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私の名前は


 どうやらここは城だか屋敷だかのようです。赤い絨毯、高い天井にきらめく無数のシャンデリア、細かい模様が施された花瓶にいっぱいの美しい花々、とにかく高そうな絵画。これが一般家庭の家とかいわれても私は信じませんよ。というか廊下長いです。花、絵、花、絵。光景が単調で飽きてきたのですが。


 「どうぞ、お入りください」


 緑さんに案内されたのは、先程の小部屋よりふとまわりふたまわり大きい、でも比べ物にならないほど豪華な部屋でした。そこのソファに向かいあって座り、話が始まり……ませんでした。


 「…………」

 「…………」


 部屋におちるのは、二人分の沈黙。私と青年さんのものです。緑さんがお茶を汲みにいってしまいまして。ええええ、なんで行っちゃうんですか緑さん。非常に気まずいのですが。ちら、と横目で青年さんを見てみます。足と腕を組んで深く腰掛け、うつむいているので表情は見えません。きっと何か考えているのでしょう。さら、と流れる金髪がとても奇麗です。……そういえばさっきこの人、緑さんに殿下って呼ばれてませんでした? あれ、ということは、青年さんは、


 と、重大な事実にきづいてしまったところで、緑さんが紅茶をもってきてくださいました。


 「ありがとうございます」

 「いえ」


 こつりと置かれたティーカップは、これもまたひと目で高級とわかるもの。白地に金時々赤で花の模様が繊細に描かれています。これ持ち手を持った瞬間にぽっきり折れたりしないでしょうか。そしたら絶対割れますよね。弁償ですよね、これ。いくらするんでしょう。ああそもそも通過の単位が同じとは限りませんね。緑さんの口から円とか言われたら違和感が半端ないですよ。ドル……ではありませんね、ユーロとかポンドのほうが雰囲気にあう気がします。日本にこんな所があるのかは知りませんが、やはりThe城という所はヨーロッパのような気がしますし。インドとかサウジアラビアとかそのあたりのようなアラビアンな雰囲気はありませんしね。あれ、ポンドって何処の単位でしたっけ。


 そしてこれは紅茶、といっていいのでしょうか。味は普通の紅茶そっくりなのですが、色が、あの。なんというか。えー、非常に、こう、ミラクルな、といいますか。一口のむ度に変わるのですが。最初は普通の紅茶の色だったのに、今現在色がコーヒーです。まあ青とかより良いですけどね。……考えたらなんだか飲む気が失せたので、そっとソーサーに戻します。それがきっかけだったのか、緑さんが話を切りだしました。ああ、ちなみに青年さんはまだあの格好から一ミリも動いていません。寝ていたらどうしてくれましょう。


 「どこからお話すればいいか……あー、とりあえずお名前を伺ってもよろしいでしょうか」


 知らないとこの先不便と思われますので、と続ける緑さんにちょっとイラッとしたことは秘密です。不便ってなんですか、バカにしてるんですか。人に名前聞く前に名乗るのはごく当たり前な常識ですよ。それだけで相手の印象ってかわりますからね。接待なめてるんですか。面談でこれに並ぶ基本事項がなってない部活動並びに委員会、有志団体の予算は容赦なく切り落としてきましたが何か。


 というわけで、かなり私はいらつきながら言ってやったのです。


 「モブ山A子と申します」


 てん、てん、てん、と謎の効果音が聞こえた気がしなくもありませんでした。


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