第一話 ~転生~
普通の学校。普通の校庭。普通の空。普通の授業。普通の休み時間、普通の放課後。いや、この日は普通ではなかった。放課後、皆とわいわい話している学校の屋上。いつも通りの日常を送っていたはずが非日常のことが起きた。手すりが錆びていて、手をおいた時から落下が始まっている。あの手すりは今までなんともなかったのに。これって事故だよな。うん事故だ。俺は視界が青に染まるなかあることがだけ考えていた。
「これ保険おりるかな?」
そうして地面が迫ってきた。
目を開けるとそこは世界が変わり、見知らぬ場所、神殿のようなところの床に座っていた。目の前には椅子に座っている老人が一人。
「君は先ほど死んだよ。」
唐突に言われた死。俺はあれで死んだのかと思ったが、今はそんなことに驚いている場合ではない。死因はわかっている。そんなことではないと思うだろうが、今の俺には、気になることがあった。
「おや、あまり驚かないんだね。普通は少し驚くのに。」
「そういうものなのか?なら俺は当てはまらないな。ところであんたは神様か?それなら聞きたいことがあるんだが。」
「ああ、そうじゃ。わしは神様じゃ。聞きたいことがあるのなら何でも聞いて構わないぞ。」
俺は一つの疑問を口にした。
「あのあと俺以外の人には被害がなかったのか?」
この事がどうしても気にかかっていた。
「そのことなら心配は要らないぞ。お主以外は誰も傷ついておらん。」
あまりにも当たり前のように言ってくることに変な違和感を感じたが、ひとまず他の人が何もなくてよかった。すると
「他人に被害がなかったとはいえ君は死んでしまった。わしの力のなさを感じるよ。」
力のなさとはなんのことだろう。だが、死んでしまったのは事故のせいだったのに気を使ってくれる神様。
「いやあんたのせいではない。あれは不運な事故だったんだよ。」
この神様がいい人だったことに感動を受けていた。うんこの人はいい人だ。すると聞こえるか聞こえないかぐらいの声で飛んでもないことを口にした。
あのときハートのエースが出ていれば…
…は?
―今なんつったこのじいさん。
今までの違和感の点が線となりつつあった。
それを聞かれたと知らずにじいさんは
「どうした、そんなに固まって?」
少し怖かったが俺は聞いてみた。
「じいさん、俺はなんで死んだんだ?」
「それは事故で…」
「違うだろ。なんかいってないことあるだろ!」
「いや…特には」
あくまでしらを切るつもりだこのジジイ。
「ハートのエース。」
じいさんの肩がびくりと震えた。 確定だ。このジジイは今までの伏線を全部回収していきやがった。絵と数字をそろえるトランプのゲームは俺はひとつしか思いつかない。
「人の命使ってポーカーやってたろ!」
胸ぐらを掴みあげる俺に対し、恐怖からか少し涙目で反論してくる神。
「違うんじゃ。違うんじゃ。あれはわしは悪くない!あそこでスペードの5が来るのが悪いんじゃ!」
俺は胸ぐらを掴みながら問い詰める。
「逆ギレしてんじゃねぇ!おかしいと思ってたんだよ。昨日まで何もなかった手すりが急に壊れたんだぞ!あれは神の力だったっていうことか!」
「わしも悪いことをしたと思っている。だがこれだけはわかってほしい。わしはやりたくてやったわけじゃないんじゃ。あれには拒否権がなかった。」
俺はやっと掴んでいた手を離し、床に座り直しながら、疑問に思ったことを口にする。
「そもそもなんで人の命をかけて賭けをやっていたんだ?そしてなぜ拒否権が無いんだ?あんた神だろ。」
神様は少し躊躇うような様子を見せながらも、椅子に座り、話し始めた。
「この世には、君の住んでいた世界とは別の世界がいくつかある。その数だけ神もおる。神の中でも位の違いというものが存在してな、わしはそこまで位の高い神ではないのだよ。また様々な世界があるので、情報を集めるのが大変なことだ。だから神達が集う会合が定期的にあるのだが、その中でも一番位の高い神に持ちかけられたんじゃ。それでわしは負けてしまった。」
「もういいよ。」
俺はだいたいのことを理解した。
―一番偉い神が賭けを始めたこと
―その結果俺が死んでしまったこと
そんな俺の様子を見ていたジジイが、
「その神のことをどう思う?」
唐突に言われ、返答に少し悩んだがやはり、
「まあ、腹立たしいかな。そいつのせいで死んだも当然だからな。」
その返答を待っていたかのように、
「そうだろう。そう思うだろう。ところで君がかわいそうという意見が神達の間でも出ていてな。だからどこか違う世界に転生させようという話になったんじゃ。それでどこがいいか悩んでいたんじゃが、そんなにイライラしているんならちょうどいいだろう。」
俺はそこまで聞いて何をこのジジイが言いたいのか悟った。悟ってしまった。
「おい、俺はそこまでイライラしていないぞ。というかあんたは俺に俺を殺した神の世界に行けというのか?」
「お、さっしがいいのぉ。」
「やだわ!何でわざわざその世界にいかなくちゃ行けないんだ!」
俺は外に出ていこうとした。
「おいおいどこへ行く。そもそも、もう転生の準備をしてしまったからもう遅いぞ。」
「速!?何でこんなときだけ年寄りは行動が速いんだよ!だいたいそれ今決まったわけではないだろ!」
「それはおいといてだな、」
「おいとくな!分かりやすい小ボケはやめろ!」
俺はすかさずつっこむ。
「まあ、決まったことは仕方ない。腹をくくれ。」
俺の対応にもあまり難とせずに普通のに返してくる神。そこはさすが神ということか。俺は落ち着きを取り戻しながら、仕方なく腹をくくることにした。 ため息を尽きながら、
「そこはどんな世界なんだ?」
「魔法もあるが、主なものは剣じゃな。この二つから聞いて思い付くとは思うがモンスターもおる。気をつけることじゃな。」
「なんて面倒な世界に住んでいるんだよ、この神様は。で、言葉とかは大丈夫なのか?」
「そこはわしが何とかする。それと少しじゃが身体能力もおげておく。ところでお主の名前はなんじゃったかな。」
こいつは名前も知らずに、人の命を賭けていたのかとあきれながら、
「俺は谷 山都。今年で16歳だな。」
「名前ダ…」
「黙れ。」
俺は最後までセリフを言わせなかった。言いたいことはもうわかっている。谷なのに山なのか。もう散々言われたことだ。ダサいと。俺はそうは思わないんだけど…
「なら名前を変えていったらよい。向こうの世界では名字はなく名前だけだからな。」
おっ好都合だ。
「そうだなあ、何かいい案はあるか?」
「ならこれはどうじゃ。川 海斗。」
「何でだよ!変な感じ同じじゃないか!そもそも名前だけって言ったよな。」
俺は笑いをこらえながら言ってくる神を睨みながら考える。
「ミカルゲなんてどうだ。かっこいいし強そうだろう。」
「お主はなぜダサい名前しか思い付かないんじゃ。少し頭使え。」
「うるせぇ!そもそも今の名前は俺が考えたわけじゃねぇ!」
考えても思い付かない。神が言ってたやつを借りよう。
「じゃあ、カイトをもらうよ。漢字で書くとしたら海都 。自分の名前も入ってるからいいだろ。」
「向こうには漢字がないが?」
「いいんだよ!雰囲気だけでも!」
顔を赤くしながら言う。確実に一本取られた。
「じゃ転送の準備をするぞ。」
俺の下に魔方陣が出現する。
「本当に大丈夫なのかこれ?なんかアドバイスくれよ。」
「全く意気地無しだな。あっ、そういえば、こういう神殿のようなところが向こうの世界にもあるからそこへ向かえ。そこに神もいるはずだからな。」
「アドバイスじゃないじゃないか。というかすげえ大事なこといい忘れていただろ!」
俺の下の魔方陣の光が強くなっていく。
「おい、スルーして早く転送しようとするな!ジジイ!話を聞け!」
「ああ、うるさいうるさい。はい、行ってらっしゃい。」
俺は完全に光に包まれた。
「あっ、おいてめえ!」
転送の中俺はあることに気がついた。
―俺、いつから神をジジイって言ってたんだろう?
俺は遂に神殿から姿を消した。
この作品、私、九条さゆとの一作目となります。よろしければ、コメントをお願いします。