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スリースターズ  作者: カミハル
別れと約束、そして家族たち
48/51

総隊長の処分

 中央軍部を文字通り消滅させた後、帰還したヴァインを待っていたのはスリースターズのメンバー全員と、警備部のインディ、そしてパコスを除く大勢の部下だった。

「ふぅ……まぁ俺を捕まえに来たのがあんたでよかった。初めてだから優しくしてね」

 抵抗もせず、両手を差し出す。

 無駄な抵抗をしても意味がない――むしろ厄介なことになる。

「気持ちの悪いことを言うな……抵抗しなくていいのか? 今回は法廷や拘置所の長時間拘束もなし。これからすぐに最高執行部の査問にかけられることになったらしい……もう一度言おう、抵抗するならば今のうちだぞ」

 暗に抵抗することを推すインディ。

 それに反応し異論を唱えたのはスリースターズの面々だった。

「どういうことだよ、普通は法廷を経て、それでも決まらない場合の執行部だろ! どこをどうすればいきなり査問にかけられることになるってんだじじい!」

「これまでの事例では、査問にかけられた者は高確率で有罪を言い渡される……しかも罪状は通常法廷よりもかなり重いはずだ」

 レイラとシオンがインディに噛み付くが、ヴァインは我関せずと言った顔で空を見上げていた。  

まるで自分は関係ないとばかりに。

「まぁ、そう言うのも無理はないだろう……俺も散々尋ねたが、わからない。今回は特別にスリースターズの面々も、傍聴権を与えられている。それとお嬢ちゃん、俺はまだ四十だ、じじいと言われるにはまだ早いよ」

 そう言い、部下にヴァインを連行するように指示し、その場を後にした。

抵抗することはないと信じているのか、それとも抵抗することを願っているのかは定かではない。

「では、ヴァイン・レイジスタ殿、これより査問会へと赴いてもらいます」

「なぁ? 今日パコスはどうした?」

 インディの部下に背を押され、不快に思うことも無く尋ねてみる。

 いなくても問題ないが、いなければいないで、気になる。

「本日はこの任務からはずれていただきました、一応説明はしたのですが……ひどい荒れ様でして……」

「ほう? なら伝言を頼む……俺を誰だと思っている? ってな」

 いつも通り、不敵な笑みを浮かべ、伝言を頼む。

この一言でパコスは理解するだろう。

言外に込められた意味――お前程度が俺の心配をするなんざ、百年早いと――

 そして、ヘリで輸送されること一時間。

 周囲を五機のヘリと、空中で三十人の警備兵に監視され、逃げる隙はない。

 同じヘリにはスリースターズのメンバーも同乗したが、口を開く者は誰もいなかった。

 目的地に到着するまでの重く、息苦しい空気は三年前にも味わった気がして、やはり同じように窓の外を眺めることに終始した。

 管理界中央本部の最上階フロアに査問が開かれる部屋がある、そのフロア一帯には強力な魔力無効結界が張り巡らされている。

 先日は、シュウの魔力のおかげで無力化されることはなかったが、シュウの魔力をほぼ使い果たした今、ヴァインの魔法も無力化された。

 魔力構築が消滅し、魔力で稼動する左腕の義手が動かないのは不便だが、暴れるつもりはないのであまり気にする必要も無いだろう。

 そしてとあるドアの前で、インディが立ち止まり入室を促し――

「ここだヴァイン……その、なんだ……」

――最終確認の為だろう、神妙な面持ちで何かを言おうとするが――

「面倒くさいから何も言うな……精々言わせてもらえるならば……心配するな」

 ――適当にあしらい、不敵な笑みを浮かべながら片手を挙げ、そのままドアを開け入室。

 それに続いて、スリースターズのメンバーも、それぞれインディに頭を下げ入室した。

 初めて見る部屋は簡素なものだった。

 中央の被告席の左右、正面の三方向にかけられた銀幕とそれに移る影。

 その正面から老人の声が、室内の空気を震わせた。

「これより、査問を始める」

 荘厳な声に萎縮する新人三人。

 レイラやシオン、リアンとヴァインは物ともせず、その声を受け入れた。この辺りが経験の差だろう。

 次いで右から優しい老婆の声が――

「始める前に、ヴァイン・レイジスタ。汝の罪を自ら述べなさい」

「この胸に宿ったバカ親子のために、部隊に迷惑をかけ、メンバーたちにも負担をかけた。それが俺の罪だ」

 ――それに対し、胸を張って答えた。

「ほう? やはり軍のビルを壊滅させたことは罪ではないと?」

 あまり驚いた様子のない老婆の声。

 ヴァインの答えは予想範囲内と言わんばかりの受け答えに聞こえた。

「当然だ。外道にくれてやる優しさはない。むしろ優しすぎたと後悔している」

 変わらず、不敵な笑みで答えるヴァイン。

 メンバーは絶望的な面持ちでうな垂れた。心象は最悪だろう。

 だが、ヴァインは自分は何一つ間違ったことをしていないと言わんばかりだ――事実、後ろめたいことなど、何一つないと心の底から信じているのだろう。

「くっ……ははははっ」

 老人の笑い声が響き――

「噂どおりの方ですわね。ではこの場はあなたに任せますよ?」

 冷たく響く女性の声が、老婆に向けられる。

「ええ、あたしに委ねさせていただきます」

 優しい声が室内に響く。ヴァインの意見などは聞く気がないようにも思えた。

「おい、いいのかよ。ヴァインの弁護とか、なんか有利になるようなことをしなくて」

「仕方がないよ、レイラ……僕たち傍聴人に発言や弁護権はない……黙って聞いているしかないんだ」

 興奮するレイラを制するシオン。

 リアンも同じ気持ちのようで、拳を握り締め、黙って傍聴していた。

 ちなみに新人三人は、緊張でそこまで気が回っていないようだ。

 それに対し、ヴァインは腕と足を組んだまま、老婆の銀幕を見つめていた。

 それが、メンバーたちの不安を一層煽る。

 どれぐらいの時間が流れたのか、重い空気がメンバーたちの時間感覚を狂わせる。

しばらく待った後、老婆の声がする銀幕から硬い口調で声が響く――

「お待たせしました。ヴァイン・レイジスタ。判決を言い渡します」

「はい」

「判決、スリースターズの解体とヴァイン・レイジスタを管理世界追放処分とします」

 ――結果はあまりに筋の通らない、無慈悲な判決だった。

 なんの討論もなしに決められるには、あまりにも重過ぎる結果だ。

「待てよ! いくらなんでも無茶苦茶だ!」

 レイラが椅子を蹴って立ち上がり、リアンがそれを制止するため、後ろから押さえるが、シオンも殺気を灯した瞳をぎらつかせ立ち上がる。

「納得のいく説明をいただきたい……その判決に至るまでに通った過程……納得できなければ……魔力が打ち消されていても、剣術だけで目的を果たすこともできます」

 二人の分隊長の殺気と気迫だけで銀幕がはためく。

 今まで見たことの無いレイラとシオンの殺気に怯える新人たち、リアン自身も同じ意見だが、この二人を抑え込まなければ、事態はより悪化するように思えた。

 二人に落ち着くよう宥めるリアン、そして収拾がつかないように思えたその騒動を止めたのは――

「傍聴人は黙って聞いていろ!」

 ――擁護されているヴァインが怒鳴る。

あまりの気迫と、意外さに思わず押し黙るメンバーたち。ここに来て、リアンだけは一つの推察を導き出したが、それをレイラやシオンに伝えるよりも早く、老婆の声が判決の続きを述べた。

「メンバーの七人は来週までに移転希望部署を書き、提出しなさい。レイジスタから希望届けをもらっているはずです」

 ヴァインが渡した七つの封筒が入った袋。

 昨夜、ヴァインが中央軍部に乗り込んだと聞き、故郷や宿泊先に出発した者は慌てて帰還し、施設にいたものは泡食っていたため、誰も中身を確認していないが部署の移転希望届けの必要書類が入っていた。

「部隊の解体と、ヴァイン・レイジスタの追放期間は一年と定めます。それ以外の部隊所属隊員は、各々が希望する部署で経験と訓練を積みなさい」

『へ?』

 あまりの急展開に目が点になるメンバー。

 ヴァインは、尊大な姿勢でそれを聞き、口元に小さな笑みを浮かべていた。

 全てが予定通り、そんな表情。

「ヴァイン・レイジスタは管理界追放の間、魔封輪の装備を命じます」

 魔封輪は魔力を完全に封じる指輪。ただし、脱着に魔力的呪法がかけられていないため、取り外すも付けるも自由だが――

「了解しました、世界追放期間の一年、堪えず装備する事をある程度お約束します」

 不敵な笑みで了承するヴァイン。

 先ほどまで騒いでいたメンバーは呆気にとられた表情で、ヴァインと声の主とのやり取りを聞いていた。

 突然の最高執行部に査問を受ける異例の事態といい、今回の判決といい、まるで出来の悪い三文芝居のようだが、これでリアンが導き出した予想は確定的なものとなった。

「一年後の今日、またここで会いましょう。楽しみにしていますよ、ヴァイン・レイジスタ。では退室してよろしい」

 退室を促され、メンバーに手振りで一緒に出るように合図し、ヴァインも出口に向かう。

 ヴァインはドアから出る直前、銀幕に振り返り一礼し、滅多に聞くことのできない優しい声音で、老婆の銀幕に――

「俺も一年後を楽しみにしてるよ。手間をかけたな、ありがとう、ばあちゃん」

 ――礼を言った。

 ヴァインがばあちゃんと呼ぶ人物は一人だけだが、老婆の声だからそう呼んだのか、その人物だからか、メンバーたちは結局聞くことはできなかった。

 しかし、軍部に乗り込む直前、ヴァインに頼まれた不自然な用事を受けたリネスだけは、今回の査問が、全て予定通りの出来レースなのだと、ただ一人理解してしまった。




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