第4話 : 新たな攻略対象、うはっ! イケメン!
前回のあらすじ。
怪人「僕、女の子好き」
口がくぱぁ。
あっ、同人誌で見たことある! 口から触手が出てきてエロいことをするんだ!
…… なんか違うぽい。
口をくぱぁしたピエロが迫る。
もうあかんわ。
あー、こんなことになるんだったら太ももにしゃぶりつけば良かった。
諦めかけたその時。
パンっ!
破裂音と一緒にピエロの目が紙吹雪と飛び出る。
「おほほほっ! 驚いた?!」
「……ほぇ」
ふぇぇ……よくわからないよぉ…
一つ分かるのは、さっきの『パンっ!』て音で少し漏らしたことだ。
「いやー、ごめんごめん。僕、人を驚かせるのが好きでさ。本当にごめん」
そう言いながらピエロの体のあちらこちらから行き良いよく蒸気が吹き出し、あたり一面を白く変えた。
蒸気の煙幕から聞こえる機械音。
それが恐怖をあおり、とっさに身をかがめる。
だが一定時間たつと蒸気は晴れて、色は薄いが汚部屋が見えてくる。
その汚部屋の中に先ほどはなかった見慣れない靴が。
なんぞこれ。
「顔を上げて、もう怪人はいないから。僕が退治したからさ、お姫様。なんつって」
顔を上げて見る。
モヤ程度の蒸気も晴れて、スッキリ綺麗に相手の顔が見えた。
太陽に照らされて、眩しいくらいに輝くブロンド。
片方の口だけつり上がったイタズラな笑顔がエッセンスを利かす端正な顔立ち。
うわ……イケメン……
「本当にごめんね、落ち着いて……はいるね。いやー、強いね」
「あっ、はい」
だから「あっ、はい」って何やねん私!
ジオンの水中MS《○ッガイ》みたいに言いやがってよぉ!
「うーん、唖然としてる感じかな?」
「へ、へぃ」
「あぁーん、緊張はといてよ。僕は普通の人間だよ。怪物や変態じゃぁないよ」
そんな説得力の欠片もないこと言われても……特に変態の部分。
そう思っていると、変態イケメンはポケットから紙を出して私に見せてきた。
紙には何やら小難しいこたが書いてあり、理解するのに少しかかった。
え、あぁ、理解できないのに理解するのに時間がかかったんだ。
「……うん?」
「要するに、ここの学生であることを証明する証だよ」
「ほぇー」
あっー、なるほどね。
じゃあこれに書いてある《ジル・ハース》この人の名前か……
ん? ジル・ハース?
「ジル……ハースさん?」
「うん、そうだけど、そんなに改まらなくてもいいよ。ただ先輩ってだけだしね」
うぉぉぉっ! マジか!
攻略対象のジルさんやん!!
ジル・ハース。ファンの愛称は汁。
同じ学校の先輩で8年生の男子学生。
学校は専門学科入れて最大9年制だから留年しまくっている訳じゃないぞ。
イタズラ好きで人が驚いていたり笑っていたりするのが好きな人。
魔法とロボットの腕が良く、数度大会で入賞するほど。
以上が私が知る攻略wikiの情報。
私はゲーム攻略中に死んでしまったので、この人はサイトで知った程度なのだ。
あとしいて知っていることといえば、ジル派のリア友が
『ジルきゅんをイタズラして出た汁をハスハスしたいおwww』
て言ってたくらいか……
しかし攻略対象だから何としてでも囲みたいな……
でも攻略したことが無いし、どうすりゃいいんだろう。
うーん……
「あー、そうだ。お嬢さん」
「!」
ジルさんが話しかけてきた!
くっ、まだ攻略方を考えてないのに!!
チクショ! ウォォォ! 閃け! 乙女ゲーをやりまくった私の脳みそ!!
テンプレ選択肢! 友人の妄想! 恋愛小説!
全てから導き出される答えは!
これだ!!
「わ、私、お嬢さんじゃなくて……」
「おっと、お姫様だったかな?」
「あっ、いえ、そういうことじゃなくててまふね……」
噛みまくった。
「それじゃあ、お姫様」
「いや、そうじゃなくてですね。名前でお願いしたいんですよけど……」
「僕、奥さんか彼女しか名前で呼ばない主義なんだ」
さいですか……
でも乙女ゲーム脳的に考えてですね……
「それで、Mrs.フレデリカ」
(なんか違うな)
「ははっ、流石にMrs.じゃないか。Ms.フレデリカ」
いや、「Mrs.」とか「Ms.」とか「○○さん」そういうのじゃなく、普通に「フレデリカ」って言ってくれないかね。
それが一番破壊力あるんだけどね。
なんどもそれで妄想して興奮してるから証明済じゃい。
「それで、Ms.フレデリカ。ここに入る前、妖精と来たでしょ? 迷ったから案内するためだなんだ言って」
「え、ええ、ありますた……ました」
階段で会った 鉄板の妖精のことか。そう言えばあれなんだったんだろ?
(噛んだことは気にしない)
「窓を見て、あっちの建物みえる?」
そう言いながら、ジルさんは窓の外から森に隠れてうっすら見える建物を指差す。
はー、あんな所にあんなのあったんだ。
「あれが本校舎」
「へー、本校舎……え?」
まさか……ここ違う?