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眉をひそめる

 頭がわいてしまったのだろうか、と、そう思ってしまった私は悪くないはずです。


 「は、ははっ、っく、」


 結構な時間が経ったはずなのですが、青年さんの笑いは収まる気配がありません。なんとか堪えようとしているようですが、全く堪えられていませんよ。せっかく私がちゃんと話をしようとしたのに。このメンバーでは真剣な雰囲気は続かないということなのでしょうか。ことごとくタイミングが悪い。こうも続くと次がまたあるような気がしてしまいますよね。さて、その時に私はキレずにいられるでしょうか。空気を壊した一人である私がキレるのは理不尽? いいんです、そんなこと気にしません。


 「し、失礼。いや、貴方は面白い人ですね……ふっ」

 笑いすぎてでた涙をぬぐって、まだ笑い混じりの声で青年さんは言いました。なんででしょう、何だか謝られた気がしません。


 「…………いえ」


 私のぶすくれた声音にまた青年さんは笑います。ええ、わかってますよ、明らかに機嫌の悪い声だったことくらい。自分でもここまで声に出るとは思ってなかったんです。


 「話を戻します。私が聞きたい事は主に四つ」

 「結構あるのだな」


 話の腰を折るな。


 「まず一つ目。ここは私のいたところと違う世界、と言っていましたよね。私は戻る事ができるんでしょうか」


 これが最重要事項。異世界だか何だか知りませんが、私が求めるのは日常です。非日常を欲するのはあくまで日常に飽きを感じている人であって、私はそれに全く当てはまりません。家族の事も、友人、学校の事も気になります。起きて自室のドアを開いた所でこちらに移動してしまったのですから、今日家族の顔を見ていません。この部屋には時計がないので(あったとしても時間の数え方が同じかはわからないのですがね)今何時かわかりませんが、今日は少し寝坊をしてしまったのでなかなか降りてこない私を母が呼びにくるでしょう。その時に私がいなかったらまずいです。そういえばもってくるわけにもいきませんでしたし置いてきてしまいましたが、自室のドアも一緒にあの小部屋に移動してしまったのでしたね。私だったらある日突然ドアと人がいなくなっていたら何事か、と驚きます。


 「二つ目。…………何故、今日の、その中の朝、という時間だったんです」


 廊下を曲がるとき、角に一つだけあった窓から確認しました。今はこの世界も朝という時間帯です。おそらく私が自室のドアを開けたのとそう変わらない時間でしょう。空の色が似ていましたから。


 この質問に、お二人は眉をひそめ怪訝そうな顔になりました。でもれは私も同じです。


 「……タイミングが、よすぎる」


 そう、タイミングがよすぎるのです。


 私は昨日、主人公が異世界へトリップするという小説を読んだばかりなのですから。



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