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スリースターズ  作者: カミハル
~決着と真実へ、共に生きよう~
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またな

 仕方がないので、義手の動作確認を完了させ、部屋から屋上へと向かう。

 屋上から見下ろす景色を眺めてから、目的を果たそうと思い立った。

 この部隊が設立された時から任務の前に行う習慣、感傷に浸っているつもりでもないが、なぜかそうしたくなるというのは、やはり感傷に浸ってしまうのだろう。

 そして、屋上のドアを開けると、待ち構えていたように仁王立ちする二つの影――

「なんだ? これから粛清でも食らわせてやるぜ! って雰囲気だな?」

 軽口と笑み、どうも癖になっているようだ。

 レイラとシオンに、挨拶がてらの軽口を叩き、空を見上げる。

 雲一つない星空。いつもと違い、施設の電力供給が七割カットされているために、ほぼ真っ暗だ。

「いい夜空だな、お前たちはまだ行かないのか? レイラはアキラが待っているだろ?」

 無言の二人に、なにか居心地の悪さを感じつつ、話題を振るが、彼女たちが求めているのはそんな言葉ではない――

「もう三年になるんだな、俺たちとヴァインが出会ってから……」

「そうだな、あの頃は二日に一回ペースで三途の川を渡らされかけたっけな……それとお前たち二人の喧嘩の仲裁……あの頃に比べれば仲良くなったよな、お前ら」

 今となっては良い思い出だが、よくよく考えてみれば、この二人が喧嘩して、ヴァインが死に掛けたのも二日に一回ペースだった気がする、ちなみに喧嘩ペースは一日二回。

「それだけの時間を僕たちは一緒に過ごしたんだ、君は何かをするとき、僕たちには何も言わないんだね……スリースターズ設立のときも、そして今も……」

「そんなに俺たちは頼りにならねぇか?」

 そんなわけがない、この二人やリアンやセラス、最近は新人三人もずいぶん頼れるようになってきた。

 それでも話さないのは、ただ単に巻き込みたくないだけだ。部隊設立の際には、様々な権力による圧力がかかったものだ。そんなものに、この二人を巻き込みたくなかっただけだが、言っても噛み付いてくるだけだろう。

「いや、お前たちは十分頼りになるよ」

 とりあえず、軽いフォローを入れておく。

 当然、納得してもらえるわけもなく、さらに追及してくる二人。とは言え、設立の時とは違い、今回は権力も駆け引きも関係ない。

「ならば教えてくれ、君は何をしようとしているんだ? 僕たちに言えないことなのか?」

「はぁ……そんなに知りたければ教えてやるよ、どうせ明日にはわかることだが、俺は今から中央軍部に乗り込み、壊滅させ、現中央軍部統括、ゲルゾフに生き地獄をたっぷりと教え込む。当然、そんなことをすれば俺は管理界の歴史的重罪人に認定されるのは確定だろう、ついでにスリースターズ部隊も壊滅し、後に残るのは後世まで語り継がれる悪名だけになる可能性もあるだろうよ」

 シオンの問いに、これからやろうとしていることの一部を自虐的に説明するが、やはり二人の顔に笑顔はない。

 当然だろう、二人の表情が驚きから怒りへと変わる様を観察しながら嘆息する。

「なんで俺たちに相談しないんだよ! この三年間、死に物狂いで強くなって、守ったものはそんな簡単に捨てることができるものだったのかよ!」

 その言葉に、軽薄なヴァインの表情が一転し、凍てついた目でレイラを見据え、抑揚のない声でその問いに答えた。

「死に物狂いで守ったものを手放して……そうしてまで、やらなければならない。お前たちも知っているだろう? エスクリオスとシュウの関係を」

 二人が頷くのを確認し、表情を多少柔らかくする。

 この二人に自分の感情をぶつけても仕方がない、それにあまり真意を見せたくない。

「エスクリオスを魔石に変えたのはシュウだが、幼いエスクリオスを誘拐し、シュウの暴走を促したのは中央軍部の大総統、ゲルゾフ……言いたいことはわかるな」

 シュウとエスクリオス親子の運命を狂わせた敵。シュウとエスクリオスの敵ならば、ヴァインにとっても敵だ。

 敵は懐柔するか、叩き潰す。

 決してメンバーには見せないが、みんなが思うほど、ヴァインは綺麗な生き方だけをしてきているわけではない。

「それでも、君を行かせるわけにはいかない……どうしても行くのなら……」

「俺たちが止めてやる!」

 二人同時に魔石を解放し、魔装法衣を纏う。

 二人が開放し終わった時にはすでにヴァインの姿はなく、魔石を開放した彼が背後にいた。

 そして優しく、二人の肩を抱き、耳元で囁く。

「すまない、今まで本当にありがとう」

 そのまま二人を抱き寄せ、最後の言葉を伝える。

「二人とも、またな」

 そう言い、翼を散らせながら飛び立つヴァイン。その姿を見送る二人は呆気に取られるしかなかった。

 圧倒的な速さ、圧倒的な魔力、圧倒的な存在感をすぐそばで直接感じた。

 今までのヴァインとは違う。まるで二人分の魔力を重ね合わせたような厚みのある気配。

 底の見えない魔力、かつて伝説と言われていた歴代の魔法使いと並ぶ――もしかすると上回るかもしれない魔力値を二人は感じ取った。絶対的な差として。

「カンザキ一族にもいないだろ……」

「うん……僕の一族最強と言われた父さんよりも大きな魔力……」

 それよりも、彼女たちの耳に残った言葉。

『またな』――彼は確かにそう言った。

「帰ってきたら、先輩として叱ろうか」

「そうだな、あいつ最近、先輩に対しての口の聞き方がなってねぇからな」

 例え何が起ころうと、ヴァインは帰ってくる、それを確信し、二人は未だ空を舞う羽を見つめ続けた。


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