第一話 選ばれし存在、俺。
どうやら俺は選ばれし存在らしい。
なぜかって?
まあ、聞けよ。
俺は俗に言う転生ってやつをした。
俺の想像する転生というのは、剣と魔法の世界で俺TUEEEEでハーレムでケモミミで美少女で…って代物なんだが…
まあ、あながち今の状況と大きく違ってはいない。
だが…どうやら俺は、『乙女ゲーム』に転生したらしい。
しかも性別は女だ。
しかし、憧れの剣と魔法の世界、ファンタジーに転生することができたことは幸いだ。
しかも主人公にな。
フッ…まあ、俺という特別な人間が転生するのだから、主人公であるということはもはや必然といっていいだろう。
けして自分が主人公に転生したと解ったときに、無様に飛び上がり喜んだりなんてしなかったぜ?
別に俺が赤子だったからとかそういうことじゃなくともな。
まあ、そんな選ばれし存在の俺だが、現在威厳もクソもない状況に陥っている。
「エイラちゃんはかわいいでちゅねーっ!じょりじょりーっ!」
「エイラちゃん、私のことわかるー?ママよー?」
「…………」
父はザラザラとしたヒゲをはやしたまま俺に頬擦りをするわ、母は俺の天才的な知能を嘲るかのように答えるまでもない問いを投げ掛けてくるわ…。
肉体と精神を同時にやられるのはかなり苦痛だ…。
まあ、今は精々俺を散々可愛がっていればいい。
後に俺は両親をも支配する才能と力を手にいれる運命にあるのだから…ってこら!
いい加減その『じょりじょり』をやめろって!
そろそろ俺のすべすべふわふわスキンにダメージが…っ!
「こら!パパ!もうじょりじょりやめなさい!かわいいエイラちゃんのほっぺが傷つくでしょうっ!」
そういうと母は父に抱き締められていた俺を取り上げて抱いた。
ナイスだ母。それでこそ俺の親。
そして父は俺の器の大きさに感謝しろ。
「はーい…。」
いい大人が大きな体を縮めて悄気ているのは実に情けない。
これが俺の父なのか…と考えると少々切ない。
まあ、転生した俺の両親がこうも俺を愛し、デレデレとしているなら、支配するのも容易いだろう。
そこはさすが俺、とだけ思っておこう。
べっ…別に、(愛されてるなぁ)とか、思ってないんだからねっ!
…ところで、俺の自己紹介がまだだったな。
俺の現世の名前は、エイラ・ローズ。
前世?漆黒の魔道士とかなんとか呼ばれていたな。
自分の呼び名に興味なんてなかったからな。
本名などもはや今の俺に必要なんてないだろうから説明もしない。
ちなみに、
母はファナ・ローズ。
父はダナン・ローズという。
俺の容姿は、部屋に飾ってある俺の写真を見る限り、かなりファンタジーだ。
髪の毛は金髪。
瞳は俺の名前にあるように、まさにローズ…薔薇色だ。
両親は二人とも顔が整っているので、その遺伝子を受け継ぐ俺も、きっと美少女になるはずだ。
というか乙女ゲームの主人公なのだから美人でないとおかしいくらいだ。
両親の仕事などはまだ知らないが、家の様子を見限りそこそこ稼いではいるらしい。
それから俺の両親は二人ともよく魔法を使う。
最初は興奮したものだが、今はもう慣れてしまった。
部屋の明かりや空調、それと俺をあやすときなど、無詠唱で自在に使っている。
俺も自由に動けるようになったならもちろん魔法を練習しまくるつもりだ。
とまあ、下らない話は終わりにするとして。
最初にここは『乙女ゲーム』の世界であると話したと思う。
なぜそうとわかったか。
もちろん、選ばれし存在である俺の直感と推理…と言いたいところなのだが、実際は簡単な話だ。
世界について聞くならだれか?
――神だろ。
そう、俺は世界の主から直接聞いたのだ。
死後の世界でな。
中々の黒髪美形だったのが少し許せなかったな…。
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『あーっと、○○ ○○○…でいいのか?』
『…ぁ…はい。』
言っておくがコミュ症ではない。
断じて。
突然の出来事に不覚だが反応が遅れただけだ。
現代日本に生まれて14年。友人もかなりいたぞ。
『ふむ。ではお前の死因だが、お前は中学二年の終業式の後に子供を庇い、軽トラックに轢かれて死んだ。』
『………。』
『お前は死ぬ際に人の命を救った。よって、お前には転生してもらう。』
『………えっ…マジで…?』
言っておくがこれは素ではない。
断じて。
思いがけない出来事n((y
『では、転生先だが…お前は乙女ゲーム《フラワーファンタジー―君という花―》の世界に主人公の女として転生してもらう。』
『……は?』
『まあ、男であるお前が乙女ゲームに転生する理由を正直に言うと…他に空いてる転生先がゴ○ブリとアルパカだったんでな…。不服かもしれんが、主人公だしいいだろう?』
『…まあ、○キとアルパカに比べたら…。』
『よし、決定な。じゃあ、精々第二の人生楽しめよ。』
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こんな具合である。
まあ、せっかくの第二の人生だ。
精々世界征服でもして楽しませてもらうとするとしようか。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
完全に見切り発車ですが、読んでいただければ幸いです。
ちなみに彼が前世で呼ばれていたという漆黒の魔道士というのはHNです。
そして中身はピュアな中学二年生です。
誤字脱字報告していただけるとありがたいです。