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クールな勇者とやさしい魔王

【クールな勇者とやさしい魔王3】新規雇用の始め方

作者: 朔夜

※単独でも読める物を目標に書いていますが、シリーズを通して読んで頂けたら嬉しいです。

 シリーズURL⇒http://ncode.syosetu.com/s6551d/


いつも通りノリと勢いだけで書いてます!反省はしていません!

そして本作では二人の今までとは違った面をお見せできたと思っております。

なにはともあれ、拙作が少しでも楽しんで頂ける事を願ってます。

「驚いた。

 ボクの前では残念なのに、ああいった場ではできる人って感じなんだね」


「ふっふ〜ん。どうじゃ?見直したじゃろ?」


「うん。見直した」


「っ!?ど、どうした?何か変な物でも食べたのか?医者を呼ぶか?」


「失礼だねキミは」


「じゃってな?

 いつも毒しか言わんオヌシが褒めたんじゃよ?

 何かあると思っても仕方ないないじゃろ?」


「あ〜。それはまぁ、ゴメン。

 思った事が口に出やすいんだ」


「謝ったじゃと!?な、なんじゃオヌシは!?偽物か?偽物なのか?」


「そこまで動揺しなくてもいいじゃないか。

 ボクだって傷つくんだよ?」


「あ、あぁ、スマン。動揺し過ぎた様じゃ」


「はぁ・・・。もういいよ。

 それで?面接が終わった訳だけど誰かめぼしい人はいた?」


「それじゃ!」


「どれさ?」


「『人型もしくは人型に変化できる者に限る』と書いたはずじゃ!

 でなければ相手を無闇に威圧してしまうからの。

 なのに、なのにどうしてサーペントやらマンドラゴラやらが来るんじゃ!?」


「識字率は?」


「なんじゃ突然」


「いいから」


「なんか納得いかんな・・・。まぁよい。

 全国民が読み書きできる程度じゃが?」


「はあ!?」


「な、なんじゃ?マズイのか?じゃがな?

 口頭だと確認する時大変じゃろ?じゃから初めは上層部だけだったんじゃよ?

 じゃが、成人してから新しく憶えるのは大変じゃろ?

 ならいっそ子供の頃から教えてしまえと思ってな?」


「ありえない・・・」


「そ、そんなにマズイのか?

 ついでに共通語や歴史を教えられて便利なんじゃよ?」


「ちょっと待って。共通語?」


「ん?んむ。魔族と一括りに言っても多種多様じゃからな。

 各々の種族が使う言語もあるが、それでは意思疎通ができん。

 じゃからこう、それとは別に皆がわかる言語があればと思っての?」


「それはいつから?」


「ん〜。先代が崩御されてからじゃから・・・

 そうじゃな、人族の寿命だと大体四世代代わるくらいじゃ」


「そんなに前から・・・」


「うむ。

 先代は力で従えておったが、残念ながらワシにはそこまでの力はない。

 ならば頭を使うしかあるまいて」


「あっけらかんと・・・」


「なんじゃ?やっぱりマズイのか?

 国民には意思疎通が楽になったと好評なんじゃが・・・」


「いいかい?人族の識字率は限りなく低い。

 読み書きなんてのは特権階級が独占している。

 まして学ぶ自由なんてありはしない。

 キミがどれだけ革新的な事をしていたか理解してもらえるかな?」


「そんなにスゴイ事かの?

 ワシは楽がしたかっただけなのじゃが・・・」


「キミはもっと自分を知った方がいいね」


「うむぅ・・・

 なにやら釈然とせぬがオヌシの言う事じゃ。そうなのであろう」


「そうなの。

 それで?話を戻すけどいい人材はいた?」


「そうじゃのぅ・・・

 ほれ、サキュバスのアヤツはどうじゃ?」


「却下」


「なぜじゃ?

 アヤツならば人型じゃし女の武器とやらで有利にできるじゃろ?」


「そうだけど、彼女は諜報員として使った方がいいよ。

 その一環として外務官もできる様にするなら有りじゃないかな?」


「ふむ。それもそうじゃな。

 ではライオネルの彼はどうじゃろう?

 アヤツなら力もそこそこあるから自衛もできるじゃろ」


「悪くはないと思うけど文官と武官は別けた方がいいんじゃないかな?」


「なぜじゃ?護衛官を使わずに済むなら経費も安くなるのじゃが?」


「人族でもそうなんだけど、魔族にも派閥ってあるよね?」


「嘆かわしい事にの」


「ならなおさらかな。

 みんな職務に誇りを持ってるから領分を侵されるのは嫌うんじゃないかな?

 そんな中で兼任なんてしたら板挟みになって動けなくなる」


「確かにのぅ。

 ではオークのアレはどうじゃ?」


「彼は論外だね」


「なぜじゃ?

 武官が多いオークだがアヤツは知恵もあり、頭の回転も早く良物件と思うが?」


「だって・・・・・から」


「ん?すまんが聞き取れんかった。

 もう一度言ってくれんか?」


「はぁ・・・。彼の目線に気づいてた?

 ずっとボクの身体、特に胸の辺りを見てたんだよ?」


「なんじゃと!?」


「それに彼、人族を蔑視してたよ」


「なんと・・・

 そんな者には任せられんな。

 それならばオヌシは誰を推す?」


「そうだなぁ・・・

 スライムの彼女がいいんじゃないかな?」


「んむ?スライムなぞ来ておったか?」


「来てたよ。

 最初っから最後まで人型に形状変化してたけど」


「おお!アヤツか!

 ・・・じゃが、スライムじゃぞ?」


「だからこそだよ」


「どういう事じゃ?」


「はっきり言ってスライムは弱い。

 それこそ駆け出しの冒険者にさえ劣る程だ。

 けど、だからこそ彼等は知恵を絞り生き残って来た。

 形状変化による擬態もその知恵の一つだね」


「なるほど?」


「それに彼等は自分達が弱者である事を忘れない。

 だから慎重にもなるし、領分を越えて独断先行する事も無い。

 なにより、彼等を起用する事でキミの評判はもっと良くなるよ?」


「んん?なぜそうなる?」


「魔族内のヒエラルキーでもスライムは低い所にいるでしょ?」


「そうじゃな。最下層と言える程じゃ」


「そんな存在を取り立ててあげると、力だけが出世の条件じゃないと広められる。

 能力さえあれば取り立てられる事を知った弱い魔族はどうすると思う?」


「自分も続こうと見合った研鑽に励むであろうな」


「うん。魔族は勤勉だからボクもそうなると思う。

 そうなると国としての地力が上がるよね?」


「じゃな」


「そしたら、大国とも対等になれる程の国力を蓄えられる様になるよ」


「なんじゃと!?

 それはつまり、戦争などせずともよい未来があると言うのか!」


「もちろん。

 武力はわかりやすい抑止力だけど、知力でも同じ事ができるんだ」


「なるほどのぅ・・・」


「キミの事だから勘違いしてないと思うけど一応伝えておくよ。

 武力と知力。この両輪が揃ってこそ強い抑止力になる。

 どちらか一方だけが強ければ良いという物ではないんだ。

 まぁ、一朝一夕でどうこうできる話でもないけど憶えておいて」


「んむ。わかった。侵す事なく、侵される事もない。

 それこそワシの理想とする国じゃ。

 オヌシの言う様に今後は文官育成にも力を入れよう」


「あぁ、あと蛇足だけど」


「なんじゃ?」


「スライムの雇用は弱者救済のいい宣伝になるよ。

 キミの目指す上下の身分差がない国を作るなら、効果的なんじゃないかな?」


「それは良いな!なれば文官は力の弱い種族で固めるべきか?

 あいた!?いや痛くはないのだが、そう気安く魔王の頭を叩くでない!」


「キミの悪い癖が出てたからね」


「なんじゃと?」


「いいかい?大事なのはバランスだよ。一方に偏るともう一方が不満を持つ。

 すぐにどうこう、という事にはならないかもしれない。

 けどいずれ限界が来る。そうなってからじゃ遅いんだ。

 今までは武官よりの政治でも、騒動に発展する事は稀だった。

 けどそれは、キミの人徳と彼等の諦めのおかげなんだ。

 そんな彼等は自分達にも道はあると知ってしまう。

 そうしたらもう、今までの様に諦めるなんて事できなくなる。

 そうなってしまったら、後はもうわかるよね?」


「うむ。オヌシの言いたい事は理解した。

 それだけは何としても避けねばならん」


「うん。まぁ、ボクはそんな未来の心配なんてしてないけどね」


「なぜじゃ?」


「だって、キミは優しいじゃないか」


「な!?」


「キミは民に愛されているよ。

 例え力がなくても。例え王じゃ無くなったとしても。

 例え理不尽な事を言われたとしても、彼等は喜んで従ってくれる。

 それが戦争をする事だとしても、だ。

 大丈夫。こんなボクだって、人としてキミに惹かれてる。

 ならボクよりも長い付き合いの彼等が嫌っている筈がない。

 それにさ。好きな人にはいつだって笑顔でいてほしいじゃないか。

 その為ならどんな無茶だってやってみせるよ。

 だからキミの思う道を安心して進むといい。

 大丈夫。キミが間違ったらいつだってボクが止めてあげるから」


「うぅ・・・ぐすっ!」


「なんだい?泣いているのかい?」


「な、泣いてなどおらぬわ!たわけめ!!

 魔王じゃぞ!偉いんじゃぞ!

 そんな心配なぞ、はなっからしておらぬわ!」


「うん」


「オ、オヌシこそ要らぬ心配なぞするでない!

 なに、ワシは友の為ならば何だってやれるんじゃ。

 じゃから、じゃからの?

 何かあったらすぐワシに言うんじゃぞ?」


「ありがとう」


「んむ!」


「けどそれはダメだよ」


「なぜじゃ!!」


「いいかい。キミは個人である前に魔王なんだ。

 ボクなんかを優先してちゃいけない。

 一番に考えなくちゃいけないのは国の事、つまり民の事だ。

 それを蔑ろにするような事あってはならないんだよ」


「じゃが!オヌシが陰でなんて言われてるのか知っておろう!」


「もちろん」


「であれば!」


「いいかい。これはボクの問題であってキミの問題じゃない。

 ボクなら大丈夫。キミが憤ってくれてるだけで十分だよ。

 だからどうかお願いだ。

 いつまでも変わらず他人の為に憤れる人であり続けてくれないかな?」


「・・・オヌシがそこまで言うなら今は引き下がろう。

 じゃがな!納得したわけではないぞ!」


「ありがとう。

 キミのそんな優しい所に惹かれるんだろうね」


「な、なんじゃ突然!」


「ん?急に赤くなってどうしたの?

 民がキミを慕ってるって話がそんなに嬉しかった?」


「っ!?〜〜〜〜〜〜っ!!

 ええい!ワシは残りの政務を片付けに行く!

 オヌシはいつもの様に好きにしておれ!」


「あ!なんか慌ててたけど、そこまで政務が溜まってたのかな?

 ・・・・・・あぁ、そういう事か。

 まったく。この程度で狼狽えてどうするのさ。

 ホント、可愛い魔王様だねキミは・・・」

いかがでしたでしょうか?

今までは無能っぷりを発揮していた魔王様。

ですが、やればできる子なんです!

ただ勇者が斜め上すぎただけなんです!

今までは毒を吐き続けた勇者様。

ですが、それだけではないんです!

ただ自分に正直なだけなんです!


とまぁ、そんな事は置いておいて、拙作が少しでも読者様に何かを感じさせる事ができていましたら幸いです。

それでは、また拙作を読んで頂ける事を願いつつ、これにて一度筆を置かせていただきます。

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[一言] 良かった! 知恵はあるが知識が無く、けれども下を想うこころは人一倍あるのから慕われている魔王。 仕方無しに討伐に来たが、話している内にこの魔王に足りないのは参謀と気づきアドバイスを送る勇者。…
[良い点] テンポもよくキャラもたっていて暇せず最後まで読めました。 [気になる点] あと少し個性がでると本当に良いものに仕上がるとおもいます。 よくも悪くもテンプレ的なのでそこから崩れて良くなるか悪…
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