約束達成
全魔力が右手の平に集束され、その照準がヴァインに向けられる。
自分の意思ではない、何者かの意思で――
「逃げろ! 逃げろぉぉぉっぉぉぉっ!」
――自らの意思に反した、強大な魔力が凝縮された一撃が――放たれた。
「~~~♪ ~~~~~♪」
『集束型崩壊励起魔法、最終リミッターの解除が完了しました』
歌い終わると同時に、エスクリオスが拘束解除を知らせる。
歌による、魔法発動の封印解除。
何らかの理由で精神操作を行われた際、最悪の事態が起きないための措置と、自身の安全のために施した封印。魔石開放エンジェルフォームと歌による封印の二重構造。
こんな魔法をポンポン放てば、確実に自身の身を滅ぼすし、何よりも暴発してしまえば、自分の居場所も、仲間も、何もかもを失ってしまいかねない。
「さぁ、行こうか……エスクリオス」
『はい、魔石からの魔力供給もセット完了です。調整はあたしがしますので、遠慮なくぶっ放してください』
目前に迫るシュウの魔力砲。
食らえば消し飛ぶだろう、だから選択肢は決められていた。
すなわち――
「エスクリオス・ブレイカー!」
――真っ向から全力で敵の攻撃を呑み込む。
真っ青な集束魔法が、シュウの魔力砲とぶつかりあい、拮抗する。
互いの砲撃が歪み、軋み、放電と轟音を撒き散らし、周囲をカゲロウのように歪めてせめぎ合う。
本来、魔法にはそれぞれのカラーが存在する。レイラならピンク、リアンは白と、それぞれの魔力波長で色が決められるが、日頃、ヴァインが放つ魔法は青。
澄み渡った大空を思い起こさせるような青は文字通り蒼天の輝き。
その器に限界は無く、どこまでも大きく、広く、全てを呑み込む。
そんな一撃とまともにぶつかり合い、拮抗するのだから、シュウ・ブレイムスという男の魔力も、相当なものだ。
「エスクリオス! もう少し振り絞るぜ!」
『術者の魔力エンプティを確認、これより魔石からの魔力供給を実行します!』
ヴァインの集束魔法が一際大きく膨れ上がる。これでエスクリオス自身の魔力も使い果たせば、確実に負ける。
「シュウ、もうがんばらなくていい!」
目に見えて、その存在を削って魔法を放つシュウに、諭すように叫ぶが、届くことはないだろう。自分の意思ではなく、何かに搾り取られている、そんな印象さえ受ける――実際、苦悶の表情を浮かべているのだから、もしかすると、何者かの意思で魔力を放っているかもしれない。
「出し惜しみは無しだ! これで決めるぞ!」
強制的に、魔石から魔力を搾り出し、射出している魔法に上乗せする。
二の矢は必要ない。これで決着をつける。
「うぉるらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
文字通り全てを注ぎ込んだ全力攻撃。
光の帯が螺旋を描き、シュウの魔法を突き破り、そのまま術者であるシュウを呑み込む。
一直線に進むヴァインの魔法が、小さな星たちを呑み込み、最後には虚空に消える。




