反撃開始~地
すでに百機近くの敵を落としているが、敵の数が減る気配を一向に感じられない。
それぞれの戦地に視線を移せば、レイラ、シオン、リネスがそれぞれ窮地に追い込まれている。
「ちっ、やっぱこのままじゃきついか……」
舌打ちし、援護魔法をスタンバイするが、集中している一瞬の隙に、飛行形態の敵に周囲を囲まれてしまった。
右手の援護魔法を待機状態にしつつ、左手で魔力球を放つが、距離を広げるだけで大した効果は得られない。
「できればこれ以上、魔力を消費したくなかったが……仕方ねぇ!」
自分に言い聞かせ、真っ白な両翼を大きく広げ、待機状態の魔法をキャンセルし、翼に魔力を集束させる。
後は呪文を叫び、トリガーを引くだけ――
「これ以上、被害が拡大したら色々と面倒だ……てめぇら全員まとめて……」
最終安全装置解除の呪文を唱えようと、口を開いた瞬間、施設全体を覆う何者かの魔力を感じた。
見回せば、空に薄いドーム状の光。
自分の肌が教えてくれる、これは結界だ。
急いで魔力を霧散させ、結界の発生源を見る。
「ばあちゃん!? 来てくれたのか」
宙に浮くヴァインよりも上空に、魔石がはめ込まれた杖を掲げたフィリスの姿があった。
しかし、軍部や他にも戦闘に特化した部隊にも援護を頼んだはずだが、それらしきものは見当らない。
ヴァインの上に位置する環境監査部のトップ、フィリス・ノアニールと数十人の部隊員、そしてレイラたちの戦闘区域には見覚えのある男の姿が見えた。
「この施設全体にフィールド系の結界を張りました、敵のシールドを中和できるように出力を調整していますから今のうちに仲間を助けなさい。少々ですが、援軍も連れてきましたから」
「すまねぇなばあちゃん、助かる!」
礼もそこそこに、急いでリネスが追い詰められている場所へ飛ぶ。
すでに他の場所に援軍が向かったのを確認した上での決定、仲間のことはあいつらに任せておけば安心だろう。
状況は絶望的。
吹き飛ばされたアキラを救出しに、ビルの壁際に急いだのが致命的だった。
脳震盪を起こし、ふらつくアキラを護る形で善戦するが、いずれもシールドに邪魔され、敵を倒すに至らない。
このままでは時間の問題だろう、精神が折れかかっているせいか、体力、魔力にも影響し、さすがのレイラも疲労が激しい。
「これまでか…………ん?」
諦めかけた瞬間、自らの肌で感じる魔力の波動――フィールド系の結界だ。
咄嗟に目の前まで迫った敵に、巨大なハンマーを叩きつけるが、先ほどまでとは違い、一撃で敵が叩き潰れてしまった。
「敵のシールドが……無効化されている? こんな高度な結界、一体誰が……」
呆然と、結界に見惚れてしまった一瞬の隙に、目の前の敵が集束魔法をチャージし始めた――が、気づいたときには遅く、敵のチャージが終え、今まさに発動する寸前だった。
「くっ……しまった!」
「ぬぅりゃぁぁぁぁぁっ!」
諦めかけ、目を閉じるのと、図太い掛け声が聞こえたのは同時だった。
目を開け、何事が起こったのかを確認すると、目の前で数体の敵が吹き飛ばされた。
続けざまに、地面に拳を打ち付ける男。
魔力を叩きつけられた地面が盛り上がり、一箇所に固まっていた敵を、まるで綿埃でも舞わすように、根こそぎ吹き飛ばす。
「がぁっはっはっは! 警備部期待の新星、パコス参上! オラオラァ、どんどんかかってこい! ぬぁっはっはっはっはっはっは!」
豪快に敵を殴り倒していくスキンヘッドの巨漢、なぜ上半身裸なのか理解に苦しむが、パコスが敵を惹きつけている間に、アキラを抱き起こし、気付けに頬を思い切り叩く。
揺れて、体に障害を来す脳震盪ならば、もう一度逆に揺らせば治ると本気で思っているあたりが、豪快なレイラらしい対処法だ。
「痛いッス姉貴……もう大丈夫ッスから勘弁してください」
レイラの肩を掴んで、ゆっくりと立ち上がり、敵を薙ぎ倒すパコスに気がついたようだ。
「あれって……マザコンでロリコンの……ただの変態親父じゃなかったんッスね」
まっすぐ一人で立ち上がる妹の呟きを聞き流し、ハンマーを持つ手に力を込める。
今まで好き放題やられた分を返すのは今だ。
「アキラ、お前の言う変態に負けたら、スリースターズ三番星の名折れだ、もちろんわかっているだろうな?」
魔力を込められたハンマーが、赤い輝きを放ち、その力をさらに増幅させていく。
「もちろんッス、ヴァイン総隊長やシオン分隊長たちに笑われてしまうッス」
姉に見習い、両手の皮手袋に魔力を込め、戦闘態勢を整える。パコスに遅れを取るのがよほど嫌なのだろう、いつも以上に気合が入っている。
「んじゃ、行くぜ!」
「ウッス!」
同時に飛び出し、パコスを取り囲む人型の敵へ向かって攻撃を繰り出す。
地上で、三人の反撃が始まった。




