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第12回 日本と世界の学業

 2017年のデータによると、日本の大卒率は51.44%(25歳~64歳)だそうです。これは世界でもカナダ、ロシアに次ぐ第3位で、過激な受験戦争が報道される韓国の5位(47.74%)よりも上ですし、当然アメリカ(6位)やイギリス(7位)、フランス(23位)、ドイツ(29位)よりも上になります。


 もちろん学力が全体として高いことが悪いとは思いません。男女平均値で言えば2002年には40%を超えており、2010年には50%を超えているなど、日本人全体の大卒率が高いのは、それを活かすことが出来る環境であれば一番でしょう。男性だけならば1975年(昭和50年)に40%を一度は超え、1995年(平成7年)には完全に40%を超えており、女性においても2002年(平成14年)には40%を超え、全体的に高い学力を日本は誇っていると考えることも出来ます。


 一方、高校卒業就職率は現在男女平均で2割を切っており、中学卒業就職率は1980年頃からほとんどゼロに近いくらいに減少しており、その意味では1980年以降は多くの方が高校に卒業しているのが日本の現状です。


 ところで一般的には世界で考えた場合に、日本の大学・短大進学率は32位であり、他の国よりも高くないと言われています。そうすると前述の大卒率から見た順位に食い違いがあります。


 この32位というデータは『2010年の大学進学率の国際比較』という文部科学省が出した資料に基づいており『日本の大学進学率はOECD各国と比べると高いとはいえない』とも同時に書かれていることから一般にそう言われているようなのですが、私はこれに異を唱えます。


 そもそもこの文部科学省が出したデータによると、オーストラリアの大学・短大進学率が100%近い値であり、この時点で直接信頼して良いデータではないと考えざるを得ません。


 そもそもOECDのデータでは


・生涯進学率の推定値を示したもの

・海外からの留学生を含む

・全ての国が大学・短大タイプ、専門・職業学校タイプを区別していない

・フルタイムやパートタイムの学生を必ずしも区別していない

・OECDが表す高等教育と日本の大学・短大などの教育水準が異なるため、必ずしも一律に比較出来なく、国によっては日本で言う職業専門学校も同列にされる


といった、日本の大学卒業とする大学・短大のみの進学率ではなく、恣意的な情報操作が行われていると感じます。


 そもそも日本のデータは推計値ではなく実際の値であり、この時点でOECDのデータと比較することが間違っています。


 また進学率が100%に近いオーストラリアは、留学生を除いた値となると30%台になり、実際の進学率とはかけ離れていることが分かります。日本の場合は統計に含まれる外国人留学生の割合が2015年で約1.6%(約1万人)である事を考えると、オーストラリアなどは『下駄を履かせている』状態であり、この点からもOECDのデータと単純に比較すべきではなく、そもそも日本の統計では純粋に大学・短大タイプが統計データになるため、当然これに専門学校などを含めればもっと数値は上がります。


 ちなみにOECDは留学生を除いた進学率も統計で出しており、2015年でのデータでは大学・短大、専門学校等のデータも出ており、その順位では日本は6位のようです(1位はニュージーランド)。そのデータでは29位までに韓国は入っていませんし、2位が中国、3位デンマーク、5位ポルトガル、9位オーストラリア、12位スペインなどとなっており、アメリカやイギリスはそれよりも下となります。


 そもそも国によって大学や短大、専門学校の位置づけが異なり、基本的に日本では大学というと4年制を指しますが、英語でのカレッジ(College)は多くの場合州立大学の場合が多いらしく、また2年制大学である場合が多いそうなので、日本では短大に近い存在だと思いますが、一般的に多くの方がユニバーシティ(University)と同じ感覚でイメージしているのではないでしょうか? ちなみに有名なハーバード大学などは私立大学で、こちらの方が日本の大学と似た形になります。一般的に日本では短大よりも大学の方が学力が上とされる場合があったりなど(実際には専門的な大学などもあり異なりますが)、短大よりも大学を卒業した方が学力が高いと見なされるかと思います。こういった事を考えれば、一概に日本とアメリカの大学を比較しても、その実情が異なる以上同じ比較が出来るわけがありません。


 また韓国で言う大学とは日本で言う専門学校に近いものであり名称も専門大学(職業大学)とされる場合が多いらしく、日本の4年制大学と同等の物は一般に大学校と呼ばれるそうで、当然ながら大学と大学校ではこの場合意味が異なります。また韓国の一般で言う大学は2年~3年制なので、この点も一概に日本の学校制度と比較すること自体が間違いではないでしょうか。仮に日本で言う専門学校レベルの人と、大学卒業の人を同じに扱うといわれたら、それは違うと多くの方が言うと思います。


 さらに言えばOECDのデータは進学率であり、修了率(卒業率)ではありません。海外では必ずしも卒業していない場合もあり、今の日本の大学の卒業率まで考えれば、自ずと結果は大きく異なるはずです。


 これらのように日本の大学制度(教育制度)と世界の大学制度(教育制度)は異なる場合が多く、単純に比較すること自体が根本的に間違いです。


 今まで述べ事から、私は日本の教育水準が低いとは思っていません。むしろ世界的には個人的に高いと思っていますし、多くの外国語の書籍や書物などが日本語に翻訳され、それを容易に読むことが出来ることを考えれば、世界的にも教育水準は高いと思います。そもそも日本人で日本語が読めない人はどれくらいいるでしょうか? 多くの方が字を読むことが出来るし、書く事も出来ます。いわゆる識字率は極めて高いですが、海外では必ずしもそうではありません。


 何よりいくつかの書籍で指摘されていますが、アメリカではアメリカの不利益になるような本は少なく、これと同じ事がイギリスやフランスなどのヨーロッパ各国、中国や韓国など様々な国に当てはまるのだそうですが、日本ではそれが翻訳された書籍を読むことが出来るので、当然比較して読むことが出来ます。何よりも日本語で日本を批判した本など沢山あります。これらの事を考慮すれば、教育だけでなく様々なことが日本語を知っているだけで知ることが出来、当然知識という意味では、学ぼうと思えば日本語は世界中を知る事が可能な言語とも言えます。そういった事まで考慮した場合に、必ずしも文部科学省の言う大学進学率や実際の世界と比べた場合の大学進学率、教育レベルなど『実情とは一致していない』事を考えるべきで、大学の進学率だけでは論じられないことも多く、日本にある日本のやり方もまた、一つの教育のやり方である事をもっと考えるべきであると考えます。

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