第五話:恋の前に友達だろ
サブタイトルを変更しました。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
入学して一週間ほど。そろそろクラスでも各々のコミュニティが出来始めている。それは、アイドルオタクの集まりだったり、中学時代からの友達の集まりだったりするのだが、俺は今でも独り身ーーいわゆるぼっちである。
何故一人なのかといえば、もちろん理由はたくさんある。むしろありすぎて困ってる。登校初日に遅刻してくる無神経さに加え、女の子に無理矢理告白させるという最低さ。クラスの輪に入れないのも当たり前だと自分でも思う。全部誤解なんだけどな……。
「はぁ、誰か俺を貰ってくれ」
「何を貰うのですか?」
俺がため息を漏らしていると、千春が顔をぴょこっと出して、覗き込むように尋ねてくる。友達との話が終わったのか、それとも一人の俺を案じてくれたのか。
氷見千春。明るい性格で誰にでも分け隔てなく接する優しさで、今ではクラスの人気者である。底辺の俺なんかと話しているような人間ではない。一週間でそれに気づいた。僕悲しい。
「誰か俺と一緒にお友達しようよー、ってこと」
「? 友達なら私がいるではないですか」
「裏を返せばお前しかいないってことだ」
「むぅ、またお前って言いましたね。下の名前で呼んでくれるって言ったのにー」
「すまん、気にしてなかった」
千春は学校での唯一のコミュニケーション相手である。俺なんかとでも気軽に話してくれる、とても優しくて僕嬉しい。
まあこんなわけで俺は高校生活のスタートに失敗し、恋愛するという目標からもまだ程遠い状況にいる。もちろん諦める気はさらさらないが、辿り着くには気が遠くなる距離である。
ここはちょうど隣にいるエキスパートに聞くとするか。
「なあ、どうやったら友達ができるんだ?」
「友達のつくり方、ですか?」
「ああ。普通、友達いないやつに恋愛はできんだろ」
「そんなことはないと、思いますけどね」
千春はそう言って、コホンと咳払いすると「ですが……」と続けて、
「そこまで友達をつくりたいのならいいでしょう。教えてあげます」
「まじで⁉︎ さすが現役友達ホルダーは言うことが違うぜ!」
「なんですか現役友達ホルダーって……。平くん以外全員そうなのでは?」
「俺にはお前がいるだろ(キラッ)」
「そうでしたね(キラッ)」
いやナニコレ。「ふっふっふ……」なんて千春は呟いているが、よく考えるとまじで辛い。友達欲しい。
「さて、おふざけはここまでにして……私に提案があります!」
机をバンッと叩いて立ち上がると、俺の方に向いて自信満々な笑みを見せる。
「ズバリ! 部活動に、入りましょう!」
「部活動か、立ち上がってまで言うことじゃないなな。もう気づいてたし」
「なっ……⁉︎ ぐぬぬぬぬぬぬ……」
悔しそうにしてるの可愛い。犬みたい。……ってそんなことは今はよくて……、部活動か……。
「おそらくですが、平くんに友達がいないのは変態だからですよね。生足大好き星人ですもんね」
「そのことはもういいだろ。第一今も見てるしな。あと理由はそれじゃない。千春は気づいてないだろうが……、まあいろいろあったんだよ」
「そうだったのですか。でもその原因を知っているのは同じクラスの人たちだけでしょう? 部活動に入れば他のクラスの人や先輩もいますよ!」
確かにその通りだ。クラスメイト以外なら友達をつくれるかもしれない。
「そうと決まれば今日の放課後は早速部活動見学に行きますよ!」