反撃開始~空
なんとかシールドで持ち堪えているが、すでに効果は薄れ、直接ではないものの、衝撃が体に伝わり、ダメージが蓄積されていく。
部下のリーディアはすでに戦意をなくし、怯え、震えて戦力にならない。シオンが寸でのところで護っているが、このままではいずれ押し切られ、撃墜されてしまう。
「このままじゃまずいね……リーディア、せめて自力で逃げてくれないか?」
とは言え、アキラやリネスと違い、精神的に幼いところの多いリーディアに、一度折れた心を修復し、行動するのは難しいだろう。いかんせん、他の二人と違い実戦経験が少なすぎる。
腰に差した刀に魔力を込め、接近する敵を斬るが、魔力が弱体化され、ただの斬撃程度のダメージしか与えられない。
魔力体の敵に物理的な攻撃を仕掛けても意味がない。
「広域一閃……」
ならばと、先ほど刀に注いだ倍の魔力を上乗せし、魔法のイメージを技名に代え、唱える。
「円月・桜舞!」
シオンを起点に、水平周囲三百六十度範囲に鋭い魔力の斬撃を放つ。
普通ならば、この一撃でビルを叩き斬ることもできるが、敵の弱体化シールドの前では、近距離の敵しか叩き斬れず、近くの敵数体を倒すに止まった。
「ダメか……これ以上はまずいね……」
誰に言った訳でもないが、自分自身に言ってみた。
ヴァインからの援護も大した意味を持たず、リネスからの援護も止まってしまった。
しかし、全滅もあり得る最悪の状況下で、一つの光を見た。
施設全体を覆う結界。記憶が正しければ、この結界は確実にこちら側の助けになる。
そして、いつのまにか静かに、それでいて力強く背後に現れた人間の気配。
「すまねぇなお嬢ちゃん、少しばかり遅れちまったが、タイミングはナイスだろ?」
四十代の中年、口元の髭と彫りの深い顔立ちで、こちらに視線を向けて笑っていた。
背中に背負った大きな戦斧。
レイラのハンマーにも劣らない豪快な武器を背負った男は、警備部のインディ部長。シオンも何度か会ったことがある。
「おめぇら! 各自散開して残りの敵をぶちのめせ! いいか、後でヴァインに笑われるような真似は絶対にするな!」
部下たちに激を飛ばし、再びシオンに視線を移し――
「お前たちの総隊長にいい人材を紹介してもらってな、これはその礼だ。あとは俺たちに任せておきな」
――インディ自身も敵集団の真っ只中に飛び込んでいく。
それを呆然と見送ってしまったのは、急激な状況変化のためか、それともインディの豪快な人柄のせいかはわからないが――
「ふふっ、ずいぶんとヴァインやレイラに似た方だ、これは負けていられないね」
見れば、ほとんどが男の部隊。
しかし、戦闘を見る限り、魔力に優れた女だらけの部隊に劣らない戦いぶりを見せている。
インディ自体も、魔力が強い方ではないようだが、魔力値や魔石のランクではない、総合ランクでのし上がった実力派のようだ。
「敵のバリアが消え、援軍も来てくれた。これは勝機だよ、リーディア」
シオンの影で震えるリーディアに手を貸し、隣に並ばせる。
強制する気はない、ここで逃走という手段を選ぶのならば、それも構わない。しかし、リーディアは自分自身で答えを出した。
「そうですわね……このまま逃げ帰ったらヴァイン総隊長には笑われ、リネスさんやアキラさんとはお別れ、レイラ隊長に至っては、敵前逃亡は死刑とか言いそうですしね」
レア魔石、カゲロウでもう一度ヴァインの姿に変身する。何だかんだで、彼女が一番強いと思い描く人間像はヴァインだと言う事だろう。
そんなリーディアを微笑みながら見つめて、刀を鞘に納め、全身に魔力を行き渡らせる。
「その通りだね、僕もレイラに殴られるのはごめんだし…………行くよ、リーディア」
「はい、隊長!」
これ以上、警備部に敵を倒されれば、スリースターズの二番星は警備部に助けられ、何もできずにガタガタ震えていたチームと笑われる。
「何よりもヴァインに迷惑をかけるのはもっとごめんだよ」
刀を一閃し、飛行形態の敵を三体同時に叩き斬る。本番はこれからだ。




