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病と生きる人(仮)

私は北嶋弥生。女性たちの悩みだけを解消することを目的とした相談所を開き、そこで無償で女性たちの悩みに耳を傾け、解決方法について模索していく。

私の意志ではなく、勤めている会社の上司に頼まれて始めたものであり、そちらのつてでないとこの場所を知ることはできないため、お客様のほとんどが常連、すっかり顔見知りでお互いのことをよく把握した深い仲であった。


これは、この相談所を訪れる患者さまの中の一人のお話であり、全く未だ解決方法が見出せない異例の件であった。



相談者は川野真智子。付き合っている彼氏から投げる蹴るなどの暴行や精神的暴力を日々受け続けているが精神的依存によって別れを切り出すことができないでいる。深刻な精神の病に冒されていたというのに、別れようとしてもおそらく彼氏は再び暴行に走るだけだと容易に想像がつくと本人から聞いている。川野さんはすでに両親を亡くしており、家族は双子の弟のみ。私も早く両親を亡くしており家族は姉だけ。川野さんの弟は精神病院に勤めている名医で、川野さんの面倒を彼が見ていた。川野さんの弟によると、川野さんは時折彼の住宅に逃げ込むが、依存症からすぐに彼氏のもとに戻らなくては精神的に不安定となり結局元の木阿弥になるという。

また、川野さんの彼氏はどうも浮気をしているようで、その女の影がしょっちゅう見え隠れしているらしい。もともと相当女性受けが良くどう見てもパートナーに暴力を振るう男には見えないというのが、彼氏の周辺の人たちの彼に対する意見であり、それは川野さんも同じであった。川野さんが浮気に気が付いていること知っていながら彼氏は全く改めないという。



私はDVについて図書館で本を借りて読むだけでなくたくさん新しいそれ関係の本を買い、知識をたくさん溜めこみ、自己流にも理論を組み立てていた時期があったため、それを活かして川野さんに様々なアドバイスをするものの、どの方法でもっても結局川野さんと彼氏の仲を取り持つことはできず、最終的に別れることを薦めた。ところがなんと、驚くことに別れを切り出したのは彼氏の方だったという。しかも、彼氏ははなっから別れるつもりで川野さんと付き合っていたという。川野さんをさんざん弄んだ挙句きっかけを掴み次第さっさと別れ話にもつれこませようとしていたのである。しかし、どうも彼氏の精神状態が通常であることはいえないため、病院に行かせて診断書を受け取ったところ、彼氏まで精神的疾患に蝕まれていたことが判明した。



結局精神病にかかっている以上、医療的措置が最優先ということになり、しばらく二人を川野さんの弟が勤めている病院に入院させて、お互いの居場所をお互いに伝えずに全く別々に治療を受けることになった。また、弟さんには川野さんのカウンセリングを頼まれており、本人の承諾もあったため、週に1回くらいの頻度で川野さんのカウンセリングをしている。それによって、川野さんの容態は回復しつつあるが、一般的な人と同じ社会生活を送るためには未だ困難な精神状態にある。






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― 新着の感想 ―
[良い点] DV被害者ばかりか、加害者も精神失陥を病んでいるということ、改めて考えさせられました。 受刑者の三割以上が精神障害を負っているのと同じですね。 [一言] 私もDV被害者救済をテーマに物語…
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