単騎決戦へ
遠距離砲が使えないので、散弾と炸裂弾で善戦するも、敵の数に阻まれてしまった。
原因はわからないが、敵シールドの効果が打ち消された、だというのにリネスには大勢と戦うための訓練経験があまりにも少なすぎた。
正面の敵が両刃の刀を追い詰められたリネスの左胸目掛け、突いてくる。
回避できる距離ではない、回避コースには他の敵が刃を伸ばしてくるだろう。
結果、詰んだ。
経験の無さが、ポジション取りを、判断を誤らせ、自分自身を窮地に追い詰めた。
結局、恩人に何も返せないまま、救われたまま何も出来ずに死ぬのか――
「なにボケッとしてやがるボケ!」
――そう思い、諦めたリネスの目の前に躍り出る影が、刃を手甲で弾き、影の背後に迫った刃は素手で受け止める。
「ヴァイン総隊長!?」
リネスに名を呼ばれるが無視。敵の追撃を避けるには、弾くよりも掴むが一番だと判断し、魔力を込めて掴むヴァイン。フィールド系の結界が張られていなければ、魔力のバリアが消失し、指が飛んでしまっていただろうが、幸いヴァインの手の平に傷を入れた程度だ。
『ブレードフォームでいいですか?』
「ブレードフォームで頼む」
掴んだ刃を弾き、両手の手甲を重ね合わせ大剣に形態変化。すぐさま横一閃。
正面の敵を一刀両断に斬り伏せる。
さらに、背後から剣を振りかぶっている気配を感じ取り、それに対応するため、エスクリオスに呼びかける。
「スライド!」
『スライド、了解です』
刀身の根元がスライドし、日本刀の柄が姿を現す。柄の部分に青い宝石、二刀一対の刀を背後に突き、敵を切り伏せる。
「エスクリオス! アースブレードだ!」
『了解です』
二つの刀を地面に突き刺し、魔力を注ぐ。
その場を中心に、周囲から天へと昇る魔法攻撃。同時に自分とリネスに広域バリアフィールドを張って身を守り、周囲の敵を消し飛ばす。
いかに魔力体とはいえ、身を守る魔法防壁もなしに魔法攻撃を食らえば、簡単に消えてしまう。
周囲を囲んでいた敵が全滅したのを確認し、地面に座り込むリネスに視線を移す。
「大丈夫か?」
手を差し出し、立つように促すが、差し出した手が血まみれになっていたことに今更気付く。
「あなたこそ大丈夫?」
逆に心配されてしまった。
別段、傷自体に問題はないが、とりあえずコートで血を拭っておく。
真っ白な魔装法衣に真っ赤な血がべっとりと付着するが、特に気にした様子もなくリネスに視線を向ける。
「さて、現在の状況だが、環境監査部のフィリスばあちゃんがフィールド系の結界を張り、警備部が援軍として来てくれている、敵の制圧も時間の問題だが……」
もちろん疑問もある。
なぜ軍部が来てくれないのだろうか、それに戦闘部や戦闘指導課まで、今回の件に最適な部隊も、あの会議の場にいたはずだが、来てくれたのは二つの部隊だけ。
「考えても仕方がない、リネスは引き続き、敵の制圧に当たってくれ、あらかた片付いたら地上部隊に合流、スリースターズの一番星として思いっきりやってやれ」
不遜な笑みを浮かべ、空に羽ばたき、空中で結界を張り続けるフィリスに合流し、周囲を観察する――敵の姿は見当らない。他の部隊も敵の撃退に成功したようだ。
「さて、ばあちゃん、色々と礼やらなにやら言いたいが、聞かせてくれ。なぜ援軍がこれだけなんだ?」
ブレードフォームを解除し、武装を解く。
しばし逡巡した後、フィリスは視線を逸らせながら答えてくれた、何か後ろ暗い事でも語るように。
「中央軍部が圧力をかけたのよ……『今回の口頭申請は認められない、スリースターズ隊はそれなりの戦力を持つ部隊なのだから、援軍は必要ない』って……あたしたちや警備部にまで、援軍に行く必要はないと、指示を出したわ」
[ほう……なるほど、あいつらか]
ヴァインが抱いていた疑問が一瞬で解けた。
三年前の事件も、今も、軍部は密かに自分たちを疎んでいたのだ。
軍部よりも大きな力を持つスリースターズ部隊を――
「落ち着いてね、軍部全てが敵じゃないの」
――ヴァインの険しい表情から気づいたのだろう、フィリスが続きを話してくれた。
「中央軍部……東西南北全てを抑え込めるのはあそこだけ、でも今はそれどころじゃないでしょう?」
空のゲートを指差す。
そこから溢れ出てくる多数の敵。
「確かに、今はそんな場合じゃなさそうだ」
エンジェルフォームを発動させ、高度を上昇させる。空中での機動力を上昇させ、ゲートを凝視し続ける。これ以上、数が増えられても困るが、地上でチマチマと雑魚を蹴散らしていてもキリがないのも事実。
「ここはあたしたちに任せて、あなたはあなたの目的を果たしなさい」
「悪いな、この礼はいずれ必ず」
フィリスの言葉を待っていたかのように、許可を受けると同時に、魔力風を噴出させ、カタパルトで射出されたようにゲートへ向かう。
途中、敵を順調に倒す仲間たちの姿を視界に収め、安心してゲートへ飛び込んだ。




