冬の魔法
冬の陽だまりには小さな船ができている。
広いお庭の一角の、光を集めた小さな場所。
船長さんの特等席。
魔法をかけてさあ、出発。
僕は勢いよく飛び込んで、今日も大航海を始める。
プリムラのプランターを飛び越えて。
葉牡丹のプランターをまたいでまたいで。
ベンジャミンの鉢の裏からひょっこり、こんにちは。
ミミズといっしょに土を泳いで。
背の高い草のトンネルを駆け抜ける。
忍び込んだ野良猫を追いかけ。
ヤドリギをすいすい登る。
僕の船はどこでも行けるよ。
敵を見つけた船長はシャベルを勢いよく引き抜く。
冬の乾いた空気をシャベルが切り裂く。
君もおいでよ、大航海に連れていこう!
お部屋の時計から3時のハトがとびでてくる。
僕はシャベルを放り投げ、靴を脱ぎ捨て手を洗う。
船長さんはおやつの時間で魔法がとけてしまうから。