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1 はじまり
わたしは麦野梢です。中学1年生の女の子です。
季節は夏、ブラウスの上に紺のベスト、タータンチェックのスカート姿です。
少し長くなった黒髪は、あたまの後ろで一本に結んであります。
わたしは教室の掃除をしていました。
ほうきで丁寧に塵をはいていきます。
小さなほうきで、教室後ろの戸棚の塵もきれいにします。
なんでしょう、これ?
戸棚の隅に、紅色の表紙をした本が引っかかっています。
手を伸ばしますが、うまく取れません。
わたしはほうきの柄を用いて、本を掻き出しました。
誰かの忘れ物でしょうか?
ちょっと気になりましたので、本を開いてみます。
「うわぁ!」
中からたくさんの文字が飛び出してきました。
本の見開きには不思議な文様が浮かび上がります。
眩い光に包まれて、わたしの身体は浮かび上がりました。
「ええっ、何、これ!」
わたしは大きな鐘の音を聴きました。
視界がぱっと明るくなり、眩しくて、一瞬目を瞑ります。