第1話 : 何となくの紹介と攻略対象の執事さん
改めましてこんにちは。
私は元日本人で元ゲーマーでキモオタな女子高生、そして現在は主人公のフレデリカ・ルイス。14歳のとても可愛い貴族のお嬢様だ。
顔は可愛い系統、髪は栗毛。
胸はペッタンk……げふん、スレンダーで思春期の少女らしいちゃらしい体型。
ゲーム内での国、ウグルセ国の貴族で、訳あって使用人以外の家族がいない一人暮らし。
なぜ? 知らんな。多分、恋愛ものでよくあるお家イベントをやりやすくするためやろ?
何?! 転生したんだからそこらへん分かるだろって? うるせ! 一昨日に転生したばっかじゃい!
コンコンコン
突如、私の部屋に3回のノックが響く。そしてほんと少しだけ扉が開いた。
「お嬢様、起きてらっしゃいますか?」
なんだ、執事のフランシスさんか。
「はい、先ほど起きました」
とりあえず応える。
お嬢様口調はとりあえずゲームやらアニメやらで仕入れたのでしのぐ。
元の喋り方じゃあとてもじゃないけどお嬢様じゃないからね。
「そうでしたか、早速ですが、朝食は召し上がりますか?」
ご飯か……昨日の食べた感じでは美味しかったから食べよっかな。てか楽しみ。
「た、食べます」
「それは良かったです。出来立てのお料理をお嬢様に召し上がっていただけますとコックが喜びますよ」
まあ、口がお上手。
「お嬢様、食堂へとエスコートさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はーい、今いきます」
ちなみに食堂までは少し遠い。
ぜんぜん屋敷の中を知らない私からしたらエスコートはなかなかありがたい。
昨日、初めての朝食で迷って着いた時には昼を食べてたのはナイショ……
◆
食堂までの道中はなかなか楽しかった。
興味をそそられる西洋鎧が並ぶ廊下。
お高そうな広間。広いな、野球できるんじゃねえかな?
そして、フランシスさんとの小粋な会話。
流石はこのゲームの人気キャラ。
執事、フランシス。
主人公のフレデリカ(私)よりも年が少しだけ上な18のバトラー。攻略対象の1人。
黒髪でにこやかな顔。この二点に加えて落ち着いた声と喋りのせいで、ネットリとしたエロい気持ちになる……らしい。ネットの掲示板で書いてあった。
まあ、分からんでもないが、私はどちらかと言えばとても大人びた印象がある。
18でバトラーになっただけあって18歳とは思えないテキパキとした仕事っぷりと堂々とした態度から来る佇まい。
うん、エロくはないが、分からなくはない。凄まじい包容力を感じる。
食堂の席に着いた。
するとフランシスさんが屈み込み、 サッと足にナプキン(食事に使う方だぞ)をかけてくれた。
「ありがとうございます、フランシスさん」
「いえいえ、そう言っていただけると光栄です」
そう言いながら、フランシスさんは私の顔を見上げた。
その顔は眩しすぎるくらいの笑顔で、少したじろいでしまう。
「どうかなさいましたか? お嬢様」
フランシスさんが聴いてきた。
やべ、比喩じゃなくてマジでたじろいだぜ。
心配してる! なんて目だ! 吸い込まれそうだ! 不思議と罪悪感が湧いてくる!
な、なにかを言って誤魔化さねば……胸が痛い! 早くせねば!!
「だ、だいじょうぶ……です……ただ寝ぼけてて」
うわ……クラスのイケてる男子から話しかけられた時くらいどもってるよ……落ち着け落ち着け
「心配なさらずに」
言えた!
フランシスさんは「そうですか」とは言ったが、眉を寄せてなんか納得してはいないようだった。
うん、確実に納得してないな。こっちの顔をいつまでも見てくる。
違和感あるよね?! ごめんなさい、私はお嬢様じゃなくて昨日付けで転生したゲーオタなんです……
うーむ、この顔、この目、じつに心をえぐられる。
と、とりあえず目線を下げて直撃をやめねば……
そう思い、少し頭ごと目線を下げる。
だが、よりヤバいものが目に飛んできた。
それは屈んだせいで布が張って浮き出た太ももだ。たくましい筋肉に柔らかい肉がついたムチムチの太もも、今にも布を破りそうなほどだ。
このムチムチ、不思議とムチムチを枕にしたいと衝動が湧いてくる。
枕にして笑顔でナデナデしてもらいたい。
やべぇ、想像しただけでヨダレが……おへへっ
も、妄想が止まらない。顔が勝手ににやけるのが分かる。
私、キモくない? 大丈夫だよね? 見えてないよね、だいぶうつむいてるし。
にやけてグフグフなんて言ってるなんてヤバいよね?
ヤベェ、止まんない。見れば見るほどいかんのことを考えてしまう。
こ、これがネットリエロス……
ム、ムチムチ……
あかん! ここでムチムチを堪能すると執事ルートで固定されてしまう!
そう、元の世界でみたゲームではどれかの攻略対象と一歩進んだ関係になるとルートが固定されてしまうのだ!
そうだ、私が目指すのはあくまでも逆ハーレム!
ムチムチを堪能するのはそれからでも遅くはない!
だから今は我慢我慢……
ム、ムチ……
ムチムチッ!!
「お嬢様……」
「おふぅ!」
驚いていつの間にか前に出していた手を引く。
フランシスさんがまた声をかけてきたようだ。
その声はとても心配そうで、何とも不思議なエロい気分になる。
「咳き込んでいるようですが……やはりお身体がすぐれないのですか?」
すんません、グフグフ言ってるのは咳じゃなくてキモオタが妄想でニタニタしてるだけなんです……
◆
危なかった、早くも逆ハーレムの夢が崩壊するところだった。
これからは気をつけねば……
あっ、ご飯美味しかったです。