決戦、シュウ・ブレイムス
飛び込んだゲートの中。
ヴァインの視界に飛び込んだものは、次から次へと湧き出てくる敵。
その発生源はわからないが、空間が放電している場所から敵が出てくる、その方向に進めば目的地に着くとヴァインは確信していた。
とりあえず、このまま通過させては、仲間たちの手間が増えてしまう。
「うっしゃ、ウォーミングアップも兼ねて派手に行きますか!」
エンジェルフォームからブレードフォームに切り替え、刀身を消す。
『ブレードフォーム形態変化、魔力刃』
青い光の刃が出現、昔レイラがナイフを創り出したのをヒントに、改良した切り札その一、物理的な攻撃よりも、魔力を削る効果に重点を置いた武器。
「行くぜ、エスクリオス!」
『あまり飛ばしすぎると後半が辛いですよ』
巨大な刀身を振るい、すれ違う敵を一刀両断、敵をシールドごと貫き、本体の魔力を吸収、それを刃に還元しているので魔力の消耗を抑えることができる。
先ほどの戦闘では、全隊の援護とバランスを考慮して使用しなかった――そもそもが、接近戦用の武器なので、他の部隊への援軍に手が回らなかったが、今は一人。
「あまり人を侮るな、準備体操でへばっちまう程やわな体はしてねぇよ!」
周囲の放電が激しく、雷鳴のように変質してきたのを契機に、周囲を囲んでいた敵の姿が霧のように掻き消える。
「お出迎えってか?」
推進力を上げ、暗闇の中に現われた一筋の光に飛び込むと、宇宙に浮く浮き島のような場所、空に輝く星、おそらくここはシュウが滅ぼした世界だろう。以前セラスがモニタリングしていた光景によく似ている。
何も無い島の真ん中で、腰を下ろす男。
三年前と変わらない男の姿に苦笑しながら、島へとゆっくりと着地し、未だに寝息を立て続ける男に殺気を叩きつける。
反応はない――思い起こせば不思議なもので、シュウ自身に対しては、さほど大きな恨みがあるわけではない。三年前の襲撃とエスクリオスとの関係。この二点から、今までシュウを追ってきた。そして、今――街中での襲撃と、今回の本部施設の襲撃――なぜ、今になってなのか。この二つの襲撃事件が無ければ、正直戦う理由は無かった――
三年前の事件も、今となっては過ぎたことだし、なによりも相棒の父親だ。感動的な再会を経れば、それから先など、どうとでもなったはずだが――
「こうなった以上、仕方がないよな……」
魔力刃をうつぶせになった頭部に翳し、右手に力を込める。
切っ先を少しあてがい、魔力を吸い尽くせば、全てが終わる――だが、シュウ・ブレイムスという男は、そう簡単に事を済ませてくれる男ではなかった。
『空中に強大な魔力反応を検知、ヴァインさん! 緊急回避を……』
エスクリオスの言葉が全て紡がれるよりも早く、バックステップでその場を離れ、翼を広げて空中へ退避する。
先ほどまで、ヴァインが立っていた場所に、一本の集束魔法が打ち込まれ、浮き島はその姿を無数の石飛礫へと姿を変えた。
「狂ってやがる……」
空中で爆発跡を見下ろし、絶望的に呟く。
一歩間違えれば、自身すらも消し飛びかねない一撃、加えて発動まで魔法の存在に気づかせない隠密性と、ヴァインの魔法をも上回る出力。そして――
『ヴァインさん、後ろ!』
エスクリオスの叫びと同時に振り向く。
双眸を真っ赤な魔力光に染め上げ、こちらに手を翳すシュウの姿。
とっさにシールドを張るが、十分な硬度に足る魔力を注ぐまでに、シュウの手から集束魔法が放たれ、一瞬のうちに光の中へと呑み込まれてしまった。
光の本流が消え去った後、そこにヴァインの姿は欠片も残されていなかった。
「報告。たった今、ヴァイン・レイジスタの消去を完了。これよりスリースターズ本部を壊滅の後、次の指示を……」
「何を勝った気になってやがる」
直撃を食らいながらも、エンジェルフォームの最大出力で、シュウが放った砲撃の内部から脱出後、シュウとの間合いを詰め、背中に手を当てる。
「全身にくるインパクトをプレゼントだ!」
掌から放たれる魔力での衝撃波。
アキラのクラッシュ・ノヴァに性質は近いが、相手を貫くアキラの魔法とは違い、ヴァインの攻撃は、直撃と同時にその力を体内で拡散させ、全身へと衝撃を波状させる。
並の人間ならば即死の攻撃――
「ヴァイン・レイジスタの生存を確認。任務を続行する」
――もちろん、並の人間という分類付けから除外されるこの男に、そんなものは通用するはずもなく、たっぷりと魔力の込められた裏拳で殴り飛ばされる。
その際、全身をバリアで覆わなければ、周囲の星に直撃し、四肢が粉々に砕け散ることになっていただろう――代わりに、一つの星を貫き、二つ目の星にめり込むはめになったが――
「くぅっ……やっぱ強いな、正直勝てる気がしねぇや……」
星にめり込んだ体を力づくではがし、全身の損傷を確認――左手首が骨折して使い物にならない、頭部にも裂傷を負い出血し、首も痛めているが、これは戦闘に支障はない程度だ。
こちらを悠然と見つめるシュウ。
二回の攻撃で、確実にダメージを重ねているヴァイン。
それがたったわずか五分以内の出来事。
『追撃、来ます!』
カタパルトで射出されたように、初速からトップスピードで目前に迫るシュウ。加速や減速の概念は無いようで、初速から一定の速度を維持しつつこちらに手を伸ばしてくる。
「肉を斬らせて……」
使い物にならない左腕を突き出し、握らせ、空いた右手でシュウの首を鷲掴みにする。
「骨を断つ!」




