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スリースターズ  作者: カミハル
~決着と真実へ、共に生きよう~
43/51

後始末

 施設は守られ、倒すべき敵も倒した。

 あの後、シュウの魔力と残留思念はヴァインの中に消え、生み出された敵も消えた。

 被害も軽傷で、チームメンバーも大した怪我はなく、一週間で元通りの生活に戻ることができるらしい。

 セラスも、魔力値が安定し、全ては丸く収まった。一番騒がれたのは、ヴァインの左腕。

 シュウを魔石に吸収したおかげで魔力は回復したが、腕が生えてくることもなく、大騒ぎ。

 ティナの治癒魔法で治療を受け、魔力制御の義手を取り付けてもらい、事なきを得たが、レイラが珍しがって、義手が一度もげた。

それ以外は平和に終わった。

 ようやく落ち着いた頃には、深夜。

 会議のため、メンバーをブリーフィングルームに集める。

 ティナ以外は全員集合した――ティナは魔力回復のため、休養中。

 ヴァインだけでなく、メンバー全員の治療に魔力を注いだ結果、魔力枯渇寸前にまで落ち込み、眠っている。

「今日は本当にご苦労だった、新人たちには結構ハードな任務だったが、よく乗り越えてくれたな。んで、チーム総隊長としてお前たちに褒美をくれてやろう」

 今回の戦闘で、施設の主要部や他の一部が損壊したので、しばらくは復旧作業でなにもできそうにない――とは言え、ラボや訓練施設がなくても、任務はこなせるが、その上でヴァインがメンバーに与えた褒美は――

「施設の復旧完了まで全員休暇だ、寮も大なり小なり、損壊しているので帰省したいやつは勝手に帰れ。帰る場所のないやつには俺から宿泊施設を用意してあるから安心しろ」

 そう言って、人数分のチケットを机に置く。

 突然の休暇に喜ぶ新人の三人。

 対称的に怪訝な表情を浮かべるのはレイラ、シオン、リアン。付き合いが長いせいか、この三人は微妙な違和感に気づいているのかもしれない。

「んじゃ、準備を済ませた者からさっさと出て行け、部隊復帰はこちらから連絡する」

 胸中で、連絡するまでもなく知ることになるだろうがな、と呟き、誰よりも早くブリーフィングルームを出て、寮の自室へ向かう。

 幸い自室は無事で、シュウから受けた傷を癒すため、棚から薬品類を取り出し、ベッドに腰をかけ、ため息をつく。さすがにヴァインの傷を完治まで癒させたのでは、他の部隊員の治療に回す魔力が無くなってしまうので、左腕以外の傷は黙って隠していたのだが、あまり放っておくと化膿などが怖い。

 疲労は完全に抜け切れていないが、あまりのんびりしてもいられない。

「今回の件で上層部に足元を掬われる前に、先手を打たなきゃいけないな」

 ジャケットとシャツを脱ぎ、鏡で傷を確認する。

 背中やわき腹に大きな裂傷。

 打撲や打ち身は数え切れない、古傷も加えると、傷のない面積の方が少ないように思えたが、それは言い過ぎかもしれない。

 アルコールの瓶を開け、肩から浴びるようにかけるが、やはり沁みる。傷口が脈打つように痛みの信号を発するが、無視し、全身の魔力を弛緩させると、魔力で止めていた全身の傷口から血が再び流れ出し、布団を真っ赤に染め上げた。

「ちょっとヴァイン君! どういう……」

 ノックもなしに入室するリアン。

 しかし、シーツを真っ赤に染める出血に言葉を詰まらせた。無理もない、おそらく誰が見ても同じリアクションを取るだろう。

「おお、悪い。どうしたリアン、帰省の準備はできたのか?」

「そ……そういう問題じゃないでしょ? 許可も得ずに休暇を与えて! 施設がなくても任務や仕事は山積みなんだよ!? そもそもそれ!」

近づき、捲くし立て、真っ赤に染まったシーツとヴァインの体を交互に指差す。

「なにその傷!? ティナに治療してもらったんじゃなかったの!?」

「腕しか任せてねぇよ、俺の傷を完治させていたら、ティナの魔力が尽きちまうだろ?」

 軽く流し、再び魔力で出血を止め、ジャケットを羽織る。

 裾に血が付着したが、関係ない。

 あとは自然治癒に任せるしかない。

「まぁ、休暇に関しては明日までに納得のいく答えが出る。それよりも頼みがあるんだ」

 デスクから取り出した二つの茶封筒。

「こっちの大きい封筒を環境監査部のフィリスばあちゃんに渡してくれ。もう片方は七枚の封筒が入っているから、スリースターズのメンバー全員に渡しておいてくれ。そして明日まで絶対に開けないように警告しておけ」

 そう言って、手振りで追い出そうとして、もう一つの大事な条件を思い出す。

「ばあちゃんの封筒は手渡しで頼む、明日の朝までに、できるだけ早い方がいい、深夜でも関係ないから、頼んだぞ」

 それだけ付け足し、強引に追い出す。治療薬を棚に戻し、義手の動作確認作業を行っていると、誰かがドアをノックした。

「はいどうぞ」

 確認作業を中断し、ドアの方に視線を移し、入室を許可する。

 すると、新人三人が出発前に挨拶に来たというが――

「うっす! 総隊長。どうしたんスか浮かない顔して、明日から長期の休暇なんスからスマイル! スマイル! あはははははっ!」

 ――テンションが高い。とりあえず、脳天に拳骨を食らわせ、黙らせる。

 リネスは勝手に抜け出した孤児の保護施設の管理人に挨拶に行き、その後、リーディアと共にホテルに泊まるらしい。

 アキラはレイラと実家に帰る――と、リネスに聞かされた。アキラは頭を押さえ、蹲っているための、代弁だ。

「まぁ、気をつけてな。毎日血を吐くまで訓練しろとも言わないが、あまり怠けすぎると俺との訓練で地獄を見るから、ほどほど適当にがんばれ」

 いつも通りの軽口に笑み、新人はその表情を見て微笑み、揃って頭を下げた。

「今まで、訓練でのフォローや見えないところで支えてくれて本当にありがとう」

 突然のリネスの言葉に目を丸くする。

 フォローなどいつしたのかは思い出せないが、三人が真剣な表情なので、訂正できず、黙って聞くことしかできない。

「まだまだ未熟な自分たちッスが……」

「これからもよろしくお願いいたしますわね、ヴァイン総隊長」

 アキラとリーディアからも礼を言われ、思わず照れてしまう。感謝や礼の言葉はいつまで経っても言われ慣れないものだ。

 礼を言い終えると、部屋から退室する三人。

 その後ろ姿を見送り、ヴァインは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 少し長い休暇になりそうだと言う事を告げずにいたのは正解だったのか、少し逡巡してしまったが、すでに後の祭り。


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