いますが、その会社の業績には特に問題が見当たらないのに給与を差し置いたり、場合によっては『内部留保』を優先して従業員への還元をしないなど、明らかに従業員が一定数『この状況なら仕方がないね』と思える状況ならともかく、そうでない状況で給与などが十分に支払わなければ、当然『やる気』など出ないでしょうし、場合によっては優秀な人ほどさっさとその会社を辞めるかもしれません。
3つ目の法律などを守らないは、根本的に間違っているとしか思えません。『昔ならサービス残業は当たり前』と言ったような言葉は、時代錯誤としか思えません。さらにニュースにもなりましたが、品質詐欺などもこれに当てはまることであると思えます。
従業員と言っても、アルバイトから社員、契約社員、幹部社員などと色々な立場の人がいると思いますが、特に待遇面で真っ先に足下を見られるのは、アルバイトや一般社員、契約社員なのではないでしょうか? これらの従業員の方々はロボットではありません。感情のある立派な人間である以上、一定の基準を超えれば会社に不信感などを持つでしょうし、他に待遇の良いところを見つけることが出来れば、そちらに移るのは当然だと思います。
表題では中途採用などの問題から始まりましたが、根本的には現在の日本企業の在り方が問われているとしか思えません。
人の必要のない会社であれば、ロボットを使えば良いだけです。壊れない限り命令に忠実に動くでしょう。しかしそれを人間に求めることは、私はあってはならないと思います。
そして就職氷河期以降から私は続いていると思う、一部?の企業で今も行われている、従業員を人として扱わないような企業に、未来はあるのでしょうか?
現在テレビで流れているコマーシャルなどは、端的にその今のに本の悪い面を表しているとしか思えません。




