第二幕 第三者の男3
その夜、親友と幼馴染の両方から携帯にメッセージが送られてきた。
from夜野朝日
《今日は悪い。明日は狩りにいくぞー。装備整えとけよ》19:49
放課後のことなどおくびにださずに、そんな言葉を送ってきた。俺が何も知らぬと思ったか。しかし実際に、お前だけには……と打ち明けられたところで、どう返しようもない。それよりこの好機を逃すべからず。お前が言わぬなら俺も言わぬ。勝手に彼女と結ばれてやるさ、と当時の伝道師は自分勝手にやさぐれる。恋愛は友情に優先する。こちらもそちらもお互いの気持ちは知る由もないのだから、自由にやろう。そういうことではないと知りながら、親友が打ち明けてくれない寂しさを感じたのは、恋の伝道師がまだまだ未熟な証拠であった。
片桐上ノ助は返す。
《おけおけ。3回やられたら現実でもKILL YOUですから》19:50
from夕闇明美
《おす。元気にしとるかね。》21:01
《元気にしとるよ。あらやだ、今日も会ったばかりじゃあないデスか、おばあちゃん》21:16
《ああ、そういえばエロイこと考えていましたねえ》21:22
《考えてないわ!》21:22
《あの顔はエロかった》21:23
《まあ、俺ほどになると顔面からもフェロモンがあふれ出してしまいますから。魅了させるのも仕方ないですから》21:25
《気持ち悪いな》21:25
《自分で言っててそう思った》21:26
《弁解しないところはよし。そのままエロイと認めてしまえ。りぴーとあふたみー。『ジョーはえっちい』》21:27
《りぴーとあふたみー。ジョーは紳士》21:28
《頑なか!》21:28
・・・
from夕闇明美
《ねえ、聞いていい?》22:01
《ええよ。なんじゃらほい?》22:06
《やっぱいいわ》21:08
《なんやねん》21:09
《明日遊べる?》21:09
《遊べる》21:10
《じゃあ、10時に小田野駅に》21:11
《一緒には行かんの?》21:13
《まあ、そこは雰囲気よ》21:13
《まあええよ。じゃあその時間に。おやすみ》21:14
《ん。おやすみ》21:15
to夜野朝日
《明日遊べんくなったわ。スマソ》21:17
from夜野朝日
《KILL YOUデスヨ》21:35
諸君、恋とは戦争だ。相手を出し抜くためにどんな策謀をも尽くさなければならない。麗しい友愛精神の下で産み出されるものは、鳩時計だけだ。男同士で手を取り合った仮初めの平和の象徴なぞ手に入れたところで、彼女が手に入るわけでもない。
そうして、作戦参謀は何度も布団の中で寝返りを打って、その夜が明けた。