悪役令状が来た~お父さん奮闘記~
いつも評価で合計20ptも取れたらガッツポーズしてるのに、なにこのpt……
ははーん
(* ̄ー ̄)分かったぞ、これは夢だな……
私はスヨー公爵家の当主ゴウツク・デ・スヨー
招かざる客が来たとの知らせを受け、どうやって懲らしめるか計略を練ってる最中である
「あなた……」
「お父様……」
妻のアイサイ・デ・スヨーと娘のシンソウ・デ・スヨーが心配そうに私を呼ぶ
「大丈夫だ私に任せなさい、お前を不幸にするような勅命など破り捨ててやるからな」
「お父様、私……私……」
「あなた……いざとなったら私が」
「馬鹿を言うな!お前にもシンソウにもそんな真似はけしてさせん!」
「あなた…」
そうだそんな真似はけしてさせない、たかが王子の恋の当て馬になど誰がさせるか!
トントン
「旦那様お連れしました」
執事が客を連れて来たようだ、さあ目に物見せてくれる
「……入れ」
入って来たのは帯剣こそしてないがフルプレートの男であった、大方顔は勿論体型でも個人を特定させない為だろう
「お初にお目に掛かります、私は王立学園恋愛支援課のオトゲーと申します、兜を脱がぬご無礼をお許し下さい、私の素性は王によって秘匿されてますが故に」
「よい許す、して何用だ?」
私は名乗る事すらせずに先を促す、もっとも此奴も偽名だろうがな、そしてここに来た理由など明白である
「この度はスヨー公爵家には名誉ある悪役令状が授与されました、国法に基づきスヨー公爵家の御息女シンソウ・デ・スヨー様には、悪役として半年後より王立学園に入学していただきます」
「断る!」
「これは勅命ですよ、殿下にお逆らいになるおつもりですか?」
動揺一つせずにオトゲーは語る、予想の範囲内とでも思ってるのだろう
なにが悪役令状だ、所詮は自由の無い王族がせめて学園の3年間だけでも楽しめるようにと作られた悪法ではないか!
許嫁との青春を盛り上げる為の悪役を強制させるという表向きの理由と、力を付けすぎた諸侯を追い落とすという裏の理由
今回もわが公爵家を疎ましく思う輩が画策したのだ、そんな事で愛娘を犠牲になど絶対にさせん
「第一シンソウには許嫁が居るのだぞ、そんな娘に例え役だろうが王子を横恋慕する悪役などやらせる事など出来ぬ」
「婚約を破棄すればよろしいではないですか、なにたったの3年です、卒業後改めて婚約し結婚すればいい」
「戦略結婚ならまだしも、シンソウと相手はお互い想ってる仲だ、そんな真似は出来ん!」
「たかが悪役を演じるのに、そこまで頑なに拒わなくとも」
「その悪役を演じた者の末路を知っていれば誰だろうと拒むわ!知らぬとは言わせぬぞ、生涯悪役のレッテルを貼られ社交界は疎か茶会にすら出れず貴族として死ぬということを!」
「なら如何致しますか?勅命に背いては最悪お家はお取り潰しですよ」
楽しくて仕方ないのであろう声がとても弾んでいる、ああ此奴は敵だな
「国法には娘である必要など書いて無かったはずだ、実際三代前の悪役は婦人が務めていた」
「おっしゃる通りです、恋の鞘当てになるならば年齢は問いません、逆に言うと恋愛対象にならない人間には御役は出来ませんが」
下卑た笑顔が見えるような声だ、全て予定通りなのだろう
「なら奥方様を悪役にしますか?」
「ふざけるな!アイサイを犠牲になど出来るか!」
「おやおや、あれも嫌これも嫌、ならどうなさるお積もりで?」
「私が悪役をする」
「は?」
「あなた…」
「おとう…さま……」
オトゲーが間の抜けた声をだす、これは予想外だったみたいだな、だがこれからだ
「……なにを、さっき申しましたが恋愛対象にならない人選は不可です」
「私がこの国最高の剣士であるのは知っておろう、だからか昔から男にも好かれてな……その気が欠片も無かった故に今まで相手にしなかったが、なに年若い王子なら私の魅力で堕としてみせよう」
「……るな……」
「ん?声が小さいぞ」
「ふざけるなと言っている!貴様はバカか!そのような事許されるわけがない!」
激昂して怒鳴るとは嬉しい誤算だ、これで此奴は終わりだろうが、敵に情けを掛ける気は更々無い
「この私…公爵家の当主を侮辱するとは良い度胸だ、今すぐ此奴を捕らえ監禁せよ!」
私の怒声に応じて部屋の外に待機していた兵がオトゲーを拘束する
「私は勅使だぞ、このような真似をして「黙れ!」」
見苦しく抵抗するオトゲーを一喝する
「爺、今すぐ城に行き王に事の顛末と、私が悪役をやると伝えよ」
「はっ」
執事が部屋を出るのを見てオトゲーは項垂れる
勅使と言えども公爵を罵倒する権利なと無い、そんなことが公になればそいつは終わる、地位も財産も、下手したら命も
絶望する公爵を見に来たつもりが自身が糾弾されるとは夢にも見ていなかったのであろう、そのまま素直に連れて行かれた
「あなた…」
「お父様…」
「もう大丈夫だ、これで時間は稼げた、そして時間さえあれば今回の首謀者を見つけ逆に追い詰める事も可能だ……そう終わったんだよ」
ヒシッ!
妻子に抱き付かれ私も抱き締める
今回の首謀者も当たりはついている、そいつを堕とすのが一手遅かっただけ、
そしてそれも私が悪役をやるなどと殿下を混乱させる事を言えば時間が稼げる、更に勅使という阿呆も幸運にも手札に入った
後はチェックメイトの駒を置くだけだ
執事が帰って来たのは夕方だった
「ただいま戻りました、御館様これを」
王城での報告もせずに書簡を渡す
「これは?」
「陛下からです……」
嫌な予感をいだきながら書簡を開き読む
《ゴウツク・デ・スヨーの悪役を許可する、全力でやるべし》
……妻子になんと説明しよう、どうやら私は盤面を読み間違えていたみたいだ……
王立学園の入学式に私は出席していた、講師として
講堂に集められた新入生とそれを見守る上級生や親族家人達、そんな中で彼らの前で学園長が長いスピーチをしている、今年は王子も入学してるとあって、気合いが入ってるようだ
「では特別講師を紹介させてもらいます、ゴウツク・デ・スヨー公爵閣下です」
忍耐が遠くへ旅立とうするのを必死で引き留めていると、学園長から声をかけられた
私は横柄に頷くと幻影魔法で漆黒の翼を作り、浮遊魔法で講堂の天井付近まで浮かび上がった
「数々(あまた)の試練(入学試験や面接)を乗り越え、よくぞたどり着いた新入生諸君よ!我こそは諸悪の根源にして恐怖の象徴たる今期の悪役令嬢である!!」
ザワ…ザワ…
私の悪役令嬢宣言によって、会場は喧騒に包まれた
(え?王子の婚約者役がなんで公爵閣下なんだ)
(まさか王子はその気が……)←王子から距離を取る男子生徒
(まさか王子にその気が……ポッ)←王子に近付く男子生徒
(LGBTを差別するなんて遅れてるわね)←興味津々な男子生徒
(王子様は受けなの?攻めなの?)←場違いな事を気にする女生徒
(滝涙)←入学する学園を間違えたと絶望してる女生徒
(( ゜д゜)ポカーン)←展開に付いていけない王子の婚約者
(プルプル)←羞恥と怒りで震える王子様(笑)
ざわめく会場を一別し、背中の幻影をはためかしながら王子の元へと舞い降りる
顔を染め震える王子の手を掴み急上昇!腰に手を回し抱き寄せるのも忘れない
「なななっ!」
突然の出来事に混乱する王子に、私は顔を近付けそっと呟いた
「さあ王子様、楽しい楽しい悪夢の始まりですよ」
キャアァァァァァァァァァァ!!
悲鳴のような歓声が構内を包み込む
地上の生徒達からは、連れ去られた王子が私に無理矢理口付けされたように見えた事だろう
生徒諸君よ喜びたまえ、これから三年、私という悪役令嬢でこの学園を刺激的に彩ってあげよう
一生忘れられない思い出をその胸に刻み込んであげよう
「ふははははははははははははは……ははっ」←王様に全力で挑めと言われて吹っ切れた公爵閣下
お読み頂きありがとうございますorz