4 ねこ
「にゃーお」
「にゃ、にゃあ?」
「にゃぉー、ねこの鳴き声だよぉー!」
……すごく、めんどうくさそうです。
キャンバスさんらしき方は、胸が大きくて、灰色っぽい髪の毛をしています。三角形のかわいい耳も、灰色です。わたしもかわいい耳がほしいです。
「キャンバスさんですか?」
「そうだよぉー。獣人のフェリス・キャンバスだよぉぉ! 怖くないよぉ!」
キャンバスさんは、小さめの三角耳をピコピコと動かします。
見た感じですと、ねこさんみたいです。
長いふわふわした灰色っぽい髪が左眼にかかっています。
「なんだか、かっこいい名前ですね!」
「あはー、でも、お絵かきは苦手だよぉ」
「はぇ……」
メディアが顔をのぞかせました。
「キャンバスはね、火のマホウが使えるんだよ!」
「はぁ」
「あれ? びっくりしないの? あ、そっか! こずえちゃんも火のマホウが使えるんだったよね!」
「へぇ~、やっぱりヒトだよぉ~! 会いたかったよぉ~!」
「うっ」
わたしはキャンバスさんに抱き疲れました。
力が強くて、苦しいです。身体がミシミシといってます。
「あ……あの、キャンバスさん……強いです」
「キャンバスって呼んでだよぉ」
キャンバスさんはようやく離してくれました。
「はい、キャンバスさん。わたしは麦野梢っていいます」
「ほぉ、むぎのこずえさんっていうの?」
「こずえ、でいいです」
「こずえさんね。よろしくだよぉ! ヒトに会うのは、はじめてで感動だよぉ!」
わたしはキャンバスさんと握手しました。
やっぱり力が強いです。手がびりびりします。
獣人はみんな力持ちなんでしょうかね……。
「ま、ゆっくり、お茶でもしーましょぉー!」
見慣れた湯のみが、見慣れた木製のテーブルに3つ置かれます。
これまた見慣れた緑茶が出てきました。
「はい、どぉーぞ」
「わぁ、これ、緑茶、ですよね!」
「そうだよぉ。ヒトの本に作りかたが書いてあったよぉ」
「ヒトの本ですか?」
「そうだよぉ。それはいいから、冷めないうちに、呑んでみてほしいだよぉ!」
「はい。いただきます!」
「いただきます!」
わたしが手を合わせると、メディアがそれとなくマネをしました。
「うっ! あっつい1」
「気をつけて呑むだぁよ。火で沸かしてあるからねぇ」
わたしは茶葉の仄かな香りを堪能してから、お茶をすすります。
しばらく談笑してから、わたし達は、崖のほうへと向かいました。
「ここを、おりるときはだねぇ」
「ジャンプ!」
「しないよぉ。下手したら、死んじゃうよぉ……。左手に、抜け道があるから、そこを通るといいよぉ。ゆるーい、一本道の洞窟になってるよぉ」
「わかりました。キャンバスさん、いろいろと、ありがとうございます!」
「いいよぉ。気をつけてねぇ!」
「お茶、おいしかった! いってくるね、キャンバス!」
わたしとメディアは、抜け道のほうへと向かっていきました。
「ここかなぁ?」
メディアが草をかきわけると、小さな洞穴が見えました。
洞窟は、上部がところどころ割れていて、草花の隙間から光が差しています。
思ったより、急勾配です……。
「はぁ、はぁ……」
私は壁に手をついて歩きます。
メディアの耳が、へにゃり、と倒れました。
「こずえちゃん、平気? ちょっと、休む? ボクが抱っこする?」
「いえ、平気です。行きましょう」
ちょっと胸が苦しいですが、がんばります!