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スリースターズ  作者: カミハル
別れと約束、そして家族たち
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ヴァイン・レイジスタ

 ニールモウスの中心に位置する三階建ての事務所と、隣接する教会。

 半年前、突然帰ってきたヴァインは盗賊団のメンバーと再会し、当時のリーダーに就任していたエリックと話し合い、再びリーダーに就任し、部下たちを率いた。

 ヴァインのリーダー就任については、揉め事もなく、みんな手放しに歓迎してくれた。

 その後、盗賊業を廃業し、何でも屋を始めるに至る。

 盗みはしないが、やっていることは管理界でやっていたのとほぼ変わらない。メンバーの多さを活かし、猫探しや人探しを引き受けたりもした。

 最初は、稼いで余った金を福祉に募金しようとしたが、正しく使われるかどうかもわからないので、自分たちで教会を建て、孤児を養っていくことにした。

 ちなみに一か月に一度、ティナが治療のためにこちらの世界へと赴いてくれている。

 前の世界での三年間、特にシュウとの戦いや、その後の中央軍部での常軌を逸した魔力の行使で、ヴァインの魔力体はかなり損傷していたそうで、ティナが言うには『全身の魔力体がズタズタに裂かれています、正直に言わせてもらえれば一年と言わず、二年か三年ほど魔法を使わずに静養していただきたいぐらいなのですが……言っても聞いてはくれませんよね』と、諦めたように言っていた。確かに無理をしすぎたのかもしれないと、反省はするが後悔はしない、自分に出せる力を出し惜しみして、仲間を護れないのならば、力を得た意味がない。

「間違っちゃいないさ、なぁエスクリオス……」

 魔封輪で魔力を封じられているため、エスクリオスの声は聞こえないが、たまにこっそりと封印を解き、会話をしている。フィリスもこのぐらいならば許してくれるだろう。

 魔石に指を這わせ、小さく笑みを浮かべると同時、ドアがノックされた。

「若、みんな大聖堂に集まってますぜ」

 リーダーの執務室兼事務所にヴァインを呼びに来るのは、あの日と全くかわらないエリック。

ヴァインは窓の外を眺め、呟いた。

「今日もいい天気だ。この周辺もずいぶんと落ち着いたな」

 左指にはめられた魔封輪。

 魔力構築ができないおかげで、左腕がほとんど動かないが、気にしたことはない。

 あれから半年、盗賊業に精を出し、管理界に行く前の生活を思えば、ずいぶん遠くに来てしまったように思えた。

「エリック、親父がいつも悔やんでいたこと……覚えているか?」

「ええ、自分の家族に人間として生きる権利を与えてやれない、自分は無力だと……あいつが行っちまう直前まで何度も聞かされましたよ」

「俺は自分の意思でこの結果を生み出せたのかな? 親父が描いた夢を引き継いだのを免罪符に、ただ流されて行動していただけじゃないかな?」

「ああ、若は昔からそんなとこがありますよね。でもね若。ただ流されて生きる人間に結果は出せませんぜ? 流されて生きる人間に結果は出せませんよ」

 真面目な面持ちでエリックに視線を向け、それに対し、真面目に答えるエリック。

 この半年、盗賊団をここまで変えたのはヴァイン自身、そしてそのヴァインは未だに実感できずにいた。

「俺は、家族に与えてやることができたのかな?」

 珍しく弱気な口調に、苦笑するエリック。

 本当に、この人はたまに子供のような表情をする。拾われてきたヴァインの正確な年齢はわからないが、もしかすると自分や周りが思うよりも、まだまだ子供なのかもしれない。

「それを証明するための集会でしょ。先に行きますぜ」

 エリックを無言で見送り、小さく息をつき。自分自身に言い聞かせるように呟く。

「そうか……そうだな」

 立ち上がり、大聖堂に向かう。

 今日は目出度い日なのだから、辛気臭い顔をしていては、部下や子供たちの喜びが減ってしまう。

 今まで、市民権を持たない孤児たちには夢の存在だった物が手に入った日――

「今日もいい天気だな」

 舞台でマイク片手に大勢の部下と、子供たちに笑いかける。

 どいつもこいつも、昔に比べれば目を輝かせ、希望に満ち溢れた表情をしていやがる。

「嬉しい知らせだ。うちのガキどもと、ついでにエリックの倅に教育施設への入学権が与えられた、これもみんなのおかげだ。だから俺から心を込めて礼を言わせてもらう…………本当にありがとう」

 溜めて、溜めて、静寂が重くなった頃、心を込めて、みんなに頭を下げる。

 しばらくの沈黙後、歓声が巻き起こり、大人も子供もヴァインを取り巻き、礼を言う者から、勉強を頑張ると張り切る子供たちの声に囲まれた。

 この半年、密売の横取り屋はもちろんだが、市長や警察関係者にもそれなりの貢献をした。

 多少汚い仕事もあったが、子供たちの未来を考え、手を血で染める仕事は絶対引き受けなかった。それが報われ今日、形になる。

「ちょっと若、なんで俺んとこのガキがおまけみたいな扱いなんです?」

「俺が消えてすぐに、お前が所帯持ったことにイラッときたからだ、何か文句あるか? 嫁にばらすぞ? お前の女癖の数々を」

 不敵な笑みで、エリックの肩に手を置く。

 エリックの応対は全面降伏だった。

「んじゃ、今日もはりきってお仕事するぞ! 依頼はガンガン来てるんだ、今日の護衛班はエリックの所へ集合、実行班は俺の所だ」

 仕事の時は子供たちに護衛をつける。

 今はまっとうな仕事をしているとはいえ、やはり元は盗賊団だった彼らに恨みを持つ者が後を絶たない。

 そのため、子供たちの護衛は必ずつけるようにしている。

 こちらの世界に来て、半年――

 あと半年。こちらの世界にもだいぶ慣れたが、今のヴァインの悩みはここの世界にも向こうの世界にも家族がいる。

 随分贅沢な悩みを抱えられるようになったものだと、子供たちを見ながら苦笑した。

 とりあえずは残りの時間、こちらで大勢の笑顔を、多くの幸せに浸ってから、どうするか考えよう。

「んじゃ、今日もがんばるか! 留守を頼むぜ、エリック」

 手を挙げ、部下を連れてはりきって仕事に行くヴァイン。

 優しい風に吹かれ、流れるように揺れるカーテン、電気が付けっぱなしにされたヴァインの事務所で、二つの写真がカーテンに煽られていた。

 一つは元盗賊団や子供たちと写る写真。

 もう一つは、別世界のもう一つの家族たち、スリースターズ隊のみんなとの写真が――

 どちらの写真も、ヴァインは笑っていた。

 家族と共に、生きていける幸せの中で――

                 


これにて、完結です。

ここまで読んでくれた皆さん本当にありがとうございました。


今後の執筆に関しては活動報告の方にチョコチョコ書いていきますので、興味のある方はたまに覗いてあげてください。

今後も作品は書き続けていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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