異世界きたようなんで、とりあえず好きにしますね
ここは…どこだ…?俺はさっきまで何をしていたんだ…?
「気がつきましたか」
どこからか声がする。柔らかくて深みがある、俺を包んでくれる声が聞こえる。
「私は女神、名をハナラと言います」
…って、俺は喋ってないのに会話が成立してる!?
「驚くこともないでしょう。あなたは先ほど死んだばっかりなのですから」
…そうだ。思い出した。俺は学校の帰りにスリにあった女性を助けようとして追いかけていたら、狭い路地に逃げ込まれて…ナイフで刺されたんだっけ…
「あなたは死んでしまいましたが、善人でありまだ若かったでしょう」
高校生になったばかりの15歳…寿命が短かった戦国時代でさえ人間50年…今は平均寿命100歳の時代だし、早死にが過ぎるな。
「そこで私はあなたを生き返らせようと考えたのです」
本当ですか!?
「ただし元の世界の肉体の損傷が激しく、元の世界に戻ることはおろか元の体で過ごすことはできません」
そうですか…
「その代わりと言ってはなんですが、あなたには魔法の力を授けましょう」
魔法って、火の玉を出したり雷を落としたりするやつですか?
「ええ。他にも色々な用途に使えますが、いかがでしょう」
生き返れるだけでもありがたいのに、ここまでしてくださるなんて…本当に嬉しいです。
「あなたは善人なのですから、報われて当然なのです」
女神様…!
「さあお行きなさい。新しい人生があなたを待っています…
ー
「あ、あの…大丈夫ですか?」
「あ…うん…」
重たい瞼を開けると、俺の顔を心配そうに覗き込む美少女の顔が見えた。そして起き上がろうとした俺のおでこと美少女のおでこがぶつかった。
「あ、ごめん。大丈夫?」
「え?ああ、平気です。って、それよりあなたこそ大丈夫なんですか?」
「俺は平気だよ。治癒魔法も使えるから、怪我なんてすぐに治るし」
何故だか使ったこともない単語が頭からスラスラと出てくる。これが魔法を覚えたってことなんだろうか。
「ち、治癒魔法を!?治癒魔法って、本当にですか?」
「あ、ああ…」
美少女は勢いよく俺の手を握ってくる。あったかくて柔らかいのと同時に、また2つ柔らかいものが俺の手に当たっている。
「その…図々しいお願いだってことは重々分かってます。ですが…街の人を助けてあげてください!」
ー一刻も早く動かなければならない状況なんだろうけど、まだ立てない…いや、立ってるには立ってるんだよ…